前編で、産後のリアルな生活や気持ちを振り返り、当時の自分に必要だったのは、「気持ちを共感し合える人だった」とお話ししてくれた、田中千恵(たなか ちえ)さん。
しかし、里帰りから戻り、それだけではダメだと感じたといいます。
保健師さん、ご近所さん、ママ同級生…「頼れる相手」は増やせると気づいた
30,320 View基本的に、朝から晩まで娘と家の中で二人きりの「ワンオペ育児」。実際困った時にすぐ頼れる人がいるかって聞かれたら、当時は一人もいなかった。
私には「頼れる人」がいない
里帰りを終えて、産後2ヶ月頃に東京の自宅に戻ったんだけど、「ここからどうやって一人で子育てしていけばいいんだろう」って気持ちになったんです。
ツイッターで他のママたちと気持ちを共有しあったり、私の本当の気持ちは分かってもらえないって言いながらも、母に毎日電話しては、「こんなことが今日あってねー」って報告したりはしてたんだけど。
でも、実家はすぐ帰れる距離じゃないし、里帰り出産していたから、近所にママ友もいない。
旦那も、土日もどちらかは仕事に出ているくらい忙しい時期で、平日も帰りは遅くて。
基本的に、朝から晩まで娘と家の中で二人きりの「ワンオペ育児」。
実際困った時にすぐ頼れる人がいるかって聞かれたら、当時は一人もいなかった。
だから、私が頑張らなくちゃって。
不安だけじゃなくて、私一人でもちゃんと子育てをしないとって気持ちもどんどん大きくなっていって。
こんなものもつくってました…。
―― なんですか?
産後、たくさん育児系の雑誌や本を買ってたんだけど、その中から、「あ、これ大事!」って思ったり、「こういうふうにした方がいいんだな」って思ったものとかをノートつくってメモしてたの(笑)。
―― わあ、いっぱい書いてある!当時のちーちゃんが頑張ってたのが伝わってくるね。
うん。今見返すと、だいぶ余裕がなかったんだなって分かるんだけど、その当時は、いい母親でいないとって一生懸命だったし、こうやって書くことで、「私はちゃんとママしてる」って思いたかったのもあるかもしれない。
ママも、リフレッシュしていい
そんな感じでまた、「子育てが苦しい」ってなっていたんだけど、新生児訪問で区の保健師さんが家に来てくれて。
「一人で育児頑張っているんだね。ママもリフレッシュしていいんだよ」って、産後ケアセンター(※1)を勧めてくれたんです。
―― 産後ケアセンターって、日本ではまだまだ広がっていないけど、いい取組みですよね。
産後ケアセンターは、お母さんが体調管理をしながら赤ちゃんとの生活リズムづくりをする施設です。
施設においてショートステイ(宿泊) や デイケア(日帰り)で母子のケアや授乳指導・育児相談等が受けられます。
そうそう。
元々、世田谷区の子育て支援で利用できるのは知っていたんだけど、もっと生活や育児が困窮してる人たちが利用するもので、私はきっとまだマシなほうだから使っちゃあれかな、とか思ってて。
でも、保健師さんに「ママもリフレッシュしていいんだよ」って背中押してもらったから、区役所まで行って申し込んでみたの。
―― 利用してみてどうでした?
すごくよかった!
私たちは1日の宿泊だったんだけど、1週間泊まりたいと思ったくらい(笑)。
ママの身体を休めるのがメインみたいで、基本、娘のことは預かってくれて、その間私は、お昼寝したり、ぼーっとテレビ見たり、スマホいじったり、一人でゆっくりさせてもらえて。
しかも、他の人がつくってくれた美味しくて豪華なごはんも食べられる…本当に最高でした。
ありがたいなと思ったのが、部屋までしほの泣き声が聞こえてくることもあったから、「泣いてるので、おっぱいあげましょうか」って言いに行ったんだけど、スタッフの方が「ミルクあげるから、大丈夫。何かあったらこっちから呼ぶから、ママは寝ててくださいね」って、言ってくれたの。
例えばさ、リフレッシュに家族で温泉行こうってなったとしても、旦那と娘と3人だったら、何かあればやっぱり、私はこの子をあやすとかしなきゃいけないと思うんだよね。
でも、ケアセンターでは、安心して朝まで眠れた。
そういえば、産後一人で眠ったのはこれが初めてだったかもしれない。
あとね、助産師さんが部屋まで話を聞きにきてくれる時間もあったんだけど、そこで、「スリングの抱っこの仕方が分かんない」って言ったら、丁寧に教えてくれて。
説明書とか作り方を見ても分からないことって結構あるから、直接こうだよって教えてもらえる人がいるのってすごく助かるなって思ったよ。
「頼れるもの」は増やせる
一回外に出て分かったのは、意外と周りに頼れるものがたくさんあったっていうことで。
それからは、色んなイベントに行ったり、外に出かけることが増えました。
その中でも、参加してよかったなと思ったのが「なかまほいく」(※2)という全10回の親子向けのイベントなんだけど。
―― 「なかまほいく」って、初めて聞きました。ぜひ詳しく教えてください。
近所に「助けて」って言い合える人を作るっていうコンセプトでやっているみたいで、最初は親子一緒に遊んで過ごすような内容なんだけど、4回目から参加者のママたちが、子どもを「預ける側」と「預かる側」に分かれるの。
私、他の赤ちゃんを預かるって経験が全然なかったから、すごい新鮮で。
普段、しほのことしか見てないから、他の子を見ることで、「こういう遊びもするんだ」とか、「1歳、2歳になるとこんな感じなんだ」とか初めて知れて、すごく勉強になりました。
預ける側の時も、2時間っていう短い時間ではあるけど、子どもと離れて料理したり、手芸したりして、すごく楽しかったし。
あ、あと、しほにとっても良い経験だったなと思っていて。
毎週これに行くと、しほが成長したんだよね。
他のお兄ちゃんとかお姉ちゃんが動いてるとこ見て、ハイハイってこうやるんだとか、このおもちゃで遊んでみよう、みたいな感じで。
それもすごく嬉しかった。
今は、頻繁に連絡を取ってるわけじゃないけど、子育て広場に行った時に会えば話すし、「○○ちゃん大きくなったね~」って、子どもたちの成長を一緒に喜び合える仲間がいるのは、ありがたいなって思っています。
存在を認めてもらって気づいたこと
それで、家でしほと二人きりで過ごすんじゃなくて、外に出ていく生活をするようになった頃に、コノビーのアプリでたまたま、「コノビーサロン」(※3)の申込みを見つけて。
応募記事の「わたしに、スポットをあてる」って文を読んだ時に、復職することも考えてたから、「今の自分の気持ちを見つめ直したり、これからの私のことを考えてみたりしたい、これだ!」って思ったんです。
―― ありがとうございます。サロン、参加してみてどうでした?
いやー、娘を産んでから“ママ”としての私の話ばっかりで、“私自身”の話を、誰かに聞いてもらえることがなかったから、とにかく嬉しかったし、ちょっと大げさかもしれないけど、存在を認めてもらえたと思って…やばい、泣きそう。
「しほのママである」っていうことが、いつも自分の一番手前にきてたんです、ずっと。
でも本当は、「私はママである前に、こういう人間なの」っていう部分もあって。
それを言えないでいたのが苦しかったんだって気がつきました。
サロンでさ、何度も「私を主語にして話そう」って言ってくれたでしょ。
それも、「あなたのままでいていいよ」と言ってもらえてるみたいで、すごく嬉しかった。
「自分の気持ちのいい部分も、悪い部分も、そのまま受け入れていいんだな」って自分自身で思えたことも、すごい大きかった。
うまく言えないけど、何かこう、シェルターじゃないけど、サロン生一人ひとりを認めてくれて、見守ってくれるような、そんな時間だったと思っています。
「わたし」も大切にしたい
―― 頼れるものが増えたり、自分自身にも目が向くようになったりして、ちーちゃんの生活や気持ちに何か変化はありましたか?
すごくあったと思う。
最近は、旦那とも「子育て」について話をすることが増えたり、「少しずつ自分の時間も確保するようにしよう」って、月に1回お互いの自由時間を決めるようにもなりました。
来週旦那と二人でデートする予定も立てたよ(笑)。
―― わー、素敵!デートも楽しみですね。
自由時間は、どんなふうに過ごしてるんですか?
その時によってだけど、家の近くのカフェで、音楽聴きながら本を読むことが多いかな。
好きな時に好きな音楽を聴けることが、私にとっては大事だって、サロンで気づいたから。
あと、変化と言えば、仕事ももうすぐ復帰するんだけど、前より不安が減ったかも。
元々は、こんな小さい時から預けるなんて母親していいのか、って不安があったんだけど、しほと離れて過ごすことを経験して、子どもと離れる時間がちょっとあった方が、自分のイライラも減るし、私たちはよりいい関係でいられるのかもしれない、と思ったんだよね。
しほを授かって、出産して、子育てして。
この短い期間でも色んなことがあったから、これからも何が起こるかはわからないなって、正直今でも不安や葛藤もあるんです。
でも、自分に立ち戻れる場所や頼れる場所が、自分の中と外に今はあるから、きっと大丈夫、って思えるようになった。
あ、そういえば、「ママだから、こうしなきゃいけない」みたいな考えとかしてないかも、最近!
―― それ、すごいことですよね。最初、育児書あんなに…(笑)。
(笑)。ね、本当。
自分が一番びっくりしてます。
(取材・文:三輪ひかり / 写真:中野亜沙美)
前編はこちらから読めます。
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