トレード直後に古巣チームと対戦するのは、選手にとって不思議な感覚だろう。
2月5日のトレード期限最終日に5年間在籍したシカゴ・ブルズから、ボストン・セルティックスにトレードされたニコラ・ヴュチェビッチ。35歳のベテランは移籍から6日後、新天地3戦目でブルズとの対戦に臨んだ。
今季のトレード市場で積極的に動いたブルズだけに、セルティックス戦の先発陣でヴュチェビッチと同僚だったのはマタス・ブゼリスとパトリック・ウィリアムズのみ。それでも古巣相手に、ベンチから3ポイント4本を含む19得点にゲームハイの11リバウンド、3アシスト、2ブロックという力強いパフォーマンスで、124-105の勝利に貢献した。
5日にセルティックス入りしたヴュチェビッチにとって、このブルズ戦の前日が、初めての実戦練習の機会だった。
「時間をかけていろいろなことを確認できたのがものすごく役立った。プレーを繰り返して細部まで詰めていくことは常にプラスになる。それまではシュートアラウンドでコーチと一通り確認した程度で、一度にたくさんのことを詰め込んだ感じだった。合間の一日は、休養を取りつつ映像を見ながらプレーをある程度覚えた。それで少し落ち着いて試合に臨めた気がするよ」
その効果が顕著に現れていたのはアウトサイドシュートだ。加入後の2試合では3ポイントが1/7だったが、ブルズ戦では4/5と高確率で決め切った。それにはシュートに至るまでの味方とのパスワークにより、いかに効果的なタイミングと場所でシュートを打てたかも大きく影響していた。
ジョー・マズーラHC(ヘッドコーチ)も、そんなヴュチェビッチの実戦練習の効果を感じていた。
「ディフェンスではピック&ロール時のポジショニング、そしてオフェンスでも状況判断がとても良かった。スペーシングや、自分がいるべき場所を的確に把握すること、トランジション時の素早い判断、そして攻撃の実行力など、コート上でずっとリラックスしてプレーできていた」
19、21年と2度のオールスター経験を持つモンテネグロ出身のビッグマンは、今季でキャリア15年目を迎えたが、ポストシーズン出場経験は多くない。
NBA1年目の12年、当時フィラデルフィア・セブンティシクサーズの一員としてカンファレンス・セミファイナルに進出。ただ、出場したのはセミファイナル初戦の1試合のみで、プレータイムも3分にも満たなかった。 その後オーランド・マジックでも3回プレーオフを経験しているが、いずれもファーストラウンドで敗退している。
ヴュチェビッチにとって攻守の強度が上がるポストシーズンの戦いを体験することは最大の目標であり、ブルズ戦の後のインタビューで、マズーラHCに「ベンチスタートでもいい」と伝えた真意を聞かれると、次のように答えた。
「大きな勝利を掴むチャンスがあること。それはこれまでの自分のキャリアに欠けていたものだった。プレーオフには何度か出たけど、本当に深いところまで勝ち進む経験はできていない。キャリアの終盤に差しかかる中で、それはどうしても成し遂げたかったことなんだ。
優勝を本気で目指している選手たちの一員として、同じく優勝を求めているコーチ陣の下でプレーできる。彼らは何をすべきかわかっている。だから自分もいろいろ質問しながら、彼らがどういうプレーを求めているのか、どんなプレーを自分にしてほしいのかを理解しようとしているところだ。できる限り早くチームにフィットするためにね」
そんなヴュチェビッチの姿勢を、指揮官も高く評価している。
「彼は細部にこだわり、やるべきことをきちんとこなそうとする。そして何より、勝ちたいという意志を持っている。そんな彼の取り組みを、私は信頼している」
文●小川由紀子
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