
悲しき現実に谷口栄斗が魂の訴え「非常にぬるい。負けて必然」「自分が嫌われ者になってでも」川崎はなぜ“緩すぎる”“何も伝わらない”チームになってしまったのか
[J1百年構想リーグEAST第3節]川崎 1-2 FC東京/2月21日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu
重い空気が広がるような敗戦だった。
百年構想リーグの3節で、“多摩川クラシコ”としてホームでFC東京と対戦した川崎は、1-2と今季初黒星を突き付けられた。
特に前半は後方からの組織だったポゼッションを展開するFC東京に対し、後手を踏み続け、右SB山原怜音のスーパーゴールで一時は同点に追いついたものの、7分後には勝ち越され、最後まで追いつくことはできなかった。
何より不安に映るのは、今の川崎はどんな戦いをしたいのかが見えにくいことにある。
長谷部茂利監督が就任した昨季は、より守備面にフォーカスし、攻撃は素早い展開から伊藤達哉、エリソン、マルシーニョらの個の力を活かし、リーグ最多得点を誇った。だが、失点数はリーグワースト3位タイ。
今季の開幕戦も柏に5ゴールを奪ったとはいえ3失点。そのため、続く千葉戦はよりブロックを引いて相手を迎え撃った印象だが、丁寧につなぐ昇格チームに対し、守勢のままスコアレスで90分を終え、PK戦でからくも勝利を掴む形であった。
千葉戦は改めて失点をしないことをテーマに掲げていたというが、ボランチの河原創が「攻守に(チームの)距離感が広すぎた」と振り返ったように、ミドルブロックでの守備は緩く、ボールの奪いどころも明確にできぬまま、シュートを浴び続け、個の力に頼ることの多かった攻撃もキーマンたちの調子の波によって浮き沈みが激しい状況。それは「セットして、ボールを相手に持たせても良いというプランでもありました」(谷口栄斗)というFC東京戦でも同様であった。
攻守は一体でバランスの問題になるが、守りに主眼を置くのであれば、今の川崎は守備意識が低すぎると言わざるを得なく、攻撃面もSBとサイドハーフを活かした“外回し”が多く、かつての川崎のような、相手を見て、立ち位置を変えながらボールを運ぶサッカーの香りはほぼ消えている。
“オーソドックスなスタイル”を掲げる長谷部監督はFC東京戦をこう振り返った。
「流れも含めて前半から安い失点と言いますか、簡単に失点してしまった。1失点目も2失点目も、そういう感想です。また得点の時の流れなど自分たちの色が出ていたところは非常に良かったと思います。ああいう時間をもう少し増やしたいですし、回数も時間も。それを前半から少しでき始め、後半もそこにトライするようにハーフタイムにも話し、トライしてくれましたが、最初からああいう形をもっと取らないといけないと思います。
数字でモノを語るのは私の仕事柄、ここで話すのは変な話だと思いますが、何試合も連続でシュート数を上回られている。非常に複雑な気持ちと言いますか、感情的に言うと嫌な気持ち。そうならないようにしなくちゃいけない、そういう想いです」
一方で、より重い言葉を残したのは今季加入したCBの谷口だ。チームを良くしたい、優勝争いをしたい、そんな熱い想いを抱え、自身のプレーの課題にもベクトルを向けながら魂の訴えを口にしたのだ。
「負けて必然かなと思います。練習からだいぶと言いますか、非常にぬるいチームなので、負けて必然かなと思います。
鹿島を見てもそうですし、戦わないチームは優勝なんて口にできないと思いますし、今のメンバーで優勝したのって、アキさん(家長昭博)、リョウタくん(大島僚太)、ユウさん(小林悠)ら、そういった選手だけで、僕もそうですが、優勝を口にするならそれなりの覚悟と言いますか、プレーで表現しないと、厳しいんじゃないかと思いますし、何も成しえていないメンバーが、泥臭く闘わないと何も残らない。そんなの口だけになってしまうので、非常に甘いチームかなと。開幕から見ても誰もが思うと感じます。負けて必然です。
(FC東京戦は)セットして、ボールを相手に持たせても良いというプランでもありましたが、一瞬の隙を突かれて、簡単に失点してしまったし、チームとして守るべき時間を共有しなくちゃいけないですし、隙を作ったらなおさら守備に対して意識がない分、一個ずつズレて大きな崩れができるチームなので、そこは今日の2失点でより明確になったと思います。
日頃の練習から厳しさを求めないと、優勝を口にしているチームなので、そこには近づけないと思いますし、僕は去年、一昨年とJ1で厳しい環境、チームにいたので、そのベースを非常に大事にしていますが、こっちにきてそのベースを見失いつつあるので、自分自身が嫌われ者になってももう一度やらなくちゃいけないと思います。
やらないと後悔しますし、チームの緩さは出てきてしまうと思いますし、それが自分が来た意味だと思うので僕がやっていってどんどん伝染していけば良いかなと感じます」
また新守護神のスベンド・ブローダーセンも語った。
「みんな自分で反省しなくちゃいけない。私は分からない。他の選手のなかにどんな気持ちがあるのか。私は全力で100パーセントで戦っているつもりです。でも(チームとして)お互いの合わせる守備、つながり、それができていない。そこはステップアップしなくてはいけない。それは攻撃でも守備でも。2試合連続で危ないシーンも作れなかった。攻撃は後ろから始まる。守備は前から始まる。それを上手く合わせないといけない。
もちろん戦う気持ちは練習のなかで作れる。だからこそ、それを練習でやれないと試合は難しくなる」
まずトレーニングから質と強度を上げる必要があるということだろう。そのうえで、新たな川崎はどんなスタイルを目指すのか、指標が求められそうだ。
谷口が口にした“悪者になってでも”という言葉は、かつて熱をチームに注入した山根視来が2023年に発していたことでも思い出される。その想いは、シーズン終盤に天皇杯制覇につながったが、何よりも大切なのは谷口のような選手が浮かないチームになることである。
選手が変われば、監督が変われば、戦い方も、チームの雰囲気も変わるのは当然だ。だが、“史上最強”とも称されることの多い2020年、2021年頃の川崎は、勝った試合の後でも、直後に選手らが意見をぶつけ合い、高みを目指し続けた姿が印象的であった。
今のチームには今のチームの良さがあり、やり方がある。静かに闘志を燃やす選手が多いことも理解できる。優秀なタレントたちが海外挑戦を決め、チーム作りが難しい局面に来ているのも重々承知している。
それでも、上を目指し、優勝への覚悟を示す選手がより増えることで、チームはさらに前へ進んでいくはずだ。
今は改めてこの百年構想リーグで何を目指し、どんなサッカーをしたいのか全員で共有し、表現する必要がある。それは監督、選手だけでなく、クラブ全体で考える問題である。
厳しい言い方をすれば、千葉戦やFC東京戦のパフォーマンスからは何も伝わってこなかった。それは私だけの想いだろうか。それでもポテンシャルの高い選手は揃う。ここからの奮起に是非とも期待したい。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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