☆実戦でいきなり結果
沖縄・宜野湾の柔らかな日差しの中、背番号25がハツラツと汗を流している。4番キャプテンとしてチームを引っ張り、メジャー挑戦を経て再びベイスターズの一員になった3年目。筒香嘉智は自らとチーム全体を見渡し、悲願のリーグ優勝へ向かっている。
「練習でやっていることと、打席での感覚が少しずつ一致してきている。そこがズレていないというのは、自分の中でもいい傾向だと思っています。反応もスイングのキレの部分でも、順調に来ていると思います」
18日に実戦で今年初めてバッターボックスに立った筒香。2番に入った初回、低めのボールをすくい上げ左中間を深々と破ってみせ、確かな手応えを口にした。「バットの出し方でしたり、捉える位置でしたりという細かい調整はずっとやっています。今のところは許容範囲で動けているのかなと思います。これからはもうひとつピタッとしたものを集められるようにしていきたいです」と語る姿からも、ベースとなる動きができている満足感が窺える。
フォームも膝を曲げ、スタンスも広くどっしりと構える。それは日本で無双していた頃を彷彿とさせる。「自分の中では身体の中の重心が下がってきている。外見は高く見える時も低く見える時もあると思いますが、身体の中が落ちればいいなという感覚です」。かねてから“身体の内側の感覚”を大切にしていると公言している筒香にとって、重要視しているパートも研ぎ澄まされてきている証左となっている。
また一部報道で18キロ減とされていた体重には「いま97、8キロです。3キロぐらいですよ」と真相を告白。「減らそうとは思っていないです」としながらも、結果的にキレの増した肉体は、その繊細な感覚を表現するための器官の一部として、洗練されているようだ。
☆“勝つため”にフォーカスするキャプテン
自らのコンディションは順調に磨かれている。しかし今季の目標は「リーグ優勝」ただひとつ。
昨秋の契約更改の席で「ノリの野球と、勢いの野球は全く違う」との興味深い言葉を残した。一時的な「ノリ」ではなく、必然が積み重ねられた「勢い」。個々がやるべき準備を全うすることは当然として、その先にある高い意識の共有を求める。
今回のキャンプでも、筒香はチームの変化を敏感に感じ取っていた。この日の初回に見せた戸柱恭孝に代表されるような激走に「去年から河田(雄祐)コーチがかなり強く言われていましたし、その中で今年から相川(亮二)監督になられて、その辺を一段階、二段階、細かいところの意識を上げていこうと。選手もかなり変わってきていると思います」。
相川新監督が掲げる「もう一歩先の意識」をベテランが体現する。「この時期は自分への挑戦もありますし、サバイバル、生き残りを賭けてという部分もあります。でもそれをするのはプロとして当たり前のこと」と野球人としての矜持をサラリと示し、「個の力はチームにとって非常に大きなモノですけれども、ベイスターズが掲げていることはプロとして段階を上げていくことです。その意識は、選手の中でもかなり浸透しているのではないでしょうか」。三浦前監督の目指した“一心野球”を土台にし、ブラッシュアップで頂点を狙う。
昨年は宮﨑敏郎の離脱に伴い、ホットコーナーを守る時期もあった。今年からは外野手登録から内野手登録となり、より内野での起用が増えることになる。昨年からピッチャーや内野手、ときには外野手にも頻繁に声を掛けていた。18日のゲームでもサードに入り、打たれた竹田祐に「大丈夫!」、カバーに入ったレフトの度会隆輝に「ナイスカバー」と鼓舞。呼応するようにショートの石上泰輝も「このバッター足速いです」と筒香に情報を提供するなど、“ゴウイズム”も浸透しているように見えた。
キャプテンが内野に入ることでの相乗効果。「チームの方向やこの試合に勝つために変わるのであれば、どんどんやっていきたいと思います。若手にもそういう姿が出てきていると感じるので、チームはいい方向に向いているのではないかなと思っています」。今年もプレーで言葉で、チームを引っ張っていくと頷いた。
2024年の日本一。その際にコーチとして内側を見ていた相川現監督は「ゴウのおかげですよ」と呟いていた。目に見える数字以上に、チームに与える影響が大きい25番。2026年、筒香嘉智が作り出す「必然の勢い」に乗り、あの場所へたどり着く。
取材・文●萩原孝弘
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