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慶應生&東大生研究チームが徹底分析!テニスの競技成績を飛躍的に向上させるヒント【ブレークスルーの鍵:最終回】<SMASH>

慶應生&東大生研究チームが徹底分析!テニスの競技成績を飛躍的に向上させるヒント【ブレークスルーの鍵:最終回】<SMASH>

■行動変容を促す「ブレークスループログラム」

 本連載では、「ある時期を境に、競技成績が飛躍的に向上する現象」である「ブレークスルー」を実現するために、選手が行なってきた工夫や実践を13回にわたって紹介してきました。これらの知見を単に知識として留めるのではなく、選手の行動変容につなげていくためには、どうすればよいのでしょうか。

 それに対する1つの回答として、私たちは「ブレークスループログラム」と題したプログラムを開発し、約半年間、大学テニス部にて実践しました。最終回となる今回は、この「ブレークスループログラム」の具体的な内容を紹介します。それを通して、読者の皆さんがそれぞれの現場で、「ブレークスルーの鍵」の知見を活用するためのイメージを膨らませていただけると幸いです。



















■プログラムの参加者・期間

 プログラムに参加したのは、慶應義塾体育会矢上部硬式庭球部の団体戦メンバー13名です。同部は、関東理工科大学硬式庭球連盟の1部リーグに所属し、毎年秋に行なわれる関東理工科リーグ団体戦での男女アベック優勝を目標としています。

 2024年は、男子チームが1部3位となりましたが、女子チームが創部史上初の1部優勝を果たしました(2025年は男女ともに1部2位となりました)。このプログラムは、2024年の3月から関東理工科リーグ直前の10月にかけ、約半年間行なわれました。
 ■プログラムの内容

「ブレークスループログラム」は、約2ヵ月に1回行なわれる「ミーティング」と、そこで計画した内容に取り組む「実践期間」から構成されます。2024年の3月から10月の間に、計4回のミーティングを実施しました。そして、専用のワークシートを用いて、「自己分析」→「行動目標の設定」→「現場での実践」→「振り返り」というサイクルを回していきました。



















 まず、「自己分析」に取り組む前に、「ブレークスルーの鍵」で紹介してきた13の項目について、筆者らが解説を行ないました。そのうえで、各項目について、自分がどの程度実践できているかを振り返り、〈①全く実践できていない〉~〈⑤とても実践できている〉の5段階で自己評価を行なってもらいました。自己評価を入力すると、ワークシート上でレーダーチャートが出力され、どの項目の得点が高く、反対にどの項目の得点が低いのかを直感的に把握することができます。




















  そのうえで、次回のミーティングまでに意識して取り組みたい項目を選択し、それを具体的にどのように実践するのかを考え、行動目標を設定してもらいました。たとえば、「練習量を増やす」の項目を選んだ選手は、〝金曜の2限の時間に、部員の○○さんと自主練習をする〞といった目標を設定し、「頻繁に大会へ出場する」の項目を選んだ選手は、〝JTA大会に1大会以上出場する〞といった目標を設定しています。

 ミーティングを終えると、2ヵ月間の実践期間に入ります。この期間には、目標へのフィードバックや、1ヵ月が経過した段階でのリマインドを行ないましたが、基本的には設定した行動目標を各自が自律的に実践することを目指しています。ある選手は、テニスノートに設定した行動目標を記しておき、日頃から目に入るような仕掛けづくりをしていたようです。

 そして、次のミーティングの冒頭に行なわれる「振り返り」では、2ヵ月間の取り組みを振り返り、設定した行動目標をどの程度達成できたかを、〈①全く実践できなかった〉~〈⑤とても実践できた〉の5段階で自己評価してもらいました。そのうえで、具体的にどのように実践したか、実践してどのような学びや気づきがあったかを、チームのメンバー同士で共有します。その後、再び自己評価を行ない、新たな行動目標を設定するというサイクルを繰り返しました。

■プログラムの成果

 プログラムの期間中、自己最高戦績を更新した選手が複数名見られましたが、競技成績の変化はさまざまな要因が絡み合って生じるものであるため、このプログラムが競技成績を向上させたと言い切ることはできません。しかし、選手たちがプログラムで入力した自己評価の得点の変化を分析した結果、1回目から4回目にかけて、得点が有意に向上しました。一方、プログラムに参加していないメンバーでは、同じ調査を行なっても得点の有意な変化は確認されませんでした。こうした結果から、このプログラムが選手の意識や行動の変化を一定程度促した可能性が考えられます。





















  さらに、選手への聞き取り調査において興味深かったのは、「普段一緒に活動していても、テニスについて話す機会は意外と多くない。他のメンバーがどのようにテニスについて考えているか、どのようなことに悩んでいるかを知ることができて面白かった」、「テニスが強い部員は自己分析がしっかりできていて、課題を明確に把握できていると感じた。自分もそのようにしてみたい」といった発言です。このプログラムは、選手個人の行動変容を意図したものでしたが、選手同士でのディスカッションを通じて、普段は起こりにくい、チーム内での競技に関するコミュニケーションが生まれる場としても機能していたことがうかがえました。

【おわりに】
 連載「ブレークスルーの鍵」をご愛読いただき、誠にありがとうございました。14回にわたり、目標設定の方法から大一番で力を発揮する方法まで、トップ選手の「考え方」をさまざまな角度から紹介してきました。そこには、テニスコートを超え、日常生活や仕事、学業にも通じるヒントが含まれていると考えています。この連載が、テニスに励む方々はもちろん、さまざまな目標に挑戦する方々の後押しとなれば幸いです。

解説=日置和暉
2000年生まれ。慶應義塾体育会庭球部を経て、慶應義塾大学大学院に進学。慶應義塾大学総合政策学部非常勤講師。プリンス契約コーチ。2023年、日本テニス学会研究奨励賞。

解説=發田志音
2000年生まれ。慶應義塾体育会矢上部硬式庭球部を経て、東京大学大学院に進学。国際テニス連盟のコーチング科学誌で論文審査を担当。2018年、日本テニス学会研究奨励賞。

構成●スマッシュ編集部
※スマッシュ2025年3月号より抜粋・再編集

【画像】なかなか見られないトッププロの練習やテニス教室の様子

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配信元: THE DIGEST

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