
J1より下というデータも――欧州カップ戦で全滅危機、オランダリーグのレベルは? 近年は日本人が即効性のある補強ターゲットに
エールディビジ(オランダリーグ)の国際競争力が低下している。今季、欧州カップ戦(CL、EL、ECL)のリーグフェーズを突破したのはAZのみ。唯一残った頼みの綱も、ノア(アルメニアリーグ5位)と決勝トーナメント進出を争うプレーオフの第1レグを0-1で落とし、敗退の危機に瀕している。
CLでナポリ、リバプールに快勝したPSV、ELを低予算で戦い健闘したゴアヘッドの2チームだけが及第点(合格点ではない)。アヤックス、フェイエノールト、ユトレヒトは“失望”の2文字。リーグフェーズでも脆さを露呈したAZは、ここから驚異の盛り返しを示さない限り、やはり失望のカテゴリーに分類されることになる。
2016年から20年にかけて、エールディビジはUEFAリーグ係数ランキングで10位から14位の間に位置していた。しかし、アヤックスが16-17年シーズンのELで準優勝、18-19シーズンのCLでベスト4入りしたことが契機となって盛り返し、21年、22年と続けて7位。23年からは6位の座を保っていた。
ただ、今季の失態で26年はポルトガルに抜かれて7位に沈む。フェイエノールトが21-22シーズンのECL準優勝で稼いだポイントも今後、UEFAリーグ係数ランキングに加算されないことから、さらに苦しい立場に置かれるだろう。
ランキングを見る限り、「オランダリーグは5大リーグに継ぐポジションをポルトガル、ベルギーとともに形成している」という見方もできる。問題は、“果たして、この7位という数字がエールディビジのレベルを正しく現しているかどうか?”だ。
データ大手のOPTAが発表した各国リーグのランキングによると、エールディビジは19位と、J1より2位低いポジションにいると査定された。
オランダでも“エールディビジの現在地”を図ろうと、AZがイニシアティブを取ってハーバード大学の国際調査官、マシュー・アンドリューズ氏にリーグ分析を依頼した。これによると「欧州カップ戦に出るオランダのクラブは、他リーグと比較して7位のレベル」「オランダ1部リーグの中堅上位クラブは同8位のレベル」「オランダの中堅・下位クラブは同12位のレベル」「オランダ2部リーグのレベルはドイツ3部、フランス3部リーグより下のレベル」とカテゴライズされた。
もともとエールディビジはアヤックス、PSV、フェイエノールトによる“優勝持ち回りリーグ”で、他クラブとの差は広く知れ渡っていた。そんななか富の分配という点で、エールディビジはその他大勢が不公平を強いられており、以前より中堅以下のクラブの経営基盤・競技力が落ちていることが今回、指摘された。
UEFAリーグ係数ランキングで、エールディビジはトップ3とAZのポイントに頼っており、今季のようにアヤックス、フェイエノールトが未曾有の不振に陥ると、リーグ全体の順位が下がってしまう。
アンドリューズ氏は「他国リーグと比べてオランダリーグは意外性が少ない」と指摘する。今季エールディビジで不振に喘ぐフェイエノールトだが、それでも現在2位。アヤックスも4位だ。もちろん他国リーグにもメガクラブは存在するが、その下に位置するクラブへの投資は、オランダリーグの下位クラブより活発だ。
アルへメーン・ダッハブラット紙のシュルト・モッソー記者は「今まで長年、オランダでは『アヤックス、もしくはPSVが良ければ良いほど、オランダサッカーも良くなるんだ』と思われていた。それは考え違いであった。アンドリューズ氏の客観的な発表は、私たちの目を覚まさせてくれた」(抄訳)とコラムに記した。
ただ、こうしたランキングや調査では測れない価値が、現在のエールディビジにはある。それは世界最高峰に位置するプレミアリーグへの重要な選手供給源。プレミアリーグでプレーするオランダ人選手は21−22シーズンは13人だったが、今季は37人もプレーしている。現在、5大リーグでプレーしているオランダ人選手は約80人いるが、その半分がプレミアリーグ勢ということになる。
各国には独特のサッカーカルチャーがある。ステップアップリーグであることを自覚しているオランダのクラブは、若手選手のミスを許容する文化が根付いている。
それは日本人タレントにとってもそう。試合にどんどん使って実戦経験を積ませ、それから次の行き先探しに協力する。選手を安く買って、高く売るビジネスモデルが成熟しているオランダの各クラブは、日本の若手選手とウイン・ウインの関係を築いている。佐野航大(NEC)、三戸舜介(スパルタ)、市原吏音(AZ)はタレント育成カテゴリーだ。
ただ最近は、オランダ人選手のイングランド流出による空洞化を埋めるような補強が目立つ。上田綺世、渡辺剛(ともにフェイエノールト)、板倉滉、冨安健洋(ともにアヤックス)、小川航基(NEC)、毎熊晟矢(AZ)がそう。
特にアンカーのポジションに難のあるアヤックスは、冬の市場で遠藤航(リバプール)、守田英正(スポルティング)の獲得に乗り出したことが報道され、なかでも守田は契約一歩手前まで交渉が進んだことが報じられている。「若手日本人の欧州登竜門」の役目を果たすエールディビジ。しかし近年は、日本人が競技面で即効性のある補強ターゲットになっている。
文●中田 徹
【記事】なぜ欧州クラブは日本人を獲りたがるのか。オランダで窮地に立つ日本人FWの“プロフェッショナルな振る舞い”に接し、あらためて納得した【現地発】
