男子テニスの国別対抗戦デビスカップ・ファイナル予選1回戦「日本対オーストリア」が、2月6日と7日の2日間にかけて、東京・有明コロシアムで開催された。
1勝1敗で迎えた、大会2日目。日本はダブルスで先勝するも、続くシングルス2試合は黒星に。通算2勝3敗でオーストリアに敗れ、入れ替え戦に回ることとなった。
初日(6日)に行なわれたシングルスで、1勝1敗――。この結果をいかに捉え、次の日にどう挑むかが、今回の対戦の焦点だった。それも結果は両国ともに、自国のシングルス1が相手国のシングルス2に敗れている。2日目のカードは、シングルス1同士と、シングルス2同士の顔合わせ。それに先駆け、ダブルスが行なわれる。これら3試合を戦う選手はあらかじめ発表されているが、試合直前まで変更が可能。監督の采配にも、注目が集まった。
鍵となったのは、両国のエースだ。
望月慎太郎は、昨年末にトップ100を突破。現在108位のランキングは、今回の日本チーム最高位だ。ただ昨年の11月以降は勝ち星に見放されており、今大会の初日でもユーリ・ロディオノフにストレートで敗れている。試合後の会見では「正直、どうしたら良いのかわからない」と深い落胆をあらわにしていた。
初日の夜のミーティングで、日本チームは、望月本人に翌日も出るかの意向を尋ねたという。望月の答えは、「リベンジしたい」。
この望月の決意を聞いて、燃えたのが綿貫陽介だ。ダブルスとシングルス両方に名を連ねる“デ杯男”は、「2勝1敗の良い状況で、慎太郎にバトンを渡したい」と奮起。ペアを組む柚木武に、デ杯初勝利を与えたいとの思いもあった。
綿貫の闘志は第1セットのタイブレーク、リードされた場面で光る。決まったと思われた相手のボレーをフェンスぎりぎりまで走って拾い、相手の返球をフォアの逆クロスで叩き込む。このワンプレーで流れを変え、第1セットは日本ペアが奪取した。
第2セットは僅差で落としたが、第3セットでは柚木が奮闘する。196センチの長身から、爆発音轟かせて次々にサービスエースを叩き込む。長い左腕を伸ばし、リターンウイナーやボレーも決めた。最後も柚木のサービスに、相手のリターンがラインを割る。その行方を見届けた綿貫は大の字に倒れ、柚木は両手を膝に当て勝利の喜びと安堵を噛み締めた。
ダブルスの熱が冷めやらぬ中、迎えたシングルス1対決。ここで、オーストリアチームが動いた。セバスチャン・オフナーに替え、ルーカス・ノイマイヤーを送り出す。オフナーは2年前に37位に達した実力者だが、ここ最近は戦績に苦しみ、今大会でも初日で綿貫に完敗を喫していた。オーストリアのユルゲン・メルツァー監督は、初日の夕方の時点でメンバー変更を伝えていたという。ノイマイヤーは「慎太郎のことは良く知っているし、初日の試合もコートサイドでしっかり見ていた」上で、対戦に望んでいた。
対する望月は、「変更を知ったのは直前。準備の時間はなかった」と明かす。
戦略的にも万全の備えで挑んだノイマイヤーと、志願の出場をするも、想定外の相手と対戦することになった望月。この時点で両者の心理面には、大きな差があっただろう。ノイマイヤーは望月のフォアを攻め、浅いボールを叩く戦略を遂行。ノイマイヤーが6-3、6-3で勝利し、両国の命運は最後のシングルスにゆだねられた。 ここで、今度は添田豪監督が動く。ダブルスで死力を尽くした綿貫に替え、西岡良仁を投入。観客の歓声に拳を掲げて応じ、西岡は最終決戦のコートへと向かった。
西岡とロディオノフは初対戦。それは、これまでの両者の主戦場が異なるためであり、西岡が経験や地力に勝ることを意味していた。第1セットは、その差がスコアにも表れる。戦略性とショットバリエーションに勝る西岡が、競り合いから抜けだし7-5で先取。貫禄を示した。
ところが第2セットの4ゲーム頃から、明らかに西岡の運動量が落ちる。足が止まり、ボールを見送るだけの場面も増えた。第3セットではメディカルタイムも取るが、回復の気配は見られない。結果は、7-5、1-6、0-6。健闘を称える握手の後、チーム・オーストリアの歓喜の輪がコート上に広がった。
西岡は試合後に、全豪オープン後にインフルエンザに罹り、チーム合流と調整が遅れたことを明かした。第2セットの中盤で足が止まり、ケイレンにも襲われたという。
「結果だけは残念」と言う西岡だが、デ杯で2勝2敗の状況でコートに立ったのは、今回が初の経験。その事実を、「2015年からデ杯に参加し、この歳になって新しい経験ができたのはありがたい」と前向きに捉えた。
初日を終えた時に添田監督は、「デ杯は一試合だけでなく、全体を見て判断しなくてはいけない」と言った。
西岡の初の経験。柚木/綿貫ペアの初勝利。控えの錦織圭の存在感と経験に依拠した助言。そして、シングルス1として2試合を戦った望月。
それら今回の選択が、次にどう生きるのか? その答えは、今後の各々の戦いやデビスカップで、自ずと出るはずだ。
【2月6日(金)試合結果】
第1試合 ○綿貫陽介(166位)[6-3 6-4]セバスチャン・オフナー(135位)●
第2試合 ●望月慎太郎(108位)[4-6 5-7]ユーリ・ロディオノフ(170位)○
【2月7日(土)試合結果】
第3試合 ○綿貫陽介(複892位)/柚木武(複95位)[7-6(4) 6-7(8) 6-4]ルーカス・ミードラー(複23位)/アレクサンダー・エルラー(複38位)
第4試合 ●望月慎太郎(108位)[3-6 3-6]ルーカス・ノイマイヤー(223位)○
第5試合 ●西岡良仁(131位)[7-5 1-6 0-6]ユーリ・ロディオノフ(170位)○
取材・文●内田暁
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