F1の新時代を占うプレシーズンテストで、アストンマーティンが厳しい現実を突きつけられた。新型マシン「AMR26」はバーレーンでの走行がわずか2111kmで、メルセデス系パワーユニット(PU)勢が2万1000km超、フェラーリ勢が1万6000km、レッドブル・フォード勢が1万500kmを積み重ねたと考えると、データ不足は明白。ラップタイム面でも、冬季テスト最速だったシャルル・ルクレール(フェラーリ)から3.982秒も遅れるなど、信頼性と性能の両面で不安が残る結果となった。
英国のモータースポーツ専門サイト『THE RACE』は、こうした状況を「テストの印象は全チームで最悪と言わざるを得ない」と断じた。具体的には「エンジントラブル、走行不足で解消できなかった車両側の制約、そして2026年のレギュレーションを攻略する上で不可欠なエネルギーマネジメント戦略の学習で大きく遅れを取った」と厳しく評している。
同メディアは、「アストンマーティンが最も遅いクルマだとは思わない。テストから開幕までで最大のジャンプを見せる可能性はある」と巻き返しの可能性も示唆するが、現時点では「最悪の信頼性」「遅いパッケージのひとつ」「準備が大きく遅れている」と辛口の論評が続き、現場責任者マイク・クラック氏の「冬季テストで通常こなすべき作業を完了できなかった」とのコメントが酷評を裏付けた格好だ。
スペインのスポーツ紙『MARCA』によると、元F1ドライバーのラルフ・シューマッハ氏もアストンマーティンの現状に言及。フェルナンド・アロンソとの関係が良好でなく、昨年はランス・ストロール批判によってチームから“出禁”扱いを受けたドイツ人は、アロンソがマクラーレン・ホンダ時代に放った「GP2エンジン」発言を蒸し返した。
「今回もホンダのエンジン自体が問題のようだ。アロンソにとってはマクラーレン時代のデジャヴのようなものだ」と述べた。さらにフォーミュラ・ニッポン(現スーパーフォーミュラ)初代王者は「日本のチームは、そういうことは忘れない」と悪夢の再来を警告している。 しかし『MARCA』紙は別記事において、現在のホンダとアストンマーティンを「10年前のマクラーレン・ホンダと同列に置くのは短絡的」だと強調。当時のマクラーレンは風洞をドイツ・ケルンにあるトヨタの施設に頼っていたこともあり開発プロセスが遅く、組織文化の衝突も大きかった。それに対して2026年のアストンマーティンは英シルバーストンの最新設備、近代的な風洞、そして要職クラスが日本に足を運んでホンダと直接つながる体制など、全くの「別物」だと論じる。
またホンダ側も、当時とは異なるという。バーレーンでのテスト直後には問題を認め、「バッテリーに問題が見つかり、欠陥修正に集中した。部品不足で走行は限定的になった」と説明。信頼性を優先する緊急プランを敷き、次の段階として性能向上を見据える姿勢を明確にした。ホンダがマクラーレンとの連携解消後にレッドブルと組んで勝ち方を学び、マックス・フェルスタッペンの黄金期を支えた事実を挙げ、「働き方そのものが変わった」と同メディアは評価している。
マクラーレン時代には、苛立ちを募らせたアロンソ自身も、今回はホンダに対しては大きな信頼と期待を寄せているようだ。同紙によると、「勝つために必要なものは揃っている。問題は解決できないものではない。巻き返す時間はある。(今季は)後半戦がより重要になるだろう」とのコメントを残したという。
また前出の『THE RACE』は、元F1テクニカル・ディレクターのゲイリー・アンダーソン氏の発言を紹介。自身がジョーダンでホンダと組んだ1998年の苦い経験を引き合いに出しつつ、今回のアストンのテストにおける惨敗を「彼らに必要だった一撃」と表現して、ポジティブに捉えている。
「反応しさえすれば、必要なステップを踏む早さと上手さで、ホンダ以上のパワーユニットメーカーはいない。尻を叩く一撃が必要なだけだ。サクラ(HRC Sakura=ホンダの研究所)の全員が、それを受け取ったはずだ」と主張。現在の苦境から抜け出し、躍進すると見通した。
構成●THE DIGEST編集部
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