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ダルビッシュも認める侍投手陣の成長。前回大会から3年、変化したトラッキングデータへの意識【侍ジャパン合宿レポート:4日目】

ダルビッシュも認める侍投手陣の成長。前回大会から3年、変化したトラッキングデータへの意識【侍ジャパン合宿レポート:4日目】

これが3年間の、日本の野球界の成長なのかなと思った。

 2月18日で、WBC侍ジャパン合宿も4日目に入った。この日、2度目となるブルペン入りした宮城大弥(オリックス)が、トラックマンのデータを見ながら何やら確認していた。気になる球種のデータがあるようで、スタッフともコミュニケーションをとっていたその姿は、少なくとも3年前は見られなかった光景だった。

 データアナリストとして、侍ジャパンに帯同する星川太輔氏は話す。

「前回のWBCの際、投球練習で1球ごとにトラックマンのデータを見ていたのは、ダルビッシュ有(パドレス)と大谷翔平(ドジャース)だけでした。今は全員ですからね、この意識の変化は大きいと思います」

 3年前、メジャーリーガーとしては唯一侍ジャパンの宮崎合宿から参加したダルビッシュは、NPBの選手たちにとっては「先生」だった。トラックマンの存在は知っていた。各球団でも取り入れてはいるものの、細かいところまで理解が及んでいなかったのが、当時のNPBの実情だった。
  実は、当時も星川氏とはその意識の違いを話したことがあった。データアナリストとして日本でトラックマンを広める立場から、もどかしい気持ちを吐露していたのだった。「自分の球がどうなっていたのか、感覚があって、答えがあるのに気にならないのかな」とは、当時の合宿中に聞いた言葉だ。
 
 あれから3年の月日が経った。前回のコラムでも高橋宏斗(中日)ら経験者のルーティーンが、3年前のものとは移り変わっているという視点を書いたが、トラックマンの理解という意味においても、選手たちは大きな変革を迎えると言えるだろう。

 この3年間の違いを、星川氏はこう語る。

「(前回の)WBCが終わった頃くらいに、NPBの球団の方からかなり連絡をいただいたんですよ。うちも詳しく知りたいと言うことで。あの年から一気に変わっていったと言うのはありますね。そういう流れでもありましたけど、一人の存在で一気に加速していったといえますね」
  その一人とは当然、ダルビッシュのことである。トラッキングデータをもとに自身のピッチングをデザインしていたダルビッシュは、データの扱い方を熟知している。アメリカにいる時からイメージを膨らませ、実際にデータを見てアドバイスしていたのが3年前だった。ダルビッシュの取り組みは、日本の選手からしてみれば、雲をつかむような話だっただろう。

 しかし、そうしたことは日本野球が新しいところへ向かう一つのきっかけだったとも言える。メジャーに比べて遅れていたとしても、それは言い換えれば伸びしろでもあった。何も知らなかったところから日本野球は変わり、この3年間で大きく成長したのである。

 ダルビッシュは、選手たちの確実な変化は感じているとこう話す。

「(成長を感じる部分は)いろいろありますね。宮城くんもすごく成長してきてると思いますし、伊藤君もブルペンを見たらすごい球を投げてます。投げている球のイメージがちょっと変わったなっていうところがあって、レベルアップしてるなと。高橋くんもいい球を投げていて、矢田先生(編集部注:ドジャースの山本由伸をオリックス時代からトレーナーとして支える柔道整復師・矢田修氏のこと)の指導によるエクササイズも見ていますけど、当時は矢田さんの指導を受けて2年目だった。すごく上手になったんだろうなという感じは見てて思いますね」

 トラックマンの理解についても同様だという。
 「3年前はみんな、何を見ていいか分からないっていう感じだったと思うんですけど、今回はもう自分たちで見ながら話しています。投球が終わった後にトラックマンの方とプロットを見ながら会話してるのを見て、また進んでいるなというふうに感じます」

 メジャーリーグがすべてとは言えないものの、世界の最高峰のデータサイエンスの世界を日本の野球も少しずつ理解してきた。昨今は投手の成長が凄まじく、投高打低になってきているとも言われるが、その背景にはこうしたWBCの侍ジャパンの中で起きたことの好影響もあるだろう。

 宮城は自身の変化を話す。

「前回も合宿に来るまでに自信を持っていたことがあったかもしれないですけど、ここに来たらもっと頑張らないといけないと思う。その繰り返しなのかなと思います。前回、ダルビッシュさんから話を聞いて、本当にわからなかったというか。いろんな話を聞いた時に、全部が全部わからないままではなくてちょっとずつ 成長してきたかなと思います」

 ピッチング終了後にトラックマンデータを見返す侍ジャパンの投手陣たち。WBCという大きな大会は、日本野球の現在地を測れる貴重なタイミングでもある。侍の投手陣の意識の高さは、連覇を目指す侍ジャパンにとって何より大きなものとなるに違いない。

文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。

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配信元: THE DIGEST

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