
橋本環奈が、2月3日に27歳の誕生日を迎えた。そのキャリアを振り返ると、常に想像を超えるスピードで進化し続けてきたことに驚かされる。もはや「1000年に1人の逸材」の頃がはるか昔に思えるほど。放送中の主演ドラマ「ヤンドク!」(毎週月曜夜9:00-9:54、フジテレビ系)での演技も注目を集めているこの機会に、彼女の軌跡を振り返る。
■主演最新作では“元ヤン”のドクター役
橋本が元レディースの脳神経外科医・田上湖音波役で主演真っただ中の月9ドラマ「ヤンドク!」は、彼女の“百面相”をたっぷり堪能できるドラマだ。医療ドラマらしいシリアスな劇要素を保ちつつ、湖音波の破天荒な半生と人柄を印象づけるには、これくらいの主人公力が必要だと思わされる。
福岡のローカルアイドル「Rev. from DVL」で活動していた頃に撮られた「奇跡の一枚」が今で言う“万バズ”をたたき出し、たちまち時の人になった橋本。その後俳優活動を本格化させ、初主演作が映画「セーラー服と機関銃-卒業-」(2016年)になる。あれよあれよという間にこのビッグタイトルの平成版リメークに抜てきされたわけだが、同映画の製作発表の場で橋本は「重圧は封印したい」と宣言し、「プレッシャーに負けたら目高組・組長星泉という大切な役を演じることもままならないと思ったから」と理由を述べた。
同作の現場では、現役高校生にして極道の目高組組長・星泉を演じた橋本は、役柄同様に「組長」と呼ばれていたそうだが、大役であることを承知の上で、年上の俳優たちとも対等に芝居をやりきった。そんなバイタリティーの強さを既に見せていたことがうかがえる。
翌2017年には福田雄一監督の実写映画「銀魂」でヒロイン・神楽を演じる。オレンジ色の髪にチャイナ服といういかにも漫画的なビジュアルで、かつ原作コミックから「顔芸」でも愛されたキャラクターでもある。橋本はこの役で白目をむいたり、大口を開けて驚いたり、鼻をほじったり、変顔を惜しげもなく披露してみせた。
もともと目鼻立ちがくっきりしているからどんな表情も絵になるが、美少女イメージを捨て去って神楽になりきった芝居には原作ファンも好感を抱き、漫画実写化のようなクセの強い作品でもヒロイン力があることを証明した。
■実写版「かぐや様」シリーズでもコメディエンヌぶりさく裂
もう一つ、橋本のコメディエンヌぶりがさく裂したのが、やはり人気漫画の実写化となった「かぐや様は告らせたい 〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」シリーズだ。2019年と2021年の2度にわたって映画化され、2026年2月1日からLeminoでも2作同時に配信が始まった。
同作はエリートの卵ばかりが通う名門校・秀知院学園を舞台に、橋本演じる才色兼備の生徒会副会長・四宮かぐやと生徒会長の白銀御行(平野紫耀)を軸にしたラブコメディー。お互いが憎からず思っているのに、「告白したら負け」とばかりに、相手に告白させるための頭脳戦を展開していく。ただツンデレが見どころなだけの作品ではない。
四宮と白銀の恋愛頭脳戦が展開されていくため、本作は橋本と平野のモノローグによる芝居も多い。そしてリズミカルな会話のやりとりによるテンポ感が心地いい。2019年公開の第1作では、四宮が天然キャラの藤原千花(浅川梨奈)が繰り出す下ネタに盛大にコーヒーを吹き出すシーンがあるが、橋本はここでもカメラの真正面でコーヒーを吹き出し、下ネタにうろたえる様を物おじせず素直に演じていた。
変顔してもかわいい橋本のビジュアル力を生かして、四宮のギャグのような変顔を撮ったのだ。「かぐや様」の中でも屈指のコメディーシーンだが、橋本を起用した実写ならではの成功例といえるだろう。
2021年公開の「かぐや様は告らせたい 〜天才たちの恋愛頭脳戦〜 ファイナル」では、四宮の妄想力もヒートアップする。そういった漫画的な、ややオーバーな空気感に芝居を合わせつつ、白銀に一対一で思いを伝えるシーンでは、本作ならではのコメディー感に頼らず、言葉と佇まいで四宮の気持ちをストレートに明かした。

■初の朝ドラ出演で等身大のヒロインに!
こういう色を持った俳優なので、他にも映画「キングダム」シリーズの河了貂、舞台化されて日本を離れイギリスなどでも上演された「千と千尋の神隠し」の千尋など、現実離れした世界に生きる役でも彼女の存在感は際立つ。だが2024年の連続テレビ小説「おむすび」(NHK総合ほか)の米田結役では、そうしたファンタジーの衣を脱ぎ捨てた、1989年生まれの等身大の女性も好演した。
平成から令和にかけての日本社会を元気に生き抜く、結の姿は視聴者にとってもリアルで、多彩な感情や思い出が脳裏によぎる。ギャル文化を楽しんだり、震災にもめげない姿は現実離れしたキャラクターとしてではなく、現代社会を生きる一人の人間として苦楽を見せた。彼女がリアルな世界においても求心力を持つ俳優であることを証明した。
橋本がこうした数々のプレッシャーを跳ねのけてきた源泉は、タフな精神力と飾らない人柄にあるのかもしれない。バラエティー番組などで公言している通り、橋本は大のお酒好きでもある。自宅にビールサーバーを設置しているという逸話や、「2杯までは休肝日」と言い放つその豪快さは、いわゆる清純派ヒロインのイメージを良い意味で裏切っている。
また、人たらしなのも彼女の武器だろう。「銀魂」の後も「斉木楠雄のΨ難」「新解釈・三國志」「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。」と福田監督の作品との縁は続いている。「キングダム」「銀魂」で共演した長澤まさみとは、年上の長澤からも人生相談をされたり、橋本も「美しい上に優しいのです」とXでつづったりする仲である。美点を見つけてどんな人とも仲良くなれる人柄なのも、業界の内外で愛されるゆえんだろう。
紅白歌合戦での堂々たる司会ぶりや、バラエティー番組で見せる快活な姿。圧倒的なビジュアルを持ちながら、自他ともに認めるサバサバとした性格…。1000年に1人の逸材は、いまや日本の芸能界に欠かせない、タフさと親しみやすさを併せ持つ、国民的ヒロインへと成長した。
◆文=大宮高史

