母子家庭との大きな違いは?

父子家庭も母子家庭と同様の支援を受けられるようになってきましたが、条件や内容が異なる制度もまだまだ残っています。特に「寡婦(寡夫)控除」と「遺族厚生年金」は、同じひとり親世帯でもその差は歴然です。
寡婦(寡夫)控除の条件が異なる
女性のひとり親である「寡婦」と男性のひとり親である「寡夫」は、一定額の所得控除を受けられます。ただし、寡婦と寡夫では、条件も控除額も異なるのが現実です。
寡夫は「配偶者と離婚・死別もしくは配偶者の生死が明らかでない」「生計を一する子どもがおり、所得金額の合計が500万円以下」という二つの条件を満たす必要があります。
一方、寡婦は「扶養親族」がいる場合も、控除の対象です。親族で扶養している人がいれば対象になります。
子どもまたは扶養親族がいない場合も、所得金額の合計が500万円以下であれば控除を受けられる点も大きな違いです。
控除額にも、差があります。寡夫は一律27万円に対し、寡婦は条件のどちらかを満たすと27万・両方を満たすと35万円が控除される仕組みです。
遺族厚生年金は年齢に達していないとゼロ
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。遺族基礎年金は、国民年金の被保険者かつ子どものいる寡婦または寡夫が対象です。
配偶者が亡くなった際、子どもが18歳になった最初の3月31日(高校生相当年齢)まで受給できます。以前は「子どものいる妻」のみで、妻を亡くした夫は対象外でした。現在は、妻の死亡が2014年以降の場合は夫も受給できます。
遺族厚生年金は、厚生年金の加入者が死亡した場合に遺族が支給できる公的年金です。遺族基礎年金とは異なり子どものいない場合でも受け取れますが、寡夫の場合受給には条件があります。
夫は、妻の死亡時に自身が55歳未満の場合、受給の対象になりません。仮に55歳以上でも、受給が開始されるのは60歳になってからとなります。
父子家庭の深刻な問題とは

父子家庭は、地域でも会社でも理解を得にくいのが悩みの種です。父子家庭の不安を解消すべく、交流のきっかけをつくるイベントや電話相談などのシングルファーザーの心を支える取り組みも広がっています。
社会的孤立に陥りやすい
「妻がいるときに長時間働いていた」などの理由で、近隣の人や地域と関わってこなかった人もいます。困ったときに気軽に質問や相談できる相手がおらず、疎外感を覚えることもあるでしょう。
親族からも「嫁に逃げられて情けない」などと突き放されてしまい、頼るべきところを1人で抱え込んで、ますます孤立することも考えられます。
子どもがある程度大きくなるまでは、PTAや子ども会などでほかの保護者と接する機会も豊富です。しかし、大半はママのみが参加するため「輪に入りにくい」と感じる人もいます。
育休や時短勤務など、会社の理解を得にくい
「育児・介護休業法」では「育児休業」「短時間勤務」「子の看護休暇制度」「時間外労働の制限」などの支援制度が定められています。
育休をとりやすい環境が整っていれば、キャリアを失わずに育児に専念でき、会社側も戦力の流出を防げるでしょう。しかし、男性の利用実績がない会社も多く、ひとり親にかかわらず男性が取ることに対して理解を得にくいのが現状です。
たとえば育児休業の利用状況は、2018年度の「雇用均等基本調査」によると、女性が87.9%に対して男性は8.6%となっています。休みたくても休めない労働環境によって、子どもとの時間がますます減ってしまうことも考えられるでしょう。
交流イベントや電話相談の積極的な活用を
シングルファーザーが1人で悩みを抱えないように、父子家庭同士の交流場や相談窓口が設けられています。神奈川県横浜市が主催の「父子家庭のひろば」では、父親同士が悩みや考えを語り合ったり料理を学んだりすることが可能です。
ひとり親の孤立を防ぐ目的で、親も子どもも楽しめるイベントの実施や行政・専門家などと連携して役立つ情報を提供しているサークルもあります。電話相談のなかには日曜や祝日も相談できる窓口があり、仕事などで忙しい人も気軽に利用可能です。
