自分の子どもではなく、親戚でもない。ましてや友人でもない。それでも、「大丈夫か」と心配してしまう。ミラノ・コルティナ五輪でフィギュアスケート・ペア競技に臨む“りくりゅう”こと木原龍一選手と三浦璃来選手に対してだ。
フィギュアスケート団体で「異次元」との表現さえ陳腐に感じるパーフェクトな演技で日本の銀メダル獲得に計り知れない貢献を果たした。だからこそ、怖さもあった。あの出来の後に迎える個人戦。期待は時に重圧に変わる。
ショートプログラム。得点源のリフトで痛恨のミスをした時、会場が静まり返ったように思えた。正直、こちらの思考は停止した。まさか、という言葉すら思い浮かばない。
赤の他人なのに、なんだか心にぽっかりと穴が開いた感じだった。この感覚は1993年10月28日に“ドーハの悲劇”をテレビの前で観ていた夜以来だろうか。とにかく何も手がつかず、やる気を失ってしまった。
もっとも、誰より悔しいのは本人だ。演技後、氷上でうなだれて約10秒間も動けなかった木原の姿がそれを物語る。ただ、五輪の戦いが終わったわけではない。
まだ、フリープログラムがある。ここで逆転してこそ世界王者。“りくりゅう”の真価がまさに問われる。
文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)
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