ミラノ・コルティナ冬季オリンピックは、競技面において数々の新記録樹立や予想外の逆転劇などドラマ性に富み、見せ場の多い大会だったが、大会を総括する各国メディアの視線は、必ずしもリンクや雪上の勝敗だけに向けられてはいない。競技外で起きた騒動や珍事件、政治色を帯びた場面までも含め、「五輪という巨大イベントの異様さ」を浮き彫りにする出来事が、ランキング形式で語られている。
イギリスの日刊紙『The Guardian』は、「成功や失敗、さらには壊れたメダルまでが入り交じったミラノ・コルティナ冬季五輪の中で、長く記憶に残る瞬間を数え上げる」として、「最もワイルドだった10の出来事」を紹介した。
同メディアはまず、「テレビの生中継で自らの浮気を告白した選手はいなかった」として、ノルウェーのバイアスロン選手ストゥルラ・ホルム・レグレイドの行動を象徴的な例として挙げている。男子20キロで銅メダルを獲得した直後、彼は国営放送のインタビューで恋人への不貞を明かし、「人生最大の過ちだった」とコメント。『The Guardian』は、これを「過剰な自己開示」と表現し、後日に元恋人が「許すのは難しい」と地元紙に語ったことで、発言がさらに波紋を広げたことも伝えている。
一方、競技会場が一瞬で騒然となった出来事としては、女子クロスカントリーのレース中にコースへ乱入した犬「ナズグル」もランクイン。近隣ホテルで飼われていたチェコスロバキア・ウルフドッグが、選手の背後を全力疾走する姿が中継に映り込み、選手自身も「幻覚かと思った」と振り返るほどの衝撃だったという。「可愛くて、攻撃的ではなかった」(ギリシャのコンスタンティナ・ハラランピドゥ談)という“珍客”は、人々の記憶に強く残る「異色の主役」となった。
対して、五輪のイメージを揺るがす騒動も少なく、カーリングでのカナダのマーク・ケネディがスウェーデンのオスカル・エリクソンによる「ダブルタッチ」の指摘・抗議を受けて、「失せろ!」と再三暴言を吐いた騒ぎについて、同メディアは「礼儀正しさで知られるカナダの神話が崩れた瞬間」と皮肉っている。
さらに大会序盤を席巻したのが、スキージャンプ界を震撼させた“疑惑”だった。記事では、スーツ規定をかいくぐるために男性器へヒアルロン酸を注入したのではないかという前代未聞の噂に触れ、「世界反ドーピング機関(WADA)の幹部が、初めて男性器の増大を競技力向上の問題としてコメントする事態になった」と指摘。ポーランドのWADA関係者が「国内で人気競技だから調べる」と語ったことも紹介し、騒動の異様さを際立たせた。
その他にも、表彰台でメダルが壊れるトラブルや、過去に詐欺事件で有罪判決を受けたフランスのジュリア・シモン(バイアスロン女子)が金メダルを獲得した「贖罪の物語」、無敵と見られていた「クワッド・ゴッド」ことイリア・マリニン(フィギュアスケート男子)がフリー演技で崩れ去った衝撃など、栄光と転落が極端な形で並んだ点を、同メディアは今大会の特徴と報じた。
そして、政治色の強さを象徴する場面として挙げられたのが、開会式でアメリカ副大統領J・D・ヴァンス氏に浴びせられたブーイングだ。記事は「五輪は通常、政治からの避難所とされるが、ヴァンス氏はそれを照明が良く、警備が厳しい選挙集会のように扱った」と指摘し、この場面が米国での中継では削除された可能性にも言及している。
こうした視点は、米国の大手情報誌『Rolling Stone』による総括とも重なり合う。同誌も、レグレイドの告白や、マリニンの敗退といった話題に触れつつ、より大衆文化的な切り口で大会を振り返った。
例えば、選手村で配布されるコンドームがわずか3日で不足した件については、「1988年ソウル大会以来、無尽蔵と思われていた供給が尽きた」と驚きを込めて伝え、逃亡生活を続けていたスロバキア人アイスホッケー・ファンが観戦のために戻り、そのまま逮捕された事件を「現実とは思えないドラマ」と表現している。
構成●THE DIGEST編集部
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