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レギュレーション大変更で勢力図がまさかの激変! メルセデス&レッドブルがトップチーム入りするきっかけになった2009年

レギュレーション大変更で勢力図がまさかの激変! メルセデス&レッドブルがトップチーム入りするきっかけになった2009年

2026年のF1は、レギュレーションが大きく変更されることにより、パワーユニット(PU)も、シャシーも大きく変わる。F1の歴史上最大の変化とも言われているほどだ。しかも新規参入のPUメーカー、新規参入チーム、そしてチームとPUの組み合わせ変更など数多くの変数も相まって、勢力図が大きく変わる可能性があるとすら言われている。

 確かにレギュレーションが大きく変わると、勢力図が一変することがある。

 直近で言えば、2022年にF1マシンがグラウンド・エフェクトカーとなった際には、その前年まで強さを発揮していたメルセデスが一気に調子を落とし、レッドブルが圧倒的強さを見せるようになった。

 またその前の2014年にPU規則が導入された際にはメルセデスPU一強となり、メルセデスのワークスチームが圧倒的強さを発揮し、19戦中16勝を挙げた。同じメルセデスPUを使っていたウイリアムズは、前年ランキング9位だったものの、この年は3位へとのし上がった。

 ただ2022年のレッドブルも、そして2014年のメルセデスも、それ以前もトップチームの一角であった。そういう意味では、”大きく勢力図が変わりました!”と言うのは、少し大袈裟が過ぎるという気がする。

 しかしこの2年よりも大きなインパクトがあった年がある。それが2009年である。

 2009年のF1も、大きなレギュレーション変更があった。それも空力とPUの両方にである。

 まず空力面では、コース上での接近戦増加を目指し、車両後方に発生する乱気流を削減すべく、空力パーツをごくシンプルな形にした。前後のウイングには非常に厳しい制限が加えられ、ボディワークには空力付加物を取り付けることが禁止された。ディフューザーの形も小さくなった。これらダウンフォース削減により失われるグリップを補うため、前年まで溝がついていたタイヤが、スリックに戻された。

 そしてPUは、前年までと同じ自然吸気V8エンジンであるが、ここにKERSと呼ばれるシステムを搭載することができるようになった。このKERSとはエネルギー回生システムのことで、今で言うMGU-Kとほぼ同じようなモノと言っていいだろう。ブレーキング時のエネルギーを電気に変換して蓄え、追加パワーとして使えるようになったのだ。つまりF1がいわゆるハイブリッド車で争われるようになった元年がこの2009年である。

 この空力とPUふたつの要素が、勢力図を一変させることになった。

 空力面には抜け穴があった。これを突いたのがマルチディフューザーであり、ディフューザー後部を多層式にすることで、フロア下で発生するダウンフォースの量を増大させた。この効果は絶大であった。

 そしてKERSについては、搭載/非搭載は自由であった。搭載すれば前述の通り、走行中に追加のパワーを得られるために有利となる。しかし当時はバッテリーなどのシステムが重すぎたため、デメリットの方が大きかった。自動車メーカーをバックに持つチームは、自身の技術力を発信するためにもこのKERSを搭載したが、そのメリットを享受できるようになるまでには時間がかかった。

 この要素を後押しとして一躍トップチーム入りを果たしたのが、現在のメルセデスとレッドブルの2チームである。

■ブラウンGPの衝撃

 当時メルセデスというチームは存在していなかった。この2009年にはメルセデスの前身、ブラウンGPというチームが参戦していた。

 このブラウンGPは、前年限りで撤退したホンダを、ロス・ブラウンが引き継いで発足させたチームであった。しかもホンダが撤退を発表したのは、2008年シーズンが終わった後、年末になってからのことだった。

 当初はチーム消滅の可能性もあった。ホンダが使っていたファクトリー、そしてホンダ時代にマシンはほぼ仕上がっていたとはいえ、ホンダエンジンは当然のことながら使うことはできなかった。エンジンがなければF1マシンは走れない……まさに危機的な状況であった。

 しかしブラウンはメルセデスからのエンジン供給契約を取り付け、それを”ホンダ製”シャシーにドッキング……なんとか参戦準備を整えた。しかしテスト参加は遅れ、サーキットに持ち込まれたマシンBGP001にはスポンサーロゴがほぼゼロ。当初は”走るだけで精一杯”という見方すらあった。最初のテストから速さを見せたが、”スポンサー獲得のために車重を軽くして走っているんじゃないか?”という懐疑的な見方が強かった。

 しかしテストを重ねても速く、時が経つに連れて「あれ? これは本当に速いのか」という見方が強まっていった。

 そしてシーズン開幕。ブラウンGPは圧倒的な速さを見せ、ジェンソン・バトンが開幕7戦中6勝をマーク。それ以降は勝利を掴めなかったが、シーズン序盤の大きな貯金が活き、シーズンを逃げ切ってワールドチャンピオンに輝いた。チームメイトのルーベンス・バリチェロも2勝を挙げ、チームはコンストラクターズタイトルも獲得した。

 ブラウンGPが速かった理由。それはマルチディフューザーを持っていたからだ。そのアドバンテージを最大限に享受して、他チームがこのマルチディフューザーを開発し、熟成させるまでの間に大量得点を獲得したのだ。

 そしてKERSを搭載”できなかった”ことも、メリットだったかもしれない。

 当時のメルセデスのワークスチームはマクラーレンであった。そのマクラーレンはKERSを搭載して苦労……シーズン中盤のハンガリーGPまで、勝利を掴むことはできなかった。一方でブラウンGPはこのKERSが供給されず、それが逆に重量面やバランス面でメリットに繋がったという側面もあろう。

 なおホンダはこのRA109と名付けられるはずだったマシン(つまりブラウンGP BGP001である)を、KERSを搭載することを前提に開発していた。実際にKERSも完成し、開発担当者らはその出来にかなり自信を持っていたとも聞く。そのKERSが日の目をみることはなかったが、実際に搭載されていたらどんなパフォーマンスを発揮していたのか、実に気になるところである。

 ちなみに2008年のホンダはコンストラクターズランキング9位(獲得ポイント14)。そのホンダを受け継ぎ、しかも大ドタバタ劇を経てチャンピオンに輝いたブラウンGPは、世紀の下剋上と言えよう。

 しかもこのブラウンGPは、翌2010年からはメルセデスGPとして再始動し、今のメルセデスに繋がった……つまり参戦1年のみでダブルタイトルを獲得したという奇跡のようなチームがこのブラウンGPなのである。

■”トップチーム”レッドブルの第一歩

 さてレッドブルも、この2009年に一躍トップチーム入りを果たし、ランキング2位となった。

 前年のレッドブルはコンストラクターズランキング7位。前出のホンダよりはランキングは上だが、それでも表彰台獲得1度限りと、中団チームの一角という存在でしかなかった。チームの歴史を見ても、それまでの4年間で表彰台獲得わずか3回のみであった。

 しかし2009年のマシンRB5は、高い性能を誇った。ブラウンGPのようなマルチディフューザーは当初持たず、リヤサスペンションを当時は珍しかったプルロッドとしたため、後から取り付けるのも難しかった。しかしシーズン中のアップデートが成功したこともあり、パフォーマンスは鰻登りに上がっていった。

 KERSを搭載しなかったことも大きかった。当時のレッドブルはルノーエンジンを搭載していたが、彼らはKERSの自社開発に着手。しかしこれはうまくいかず、ルノー製KERSを使うこともできたが、実戦では一度も搭載されなかった。これも、開発の方向性を途中で変更するということにならなかったという意味でも、大きかったかもしれない。

 ちなみにレッドブルRB5のデザイナーは、エイドリアン・ニューウェイである。レッドブルはこのRB5によってコンストラクターズランキングトップチーム入りを果たし、今に至っている。そういう意味ではニューウェイの最高傑作の1台と言えるかもしれないし、レッドブルというレーシングチームを語る上では外せない1台である。もちろん、セバスチャン・ベッテル(同年4勝)とマーク・ウェーバー(同年2勝)の活躍も、この年のレッドブルを語る上では欠かせない。

 コンストラクターズランキング下位からチャンピオン争いへ……そしてそれ以降も上位チームでありつづける足掛かりとなった。そういうチームが2チームいたという点では、2009年はF1の歴史上でも、稀にみる”勢力図大転換”の年と言える。まるで恐竜が絶滅し、哺乳類が地球上を支配するようになったK-Pg境界のようなことがここで起きたと言っては、言い過ぎだろうか?

 さてまもなく始まる2026年。昨年まで下位にいたチームが、一躍先頭に踊り出る……そんなことは起きるのであろうか? それを起こすとしたら一体どのチームなのだろうか? バルセロナで行なわれたシェイクダウンテストの結果を見ると、メルセデス優勢という見立てだが、本当にそうなのだろうか。

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