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【WBCコラム後編】野球ブラジル代表の挑戦――物語をより美しく、そして語り継ぐ価値のあるものにしているのは「日本人の心」と「ブラジル人の魂」

【WBCコラム後編】野球ブラジル代表の挑戦――物語をより美しく、そして語り継ぐ価値のあるものにしているのは「日本人の心」と「ブラジル人の魂」

WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で戦う選手たちも興味深い。MLBでの経験を持つ選手こそいないが、マイナーリーグや米国以外のプロリーグでプレーした経験を持つ選手たちが揃っている。その多くが日系人コミュニティーと何らかのつながりを持っている。これは100年以上の日系人とブラジル野球の歴史がもたらした結果だ。

 日本でボー・タカハシと呼ばれているロドリゴ・ヒトシ・カイモチ・タカハシは、日系3世。韓国KBOを経て22年から西武ライオンズでプレー。36歳のベテラン投手、金伏ウーゴは日系3世で日本の高校、大学を経てヤクルトに入団。肘の怪我もあって苦しんだ現役時代だった。引退後は通訳などを務めていたが、今回のWBC予選にも呼ばれ、ブラジルの本選進出に貢献している。

 日系2世の母を持つエリック・エイジ・タニグチ・パルディーニョは、ブラジル野球の期待だ。17年には16歳でブルージェイズと契約し、ブラジル出身の最高額の国際契約選手となった。20年に投手にとって大切な肘と腕を痛めて、トミー・ジョン手術。その後、復活を遂げている。

  エンゾ・沢山は、日本生まれだが日系ブラジル人を両親に持つ。23年にサンティアゴで開催されたパンアメリカン競技大会でブラジル代表として銀メダルを獲得した日本人投手だ。日本の社会人野球ヤマハに所属している。

 サンパウロ生まれの仲尾次オスカルは日系二世。ジュニア世代のブラジル代表としてプレーしたいたところ、日本の大学から声がかかり日本で野球を始める。社会人野球のホンダを経て広島カープに入団した。現在は両親の出身地である沖縄でプレー。13年のWBCにも出場し、日本代表とも対戦している。

 20歳の内野手、西山チアゴは現在日本の日体大での学生で俊足が武器だ。異色なところでは阪神タイガースで通訳を務める伊藤ヴィットルもいる。ほかにも大橋ラファエル、フェリペ水越、御前ダニエル、林田エンゾ、高橋ヴィトル、興梠フェリペ・ケンゾウもいて、日系人ではないが日本のチームでプレーするジョアン・マロスティカ、コウチーニョことヴィクトル・マスカイ(いずれも栃木ゴールデンブレーブス)など日本と縁の深い選手がいる。

  一方、アメリカにルーツの選手たちもいる。チームのキャプテンはレオナルド・レギナート。35歳のベテラン選手で、13年WBCにも出場した。ベネズエラやメキシコなどのリーグでプロとしてのプレーした経験を持ち、25年にはメキシコリーグで自己最多となる16本塁打を記録した。レギナートはチームの魂であり、ロッカールームのリーダーだ。

 コロラド・ロッキーズの強打者だったダンテ・ビシェットの息子、ダンテ・ビシェットJr.は32歳。弟にはトロント・ブルージェイズのボー・ビシェット(今大会は出場辞退)がいる。ダンテJr.は、11年のMLBドラフトでニューヨーク・ヤンキースから1巡目で指名され、17年までヤンキースの組織でプレー。19年はナショナルズのマイナーで1年間過ごし、現在はメキシコリーグでプレーしている。

 ルーカス・ラミレスも重要な選手のひとり。MLB史上最高の打者の一人であるマニー・ラミレスの息子だ。ルーカスは現在20歳で2024年のドラフトでロサンゼルス・エンジェルスから指名。今回のWBCは彼の実力を示す最初の大きなチャンスとなるだろう。

 ブラジルには元MLB投手ホセ・コントレラスの息子、ジョセフ・コントレラスもいる。ジョセフはわずか17歳、ジョージア州の高校に在学中の高校生だが、アメリカのドラフト前シーズンランキングでは34位にランクインしている。武器は最高158キロの速球で、フォークも鋭い。今大会の最年少選手となるだろう。

  現役時代に捕手だったヤン・ゴメスは、ブラジル人選手のMLBでのパイオニア的存在。19年にワシントン・ナショナルズのワールドシリーズ優勝に貢献し、MLBの2人目のブラジル人チャンピオンとなった。今大会では捕手コーチとしてチームを支える。

 WBCのブラジル代表の最大の目標は準々決勝に駒を進めることだが、同居する国を見る限り、容易ではない。より現実的な目標は、最下位を回避することだろう。そうすれば30年大会の出場権が自動的に保証される。そのためには、ブラジルはまずイタリアと英国に勝たなければいけない。これらの試合が大きな鍵となるだろう。

 ブラジル代表チームには、国際的な経験を持つ選手、新進気鋭の若手選手、そして何より、ブラジルの野球が尊敬に値すると証明したい強い意欲を持った選手たちが揃っている。出場2度目の今大会で目指すのは、前回の13年大会で果たせなかった本大会初勝利だ。

 ブラジル代表が試合に臨むとき、彼らは黄緑色の国旗だけでなく、太陽の国に野球の種をまいた日本人コミュニティーの不滅の遺産も携えている。ブラジルの野球は「日本人の心」と「ブラジル人の魂」が融合したもので、加えて世界を見据えた野心も備える。こうしたユニークな組み合わせが、ブラジル野球チームの物語をより美しく、そして語り継ぐ価値のあるものにしているのだ。

文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子

【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/1963年8月29日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。ジャーナリストとして中東戦争やユーゴスラビア紛争などを現地取材した後、社会学としてサッカーを研究。スポーツジャーナリストに転身する。8か国語を操る語学力を駆使し、世界中を飛び回って現場を取材。多数のメディアで活躍する。FIFAの広報担当なども務め、ジーコやカフー、ドゥンガらとの親交も厚い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授として大学で教鞭も執っている。

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配信元: THE DIGEST

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