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「最終日にキャンセル」「破談」のケースも セリエA冬の移籍市場、上位5チーム総括「順位が下がるに連れて投資額が増加」【現地発コラム】

「最終日にキャンセル」「破談」のケースも セリエA冬の移籍市場、上位5チーム総括「順位が下がるに連れて投資額が増加」【現地発コラム】

2月2日月曜日は、5大リーグをはじめとする欧州主要国における冬の移籍ウィンドウ最終日だった。

 シーズン半ばのこのウィンドウは、イタリアで「修復のメルカート」と呼ばれているように、陣容の大幅な入れ替えよりも、夏のチーム編成の失敗や主力の故障離脱などによって生じた欠落を穴埋めしたり、手薄なポジションを強化したりといった、ピンポイントの補強が主体となるのが常だ。

 資金力に余裕があるプレミアリーグでは、アントワーヌ・セメニョ(ボーンマス→マンチェスター・シティ/移籍金7200万ユーロ)、ヨルゲン・ストランド・ラーセン(ウォルバーハンプトン→クリスタル・パレス/移籍金4970万ユーロ)、ブレナン・ジョンソン(トッテナム→クリスタル・パレス/移籍金4000万ユーロ)、コナー・ギャラガー(A・マドリー→トッテナム/移籍金4000万ユーロ)といった「準ビッグディール」も発生した。一方、プレミアリーグと比較すると資金力に差があるセリエAは、文字通りの「修復」が主体。移籍金2000万ユーロを超える移籍は4件に留まっている。

 面白いのは、スクデット(リーグ優勝)、そしてチャンピオンズリーグ出場権(4位以内)を争うビッグクラブ勢の動向を見ると、移籍マーケットでの動きの大きさが、首位からの距離の大きさに比例していること。首位インテル(勝点55)は実質的に動きがなかったのに対し、2位ミラン(同50)から3位ナポリ(同46)、4位ユベントス(同45)、5位ローマ(同43)と、順位が下がるに連れて陣容の入れ替え幅、投じた金額が増えているのだ。

 首位争いはインテルが少しずつ独走体制を築き始めているが、ビッグクラブにとって経営上の生命線であるCL出場権争いは、上記5チームに加えて伏兵コモ(勝点41)が参入しており、先の読めない混戦となりつつある。その渦中にあるチームは、戦力強化に動かざるをえない状況にあるわけだ。最も多くの資金を投じたのが、順位的に最も低い5位ローマだったのも、だから偶然ではない。

 ●ローマ

 今季アタランタからジャン・ピエロ・ガスペリーニを新監督に迎えたローマは、その特徴的な戦術(マンツーマンハイプレスと縦指向の強いサイドアタック)に合った陣容を整えるべく、夏にも積極的な補強を行った。しかしセンターフォワード(CF)のエバン・ファーガソンとアルテム・ドフビクがいずれも、指揮官の求めるDFを背負ってのポストプレーやスペースを作る動きを得意としておらず、前半戦ではこの2人をベンチに残して、パウロ・ディバラやトンマーゾ・バルダンツィというトップ下を本職とするプレーヤーをCFに起用する試合も少なくなかった。

 今冬のメルカートでは、このCFにオランダ代表ドニエル・マレン(アストン・ビラ/移籍金2700万ユーロ=レンタル料200万ユーロ+完全移籍時に2500万ユーロ)、フランスU-20代表ロビニオ・ヴァス(マルセイユ/移籍金2200万ユーロ)という2人の新戦力を補強。前者はエリア内でのスペースメイクや周囲との連携に長けたタイプ、後者はカウンターアタックで持ち味を発揮するスピードスターと、いずれもポストプレーヤーではないが、CF陣のバリエーションを広げ、指揮官の選択肢を増やす補強だったことは確かだ。

 ローマはさらに、夏からの懸案だった左ウイングにもスペイン代表ブライアン・サラゴサ(バイエルン)を買い取りオプションつきレンタルで獲得しており、攻撃陣の陣容は確実に厚みを増した。この戦力強化が、2018-19以来7年にわたって遠ざかっているCLの舞台への復帰につながるか、後半戦の戦いぶりが注目されるところだ。

●ナポリ

 陣容の入れ替え幅という意味ではローマよりもむしろ大きかったのが3位ナポリ。就任2年目のコンテ監督の下、スクデット連覇とCLでの躍進を目指して、夏に総額1億ユーロを超える大型補強を行なって今シーズンに臨んだことは記憶に新しい。ところが、プレシーズンのロメル・ルカクを筆頭に、ケビン・デ・ブライネ、アンドレ・アンギサ、ダビド・ネーレス、ジョバンニ・ディ・ロレンツォと、主力クラスが相次いで故障による長期離脱。CLでは屈辱的なリーグフェーズ敗退、セリエAでも取りこぼしを重ねて首位争いから後退と、厳しい状況に置かれている。
 
 このメルカートでは、夏に獲得したばかりのロレンツォ・ルッカ、ノア・ラングという2人のアタッカーをわずか半年で放出し、その後釜にジオバネ(ヴェローナ/ボーナス込みで移籍金総額2000万ユーロ)、アリソン・サントス(スポルティング/買い取りオプション付きレンタル)というU-23世代の若い2人を獲得した。いずれも、目先の戦力アップ以上に来シーズン以降も見据えた先行投資の意味合いが強い補強だが、前線に故障者が多いだけに即戦力としての貢献も求められるところ。まさにその理由で抜擢されて思わぬ活躍を見せているクラブ生え抜きの若手アントニオ・ヴェルガーラ同様、うれしいサプライズとなることが期待される。

 ●ユベントス

 ローマ、ナポリと同様に、攻撃陣の強化が期待されていたのが4位ユベントス。ポストプレーで前線の基準点となれるドゥシャン・ヴラホビッチが故障で長期離脱中、新戦力のジョナサン・デイビッド、ロイス・オペンダはともに、DFを背負うよりも前を向いてスペースに抜け出すのを得意とするタイプであるため、11月に途中就任したルチャーノ・スパレッティ監督は、ポストプレーヤータイプのCF補強を求めていた。

 当初候補に上がっていたジャン=フィリップ・マテタ(クリスタル・パレス)、ユーセフ・エン=ネシリ(フェネルバフチェ)の獲得が条件面などで折り合わず不成立に終わり、補強のメドが立たないままデッドラインが近づいてきたところで候補に上ってきたのは、昨冬にパリ・サンジェルマンからレンタルで獲得した後、夏に獲得話が流れて半年で去ったフランス代表ランダル・コロ・ムアニ(トッテナム)。しかしこちらも、新たなレンタル先となっていたトッテナムが放出に難色を示して話が進まず、結局最大の補強ポイントだった基準点型CFは空席のままとなった。

 ユベントスはこのウィンドウで、ケナン・ユルドゥズの控えが手薄だった左ウイングに元サッスオーロ、アタランタのジェレミー・ボガ(ニース)を、夏に獲得したジョアン・マリオが期待外れだった右SBにスウェーデン代表エミル・ホルム(ボローニャ)を、それぞれ買い取りオプションつきレンタルで補強している。財政上の制約から会計年度内の大型支出が困難となっており、支払いを来シーズン以降に先延ばしできるこの方式以外では補強が難しいという内部事情が、前線で狙い通りの補強が実現できない制約要因になった格好だった。

●ミラン

 現時点で首位インテルの対抗勢力として一番手のポジションにいる2位ミランも、やはりCFの補強が今冬の大きなテーマだった。今シーズンから指揮を執るマッシミリアーノ・アッレーグリ監督は、本来左ウイングのラファエウ・レオンを3-5-2システムのCFにコンバートする大胆な施策で一定の成果を生み出しているが、対戦相手や試合状況によっては、前線で基準点となれる大型CFのオプションは必要不可欠というのが、前半戦を戦った結論だった。

 すでに昨年末の段階でドイツ代表のベテランCFニクラス・フュルクルクを、ウェストハムから買い取りオプションつきレンタルで補強済みだった。そのフュルクルクは主に途中出場で試合の流れを変える、あるいはリードを守り切る駒として6試合に出場し、1ゴールを記録している。しかしミランはそれに飽き足らず、さらなる強化を目指して、移籍ウィンドウ終盤になってユベントスが獲り損ねたマテタの獲得に動いた。

 レンタルではなく完全移籍という条件を提示したこともあって交渉は順調に進み、クリスタル・パレスとは移籍金3500万ユーロの完全移籍で、選手とも年俸300万ユーロ+ボーナスで、デッドライン前日には合意に到達した。しかし、その後のメディカルチェックで、膝に潜在的な故障を抱えていることが明らかになり、デッドラインデー当日になって獲得をキャンセルする結果に。ちなみにミランは夏にも、ヴィクター・ボニフェイス(当時レバークーゼン、現ブレーメン)の獲得を同じ理由で断念している。

 ●インテル

 首位を走るインテルは、シーズンが順調に運んでいるうえ、陣容にも大きな穴がないため、積極的に補強を進めるというよりも、好条件で戦力を上積みできるチャンスがあれば動くというスタンスでこの移籍ウィンドウに臨んでいた。

 その中で浮上してきたのが、かつて足かけ7年にわたって在籍し、現在はPSVでプレーする37歳のイバン・ペリシッチの復帰という案件。右のデンゼル・ドゥムフリースが足首の手術で長期離脱中なのに加え、左のカルロス・アウグストも故障がちと、やや手薄になっていたウイングバックの即戦力という位置付けで本人とも合意に達していたが、PSVが移籍を承諾しないため交渉が進まず、破談に終わった。

 チーム強化を含めたクラブ経営の全権を握るジュゼッペ・マロッタ会長は、リスクを取って積極策に打って出るよりは、消極的に見えても手堅く足元を固めるタイプ。目先の戦力アップを望むサポーターからは不満を買いやすいが、結果としてピッチ上とピッチ外の双方で、複数年にわたって安定した結果を積み重ねる手腕の持ち主であることは、ユベントス時代からの実績が示す通り。

「修復のメルカート」での動きが少なかったという事実は、現時点で「修復」の必要がない水準までチームが固まっている、つまり夏のチーム編成が成功したということを意味する。その点では、夏に大型補強を行なったにもかかわらず、さらなる補強を必要とした他の4チームと比べて、よりポジティブなメルカートだったと言えるかもしれない。

文●片野道郎

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配信元: THE DIGEST

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