
【北中米W杯出場国紹介|第20回:ハイチ】人口1000万人ほどの小国。最大のスターはマンU相手に得点し話題となった27歳の司令塔
カリブ海に浮かぶイスパニョーラ島の西側に位置する人口1000万人ほどの小国、ハイチ。フランス植民地での大規模な奴隷反乱と連動し、独立を勝ち取った“ハイチ革命”は、世界史の中でも極めて重要な出来事として語り継がれている。
サッカー協会の設立は1904年と古く、W杯も第2回大会から予選に参加している。今回は13大会ぶり2度目の出場で、本大会をアメリカ大陸で迎えられるのは、ハイチにとって歴史的な偉業と言えるだろう。
初出場だった1974年の西ドイツ大会では、アルゼンチン、イタリア、ポーランドという強豪国と戦い、3連敗で終えた。アルゼンチン、イタリアを相手に得点を記録したエマニュエル・サノンは、ハイチのサッカー史において、日本の故・釜本邦茂氏に相当する英雄だ。
本大会の出場国が32から48に拡大されて、開催国のアメリカ、カナダ、メキシコに加えて3+2か国に出場枠が与えられたことが、ハイチのような国に大幅にチャンスを与えたことは間違いないが、出場権獲得は決して簡単ではなかった。
2次予選はC組をキュラソーに次ぐ2位で突破。昨夏にアメリカとカナダの共催で行なわれたCONCACAFゴールドカップでは、招待国のサウジアラビアに敗れるなど、1分け2敗で大会を去ることに。
最終予選はW杯の常連国であるコスタリカ、過去に3度の予選突破を果たしているホンジュラスと同じC組になった。第4節でホンジュラスに0-3の完敗を喫した時は危機的な状況だったが、ホームでコスタリカに1-0と競り勝ち、最後はニカラグアに勝利。他会場でホンジュラスがコスタリカと引き分けたため、ハイチが本大会への切符を掴み取った。2位のホンジュラスはA組のスリナム、B組のジャマイカに成績で及ばず、大陸間プレーオフに回れず、予選敗退となった。
「レ・グルナディエ(“兵士たち”を意味するハイチ代表の愛称)」を率いるフランス人のセバスチャン・ミニュ監督は、コンゴ共和国やケニアなどアフリカでの指導経験が豊富で、2024年から2つの予選とゴールドカップを通して、チームを作り上げてきた。
ピッチの監督とも言える存在が、38歳のGKジョニー・プラシド(バスティア)だ。現在リーグドゥ(フランス2部)で奮闘する守護神がキャプテンとして支える。ディフェンスリーダーはリカルド・アデ(LDUキト)で、スイスで活躍する左利きのハネス・デルクロア(ルガーノ)と共に相手の攻撃を跳ね返し、攻撃の起点となる。
ハイチ最大のスターは、中盤から攻撃の中心を担う27歳のジャン=リクナー・ベルガルド(ウォルバーハンプトン)。昨年12月にはマンチェスター・ユナイテッドを相手にゴールを決めたことで話題を集めた。
運動量が豊富で、ドリブルで単騎突破も可能だが、ハイチではトップ下のポジションから正確なパスで、サイドアタッカーのジョズエ・カジミール(オセール)やルベン・プロビデンス(アルメレ・シティ)の推進力を活かす。
ボックス内で圧倒的なパワーを見せる194センチのFWフランツディ・ピエロ(AEKアテネ)は、予選のコスタリカ戦で決勝ゴールを記録した。相手のディフェンスにとって、かなりの脅威になりそうだ。予選6得点のデュカン・ナゾン(エステグラル)も勝負どころで頼りになる。
中盤を統率するダンリー・ジャン・ジャック(フィラデルフィア・ユニオン)はMLSで活躍しており、ブラジルとの第2戦は所属クラブのホームスタジアムが舞台となる。
相棒のリヴァートン・ピエール(ヴィセラ)はポルトガルの2部でプレーしており、高い身体能力を活かしたボール奪取は、技術の高いMFを擁する強国にとっても厄介な存在になりうる。
本大会ではグループCで、優勝候補のブラジル、前回ベスト4のモロッコと同組で厳しい組み合わせになったが、まずはボストンで行なわれるスコットランドとの初戦で、世界を驚かせるような戦いができるか注目だ。
文●河治良幸
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