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ミーマイナー・美咲「少しずつ離れるより、ちゃんとお別れができる方がいいのかな?」/連載「歌詞にしなかったこと」

ミーマイナー・美咲「少しずつ離れるより、ちゃんとお別れができる方がいいのかな?」/連載「歌詞にしなかったこと」

 ミーマイナーの連載「歌詞にしなかったこと」 第2回「探さないでください」

2024年9月にシンガーソングライターの美咲とボカロPのさすけにより結成されたバンド・ミーマイナー。結成1年でイナズマロックフェスに出演を果たし、ソニー・ミュージックレーベルズへ所属するなど“次に来るバンド”として注目され、精力的にライブ活動を続けている。日常に宿る愛のカタチを音楽として届けるミーマイナーの音楽ができる裏側や、ボーカル・ギターの美咲の歌詞製作の過程を覗き見られる連載「ミーマイナーの 歌詞にしなかったこと」。連載第2回は、季節の移り変わり、記憶のタイムスリップ、日々の積み重ねで思うこと…エッセイを綴るように楽曲を制作する美咲が、生まれたての言葉を綴ってくれた。

■「雪降った!」

2月になったね。昔はクリスマスが大好きで、誕生日もあるから冬が1番特別だったけど、去年から春が好きになりました。冬の楽しかった思い出や悲しかったことがちゃんと全部ありすぎて、少しずつ積み重なって、もう逃げ場がなくなっちゃったのかなあ。冬は切ないよね。

物理的に寒いからなんだろうけど、日常に暖かさを感じる瞬間がなければこの冬の寂しさが永遠のように思えるし、暖かい瞬間で埋め尽くそうとすると自分の無力さというか、傲慢さが垣間みえてつらい。ありとあらゆる感情をただ季節のせいにしているだけと言われれば、まあそうなのですが…。

ポジティブに見れば、春が怖くなくなりました。今までは終わりと始まりがすごく苦手で、だから春は怖くて悲しかったけど、去年から失われる日々に自分なりの意味を見出せるようになりました。悲しみや絶望を探して抱え込む、自分の嫌いなところを直視できるようになりました。今までは一人で曲にして歌ってなんとか消化させて生きてきたけど、今はそれを聞いて共感してくれる人に出会えたから変われたんだと思う。

これからの私の人生にバンドがあってよかった。見つけてくれてありがとう。

■「君は覚えているかな、」
 ミーマイナー ギター・ボーカルの美咲


懐かしい匂いがして記憶の中に突き飛ばされる事、ないですか?私はよく経験します。きっかけは色々あるし飛ばされる記憶もその時々だけど、この間はシャンプーの香りでタイムスリップしました。

場所は名古屋の実家で、私は8歳くらいなのかな(適当)夏の夜、網戸に扇風機、お風呂上がり、テレビでバレーボールを見ながらアイスクリームを食べている記憶。

体育館の床を鳴らす靴の摩擦音とか、会場の声援とか、実況している人の声とか、家族の会話とか、ほんの数秒だけど音や景色、体温までしっかり覚えていて、リアルすぎるから少し怖い。逆にそういう瞬間的な記憶ではなくて、頭のどこかにうっすらずっと存在している記憶もあります。そういう全ての過去に、もう戻れないんだなと思って落ち込むけど、同時に今この瞬間もいつか過去になってしまうから大切にしなきゃ、と思います。

生きていれば良いことも悪いこともあって、そのどちらもが今の私を作っている。優しさや愛し方は、与えてくれた人たちの真似をして、痛みや苦しみは見えないように蓋をして、そうやって生きてきたし、そうやって生きていくんだと思います。新しい夢や毎日がやってくることは、過去の自分が消えるわけではないから全てを背負って生きていくしかない。過ちや後悔のようなものに足を引っ張られるかと思いきや、実は違う。

失敗は意味になるまで頑張れるし学びになると思うから大丈夫。私が後ろ髪を引かれるのは優しさや愛のような暖かいものです。電話越しに泣きながらつらかった過去や悩みを話してくれた時、2人の間にあったのは確かに思いやりや信頼だったし、落ち込む私の隣にただずっといてくれていたのは、確かに優しさで愛情だった。当時は気づけなかった優しさが、振り返るとそこらじゅうに落ちていて、君を思い出すと苦しいから、どうか君は、私を忘れていて欲しいと思う。どうか苦しくありませんように、と願っている。

なんとなく少しずつ離れていってしまうより、ちゃんとお別れができる方がいいのかな?

■「毎日と日々」

ただの私の感覚だけど、毎日は次々進んでいく習慣のようなもので、日々は遠い記憶や時間の積み重ねのようなイメージを持っている。地に足をつけて一歩ずつ生きていくためには、毎日を捉える事が大事だけど、日々を忘れていてはどこに進んだらいいのか分からなくなってしまいそうな気がする。

何かを判断する時、誰かと向き合うとき、大きい背中に憧れる時、それはゆっくり少しずつ遠くなっていった日々が作り上げた、潜在的な意識が機能していると思う。淡々とこなす毎日ではなくて、誰かと探り合い、象りあった日々。あの人がいなければ、今の私はいないと思う瞬間、ありませんか?

いい意味でも悪い意味でも私にとって大切な人の影響はとても大きいです。私が極端に人との別れを悲しむのは多分、人格や未来を人との関わりの中で形成することに生きる意味を感じるからだと思います。誰かの優しさが足になり、腕になり、誰かの言葉が心臓になり、みたいなそういう感覚。だから別れは自分の体の一部を失うみたいな痛みを感じて耐えられない。その人のことを思ったら離れてあげる事が愛だったりするから、人生は切ないね。思い出せば思い出すほど失ったものばかりです。

「毎日」と「日々」みたいに、ニュアンス違いの言葉がたくさんあるから日本語は面白い。そして、だからこそ難しい。私は過去を振り返るのが結構好きなんだけど、人に上手に共有できたことがない。会話となると感情も入ってくるし、単語から想像されるものは必ずしも一致するわけじゃないから、言葉で記憶を共有するのは難しいんだなと思います。仕方ないね。私もあなたの過去を知りたいと思って話を聞くけど、多分ちゃんと分かってあげられてないんだろうな、と寂しくなる夜がたくさんあります。過去を一緒に過ごした当事者はもう忘れてしまっていたり、もう会えなかったりするからやっぱり一人で考えるしかないんだね。これまた個人的で行き場のない思いをつい数日前、書きました。


いつかあなたに音楽として届く頃、この曲だけはあなたの過去を優しく撫でてあげられたらいいな。

美咲
ミーマイナーの連載「歌詞にしなかったこと」




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