お互いを信頼し合い、尊重し、より深まる絆。弘貴&弘達の“熊倉ツインズ” が共にプレーするのもあと半年弱。2人は今、何を思うのか

 日本大学の双子の兄弟である熊倉弘貴と弘達は、来年2人揃ってJリーガーとなる。

 ボランチや3バックの左CBを務める左利きの兄・弘貴は横浜FCに、サイドハーフとインサイドハーフを主戦場とする右利きの弟・弘達はヴァンフォーレ甲府に内定。大の仲良しである熊倉ツインズはずっと一緒にボールを蹴り、小学校(FCステラU-12・新潟)、中学校(FCステラU-15)、高校(前橋育英高)、大学と全て同じチームでプレーしている。

「中3くらいまで新潟の実家の近くの広場で2人で練習していたのですが、お父さんから『新潟県で一番の練習をしなさい。お互いが新潟県1位の練習をやれば、新潟県1位の選手になれる』と言われていたので、お父さんの言っていたことが年齢を重ねていくごとに具現化しているなと感じています」(弘達)

 前橋育英高時代はボランチとサイドハーフで息の合った連係を見せ、時には2人で両翼を形成することもあった。普段からとても仲が良く、「もう頭で考えなくても感覚で分かり合えています。小学校の時からポジション的に弘達が前にいるので、常に彼の立ち位置を見ながらプレーしてきました」と弘貴が語れば、弘達も「弘貴は高校でも大学でもキャプテンをやるなど、ずば抜けたリーダーシップを持っているからこそ、僕も甘えずにサポートすることを考えますし、プレーでも普段から弘貴のサポートに助けられているので、いかに弘貴が苦しい時にサポートできるかも考えています」と思いを語る。
 
 お互いを信頼し合い、尊重しているからこそ、どちらかが結果を出しても素直に喜び合える仲になっている。実際にどちらかが選抜に入り、どちらかが入れないなどの現実もあったし、プロ内定も弘達の方が早かった。

「弘達が決まった時は心の底から嬉しかったし、『必ず俺も』とモチベーションに火をつけてくれるんです。選抜に僕が入れなかった時も『俺と同じポジションの選手はどんなプレーをしていた?』と聞いて、情報を教えてもらっていますし、弘達も『弘貴のここは負けているけど、ここでは勝っているよ』とか意見を言ってくれるんです」(弘貴)

「弘貴なら絶対になれると思っていたので心配はありませんでした。ずっとそれこそ保育園の時から一緒にやってきたので、ならない方がおかしいなと。これから先もそういうどちらかが先という状況があるかもしれませんが、常に高め合える存在なので、嫉妬とかそういう感情は生まれないと思います」(弘達)

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 より深まる2人の絆。3大会ぶりの出場を果たした総理大臣杯では、弘貴が抜群のバランス感覚と危機察知能力を発揮して中盤だけではなく最終ラインの歪みを埋めながら、得意の質の高いビルドアップで攻撃の起点を生み出すと、弘達も1.5列目でボールを受けてタメを作ったり、FW五木田季晋にクサビを当てて素早くサポートするなど、インサイドハーフとボランチの関係でチームの心臓として機能。チームをベスト8進出に導いた。

 しかし、47年ぶりの準決勝進出を狙った準々決勝で新潟医療福祉大学に1-3で敗れ、彼らの大学最後の夏は幕を閉じた。

 2人で共にプレーするのもあと半年弱。2人は今、何を思うのか。
 
「歴史を変えると毎年言っていて、全国で優勝しないと歴史は変えられない。リーグで勝ち切って、最後はインカレで結果を残したい。2人で結果を残してから、別々の道に進んでいきたい」(弘達)

「最後のインカレでタイトルを取りたい。その先は別々になっても、常にお互い相手の方が上だと思っているし、共に越さないといけない存在だと思っているので、いつまでもライバルであり、尊敬する人間だと思います」(弘貴)

 思いは1つ。そしてそれはいつまでも変わらない。2人の旅路は切磋琢磨という名のもとに進んでいく。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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