
『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)
【画像】え、「意外と身長同じなんだ」 コチラが小泉八雲と妻・セツさんの実際の可愛い写真です
ハーンの防犯対策は
2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』第20週では、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」の養父「司之介(演:岡部たかし)」が家の金庫から大金を盗み出し、「荒金九州男(演:夙川アトム)」という怪しい男に金を預けます。司之介としては、もう一度借金をして「ヒリヒリした生活」をしたかったのですが、荒金は小豆の相場でしっかりと稼ぎ、彼にお金を数倍にして返しました。
司之介は結果的に泥棒にはならずに済みましたが、今度は女中の「クマ(演:夏目透羽)」が「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」ほか家族のパンを焼くために使っている焼き網がなくなってしまいます。松野家と同居しているヘブンの生徒「正木清一(演:日高由起刀)」の読みによると、焼き網を盗んだ犯人は「この中にいる」ようです。
いきなり始まった「泥棒」探しの展開は、ヘブンのモデル・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が、熊本時代に語っていた犯罪被害の話が基になっているのかもしれません。史実の事件は、もっと物騒です。
ハーンが熊本に住んで3年目となる1894年の9月、彼は親友の西田千太郎(「錦織友一」のモデル)宛の手紙で、泥棒(ハーンは「泥棒たち」と記述)に入られたことを書いていました。しかし、泥棒たちが盗んだのは金時計と4ドルだけだったそうです。
税関の公式サイトの資料によると、1897年に貨幣法が制定されるまでは1ドルは約1円だったため、ハーンは4円しか盗られずに済んだことになります。ハーンは熊本の第五高等中学校(現:熊本大学)で200円もの月給をもらっており、西田への手紙には家のなかにもっと多額のお金や宝石類まであったことが書かれていますが、泥棒たちにはその在り処が分からなかったようです。
ただ、その泥棒たちはハーンのいた部屋には近付かず、そのとき泊まっていた「耳の聞こえない客」がいる部屋の近くまで来ていたといいます。ハーンは手紙で、「多分この家をよく知っていたのでしょう」と語っていました。もしかすると、それ以前に家を訪れたことがある知り合いが盗みに入っていたのかもしれません。
また、ハーンは手紙で「わたしは、いつも装弾したコルト拳銃を手元に置いて寝ていて、そしてすぐ目が覚めるのですが、泥棒たちは、わたしにそのチャンスをくれませんでした」と書いていました。ハーンと妻・小泉セツの長男・一雄も、著書『父「八雲」を憶う』のなかで「毎夜枕の下に旧式な大型の拳銃を置いて寝ていました」と証言しており、ずっとこういった習慣があったと思われます。
ちなみに、ハーンは1877年にオハイオ州シンシナティから、ルイジアナ州ニューオーリーンズに移住する旅の間、1週間ほどテネシー州メンフィスに滞在していた際に、道端で子猫をイジメている男を見て激怒し、往来で男に向けて発砲したこともあったそうです。数発撃った弾は外れてしまい、ハーンは一雄にそのことを「一生の痛恨事」だと語ったといいます。熊本でも、泥棒を見付けていければ躊躇なく撃っていたかもしれません。
ハーンは前述の西田への手紙で、その当時熊本で犯罪が増えていたことを綴っていました。日清戦争が始まって2か月後の時期だったため、ハーンは「(犯罪が多いのは)以前よりずっと窮乏の悲惨の状態だからです」と書いています。『ばけばけ』ではまだ焼き網が盗まれただけですが、今後どうなるのでしょうか。
※高石あかりの「高」は「はしごだか」
参考書籍:『ラフカディオ・ハーン 西田千太郎 往復書簡』(八雲会)、『父「八雲」を憶う』(千歳出版)
※本文を一部修正しました。(2026年2月18日13:06)
