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【WBCコラム】米出身選手が中心のイタリア代表、指揮官セルベリの秘策はヤンキースのレジェンド“ポサダ”「可能な限り偉大で、一流なものを選手に与える」

【WBCコラム】米出身選手が中心のイタリア代表、指揮官セルベリの秘策はヤンキースのレジェンド“ポサダ”「可能な限り偉大で、一流なものを選手に与える」

「どうやったら勝てるのか、今はそれを学ぶ時だ」

 そう語るのは、イタリア代表の新監督フランシスコ・セルベリだ。

 野球のやり方を学ぶ、という意味ではない。イタリアはすでに野球を知っている。例えば2023年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では、1次ラウンドを突破して日本と準々決勝を戦った。その戦いは、イタリア野球の可能性を世界に示すものだった。そして今は、ただ参加するだけでなくさらに上を目指す時だ。

 もちろん前回以上の結果を出すのは容易なことではない。アッズーリ(イタリア代表の愛称)は3年前とは多くが、いや、ほとんどすべてが変わってしまっている。

 マイク・ピアッツァ前監督の後を継いで指揮を執るセルベリは“勝利”を知る男だ。ベネズエラ生まれのイタリア系で、捕手としてニューヨーク・ヤンキースとピッツバーグ・パイレーツで長く活躍した。

 セルベリが着手したのは、チームに「勝者の空気」を持ち込むことだった。コーチ陣にチャンピオンリングを持つかつてのスターたちを招聘した。

  投手コーチには、サンフランシスコ・ジャイアンツでワールドシリーズ(WS)を3度制したデーブ・リゲッティ(現役時代はヤンキースなどでプレー)。ブルペンコーチは選手(エンジェルス)としても、コーチ(ブレーブス)としてもWS優勝経験のあるサル・ファサーノ。また、それぞれ3つのチャンピオンリングを持つロン・ウォタス(ベンチコーチ)とアラード・ベアード(一塁ベースコーチ)もこれに加わる。

 そして最大のサプライズは打撃コーチ補佐のホルヘ・ポサダだ。プエルトリコ出身で米国籍を持つ55歳で、ジョー・トーリ時代のヤンキース黄金期を支えた名捕手。現代の野球を象徴する選手のひとりだ。

「彼を説得するのに5分もかからなかったよ」

 39歳の指揮官セルベリは言う。

「ホルヘはヤンキースで私の師だった。彼は野球のために生きている。コーチ陣を選ぶ時に私が真っ先に思い浮かべた人物だった。なぜって、彼が選手たちに何を、どのように教えるのかを、私は身をもって知っていたからね」

 ポサダを入閣させたことからも、セルベリのチーム作りに関する考え方がよく分かる。可能な限り偉大で、一流なものを選手に与える。コーチ陣だけを見ても、今回のイタリア代表が“本気”なのかどうか分かるはずだ。

 コーチの中には日本を知る人物もいる。アレッサンドロ・マエストリ。12年から15年までオリックス・バファローズでプレーし、NPBでプレーした唯一のイタリア人だ。チームではリゲッティとともに投手コーチを務める。再び日本と相まみえることがあったとしたら、彼の経験は重要になるだろう。

  それでは肝心の選手たちを見ていこう。こちらも23年大会から大きく刷新された。変わらないのはこれまでと同様に、ロースターの大半がイタリア人の両親のもと、米国で生まれ育った、イタリア系アメリカ人の子孫たちで構成されてることだ。

 やはりイタリア国内の選手だけでは、世界レベルで戦えるチームを作るのは難しい。23年にチェコが国内選手中心で挑戦し、一定の成果も上げたこともあったが、それは例外中の例外に等しい。

 ただ今回、投手陣の中にはイタリア出身の選手もいる。

 ポテンツァ・ピチェーナ出身のガブリエーレ・クアットリーニ、ローマ出身のクラウディオ・スコッティ、そして何よりも、ロミオとジュリエットの街、ヴェローナ出身のサムエル・アルデゲーリだ。

 アルデゲーリは2年前からエンジェルスのロースターに名を連ねており、イタリアで生まれ育った選手としては、2人目のメジャーリーガー(1人目は11年から13年までシアトル・マリナーズで三塁手として活躍したアレックス・リディ)となった。投手としては史上初だ。

 ロースターを俯瞰すると、まず目に入るのは投手陣の質の高さだろう。

 主力先発はアーロン・ノラ(フィリーズ)とマイケル・ロレンゼン(ロッキーズ)。ブルペンも充実している。アダム・オッタビーノ(FA、前ヤンキース)、ダン・アルタビラ(FA、前ホワイトソックス)、マット・フェスタ(ガーディアンズ)が控える。

 さらに忘れてはならないのがジョー・ラ・ソーサ(パイレーツ)だ。2023年大会では満塁の場面でオランダ打者を三振に打ち取り、その後爆発させた“狂喜“でチームのアイコンとなった選手だ。

  打線の中心はビニー・パスクアンティーノ(ロイヤルズ)。MLB通算70本塁打、262打点の実績を持つ。クリーンアップを任され、チームが最も頼りにする「打点」を稼ぐ選手のひとりだ。ロイヤルズのチームメイト、ジャック・カグリオンも忘れてはならない。

 25年、マーリンズでのMLBデビューシーズンで打率.292を記録した新鋭ジェイコブ・マーシー外野手、23年大会からの数少ない生き残りのマイルズ・マストロブオーニ(マリナーズ)もいる。後者は内外野を守れるユーティリティー性が武器だ。

 捕手はホワイトソックスのカイル・ティール。25年は打率.273を記録した。二番手捕手は本来ならアルベルト・ミネオが務めるはずだった。イタリア野球界の誇りであり、24年は所属するパルマでイタリア王者に、25年は準優勝に輝き、さらに2年連続でニカラグアのレオネス・デ・レオンでも優勝。しかし、アメリカでの直前キャンプ中に負傷し、出場はかなわなくなってしまった。代役は急遽招集されたJ.J.ドラツィオ(エンジェルス)が務める。

 注目株は21歳のダンテ・ノーリだ。カナダ生まれでフィリーズに所属。父ミカはNBAミネソタ・ティンバーウルブズのアシスタントコーチで、昨夏にはニューヨーク・ニックスのヘッドコーチ候補にも名前が挙がった人物だ。外野にはノーリのほか、そしてドミニク・キャンゾーン(マリナーズ)もいる。

 攻撃陣のポイントは“足”だろう。22年MLB盗塁王(41盗塁、当時マーリンズ)のジョン・バーティ(FA、前カブス)のスピードは大きな武器になる。イタリアは足で塁を稼ぐチームだ。とにかく走って、走って、走りまくる。

文●マリオ・サルビーニ
翻訳●利根川晶子

【著者プロフィール】
マリオ・サルビーニ(Mario SALVINI)/イタリア大手スポーツ紙『Gazzetta dello Sport』記者。2003年から野球やソフトボールをはじめ、F1、フォーミュラE、MotoGP、バレーボール、ビーチバレーなどを担当。野球とソフトボールをこよなく愛し、21年にジャッキー・ロビンソン、ジョー・ディマジオ、ヨギ・ベラ、デレク・ジーターらの人生を描いた野球著書「Il diamante è per sempre(ダイヤモンドは永遠に)」、25年に困難や失望を乗り越えて成功を手にしたスポーツ選手にスポットを当てた「Campioni da favola(おとぎ話のようなチャンピオン)」を上梓した。

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配信元: THE DIGEST

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