現在のテニス界は、鍛えられたフィジカルなしでは戦えません。90年代では大会期間中はそれほどトレーニングをしないものでしたが、今はマシンを使って負荷のかかるトレーニングを多くの選手が行なっています。ツアーレベルでは大会会場にジムの設置が必須になっていることからも、フィジカルの重要性が高くなっているのは明らかです。
オフシーズンが短いスポーツなので、シーズンを戦い抜くフィジカルを維持するために必要になってきているのでしょう。オフに筋力を付けたとしても、徐々に落ちていくものなので、その落ちる速度を少しでも遅くするために、大会中もジムでトレーニングをしているわけです。
大会に出場中のトレーニングの組み方はだいたい決まっています。私の場合は、試合2日前が完全休養日。前日は試合前の準備・調整で負荷のかかるトレーニングは行なわず、身体のケアを受けて最終調整をします。試合当日は試合後の身体のケアを重点的に行ないます。
試合に負けた後は、試合内容やダブルスに出場しているかどうかや、その後のスケジュールにもよりますが、「アクティブレスト」を取ることがあります。軽く動くことで血流を良くして疲労物質を排出させ、疲労回復を促すのです。次の大会までに余裕がある時や疲労度によって、翌日か試合2日後を完全休養日にして、3日後から筋力トレーニングを開始です。
セカンドキャリアの時は、トレーナーからA、B、Cと3つのメニューを作ってもらい遠征に行っていました。それを大会スケジュールに合わせてアレンジして取り組みます。
遠征から帰ってきた時、だいたい2、3カ月に1度ぐらいは、痛みがある部分やこうしていきたいという話をトレーナーとして、身体をメンテナンスしていきます。
本格的にフィジカルを鍛えるのは、1年間を戦い終えたオフシーズンです。自分の課題をトレーナーと共有します。例えば、切り返しが遅い、バックを打つ時にこの筋肉に意識が入りづらい、このショットがうまく打てない原因が、フィジカルのこの部分が足りないからではないかなど感じたことをフィードバックして、メニューを立ててもらっていました。オフシーズンは大きなテーマに取り組む期間です。
トレーニングでどこまで追い込むかは選手次第です。選手はだいたいどこかに痛みを抱えています。痛いので悪化させたくないからトレーニングをしない選択肢もありますし、痛くてもできる方法を探す選択肢もあります。
多くの場合、無理をしない方を選ぶでしょう。ただ私は自分の限界はリミッターを外さないと超えられないと思っています。自分が感じる限界が、本当はまだ限界ではないのかもしれない。限界のラインを引き上げるためには、限界を超える必要があります。自分の想像を超えるものは、限界を超えていかないと手に入りません。
これが本当に難しく、やり過ぎでもダメで、やらなさ過ぎてもダメ。その見極めを探ることが大事なのだと思います。私はやり過ぎて何度も失敗しましたが、どこまで行くとやり過ぎなのかをずっと探していました。限界をどこに置くのか。トレーナーに設定された限界ではなく、自分が行けると思ったところまで行ってみてください。そうすれば自分の世界を押し上げられるようになります。
文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン
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