●長期貯蓄のモチベーションに貢献する「ビジョンボード」
いずれ必ず訪れる老後。しかし、家事や子育て、仕事などに追われる毎日のなかで、真正面から考えることを放棄してはいないでしょうか? すると、「老後にどんな生活をしたいのか」という具体的なイメージも曖昧になってしまいます。そこで、安田さんがおすすめするのは、「ビジョンボード」を取り入れる方法。
「『ビジョンボード』というのは、自分がなりたい姿、理想の生活のイメージに近しいビジュアルをまとめる方法です。たとえば、好きな雑誌などからいいなと思ったインテリアや暮らし、アイテムなどの写真を切り抜いて、A3やB4の色画用紙などに貼りつけます。将来ありたい姿について頭の中で漠然と考えていてもまとまりにくいですが、ビジョンボードを作っていると、その過程で自分がどのようなことに価値を感じているのかを理解できるようになります」(安田さん、以下同)
ビジョンボードの制作では、なるべくハッピーで明るい老後を過ごすイメージを念頭に置くことがポイント。完成したビジョンボードを飾り、それを眺めているうちに、実現のためには何が必要なのかを「考える頭」ができていくそう。いずれ、貯蓄意識もポジティブなものに変わってくるようです。
「先々のことを具体的にイメージできるようになったら、次は実現するために、それぞれの予算を確保していきます。『老後生活には3000万円貯蓄しよう』『老後にベランダガーデンを楽しむために100万円』『海外ボランティアの英語の勉強に30万円』などなど。必要なお金を書き出し、その実現のために退職金や公的年金で足りない分を明確にします。そのうえで、今から毎月、毎年いくら貯めていくのかをざっくりでいいので計算していきます」

●予算の範囲内であれば「使いたいように使う」が原則
実際に毎月の予算を立てていく際には、貯蓄額も予算に入れることがポイント。給料口座に振り込まれたお金を、「将来(老後や子供の将来の教育費)」と「今の暮らし」のために振り分けていくことが重要だといいます。
「今の暮らしのためのお金は、使い道によって細かく予算を立てていきます。貯蓄額を増やせば、今までのようにお金を使えない費目も出てきますが、そこは悩みどころです。使えるお金は限られているわけですから、家計のご相談に来る方は、みなさん七転八倒しています」
とはいえ、我慢のしすぎはストレスになります。上手に貯蓄できている人は、適度に自分を解放することにも長けているそう。
「プチ贅沢は、予算の範囲で大いに楽しみましょう。プチ贅沢をした分は、他の費目を頑張って、切り詰めていきましょう。というアドバイスをしています」
お金の使い方は家族によってさまざま。『平均的』なんてものはないと安田さん。それぞれの予算の範囲で「自分の使いたいように使う」ことが原則と話します。
「たとえば、『食費は多くするけど、子供たちの被服費はお下がりで賄えるから、夏と冬だけで十分だわ』という人もいると思います。予算の範囲で自由に、それぞれの価値観、考え方でいいんです。
ただし、予算はきっちり守る。これは必須です。ボーナスも同じように分けていきましょう。よく家計管理術として家計簿をつけることが挙げられますが、ただつけているだけで集計をしないのであれば、それは単なる記録だけでしかなく意味がありません。家計簿をつけるのであれば、予算を守れたかどうか、月々の振り返りを必ずすること。予算を守れなかったら、予算の組み替えが必要なのかもしれません。どうやったら予算を守り、貯蓄が計画通りにいくかを考えることが大切で、家計簿をつけることが大事なのではありません。家計簿アプリも同じです。それを次の月に活かすように、有効活用しないといけませんね。『めんどくさい』って、くじけそうになったら、ビジョンボードを眺めてみてください。そうです。ボードにある楽しい老後のために、いま、頑張っているのですからね」
