
もともとはスタントマンを目指していた異色の経歴を持つ相澤莉多。2026年3月27日(金)に開幕する舞台「文豪とアルケミスト 掬ウ者ノ響歌(コンチェルト)」への出演を控える彼に、最新作の話はもちろん、ここ数年での自身の変化や驚きのオフの日の過ごし方についても語ってもらった。
■演出家・西田大輔との出会いで学んだこと
――WEBザテレビジョンでは約2年半ぶりのインタビューとなりますが、この期間を振り返ってみていかがですか?
仕事も私生活も、向き合う姿勢が大きく変わりました。前回インタビューをしていただいたときはまだ新人だったので、先輩方に教えを乞う立場でしたが、今はどんどん下の世代の人たちも増えてきて、自分が教えたり、相談を受ける側になってきたと感じます。僕としては、先輩方に追いつけるように、後輩たちに追い抜かされないようにと、自分の武器を必死に探し続けていた2年半でした。
――相澤さんご自身は、人に何かを教えるのは得意なタイプですか?
めちゃくちゃ苦手です。先日、とある先輩とお話しているときに「後輩に教えるのが苦手で…」と打ち明けたら、先輩からは「そう感じるということは、まだ先輩になれる器じゃないんだよ」と言われたんです。それを聞いて、「確かに」と納得しました。まだ自信を持ってやれることが少ないし、これだけは誰にも負けないという強みが確立できていないので、“教える”という行為に苦手意識があるんだろうなと。ただ、うまいアドバイスはできなくても、話を聞いて寄り添うことはできるので、後輩たちとはそういう感覚で接していけたらと思っています。
――では、この期間で新たに得たことは?
2024年の舞台『野球』飛行機雲のホームランという作品で、初めて演出家の西田大輔さんとご一緒させていただきました。西田さんの演出の付け方は、衝撃的で初めて経験することだらけでした。僕はそれまで、お芝居に対して表面的なアプローチしかできなかったのですが、西田さんからは“内側に小さい種を蒔いて、その芽を少しずつ大きくしていく”という、まったく違う方法を学びました。
――2025年の12月には、西田さんが長年演出を手がける舞台「DisGOONie」シリーズにもご出演されましたね。
出演させていただけてとてもうれしかったです。そこでもたくさんの学びがありましたし、この2年半を振り返ると、本当に刺激的で楽しい日々を過ごさせてもらっていたなと思います。
――先ほど、プライベートでも変化があったとのお話もありました。
先輩の菊池修司さんと、俳優とはどうあるべきかという話をしていたときに、「俳優は人間力が試される仕事だ」と言われたんです。たとえば、ひとりで家の中にいたとしても“見られている意識”を持ち続けることが大切だし、誰も見ていないからとボサボサの髪の毛でいたら、それがその人のベースになってしまう、と。だから、予定がなくても出かけられるような服を着て、きちんと過ごすようにしようと意識しています。
――そうは言っても、ひとりでいるときはつい気が緩んでしまいそうですが…。
そうなんですよね。僕も家ではダラダラしてしまいがちです。ただ、実際にできるかどうかは別としても、“頭の中にある”というだけでもかなり違ってくると思っていて。だから、プライベートでもそういう意識を持てるようになったのが、大きな変化だなと感じています。

■「文豪とアルケミスト」では初めて演じる役柄に挑戦
――3月27日(金)から舞台「文豪とアルケミスト 掬ウ者ノ響歌(コンチェルト)」にもご出演されます。
今回演じさせていただく梶井基次郎は、中性的な見た目かつナルシストな性格でキザなセリフもある役柄です。これまでは荒々しい男性的な役柄をいただくことが多かったので、初挑戦となるキャラクターだと感じています。本作は文豪をモチーフとしている作品なので、役作りも兼ねて、梶井基次郎の『檸檬』を読み始めたのですが、すごく難しくて。今は少しずつ読み解いているところです。
――梶井基次郎の武器は刃ですが、スタントマンを目指していた相澤さんにとっては、アクションシーンも注目してほしいポイントになるのかなと。
僕がこれまで経験してきたアクションは、いかに生々しく斬ったり斬られたりする動作にできるかを追求したアクションでした。しかし今回は、リアルさを出すことよりも、刃を使って舞う・魅せるという表現の方が、役柄的には近い気がしています。アクションで美しさを意識するのは初めてなので、研究して作り上げていくのが楽しみです。
――以前、「いつか特技の階段落ちを披露したい」というお話もされていましたが、本作ではかないそうですか?
まだ稽古前なのでわかりませんが…。どの作品でも「俺、行けます!」とアピールしていますが、まだ実現できていないんです(笑)。ただ、階段落ちを披露することは役者としてのひとつの目標でもあるので、いつか必ずかなえたいですね。
――そして、公演期間中には28歳のお誕生日も迎えます。
誕生日当日に、板の上に立たせていただけるのはとてもありがたいことですし、いつも応援してくださるファンの皆さんと一緒に過ごせるというのも、とてもうれしいし幸せなことです。あと、ビジュアル撮影のときにスタッフの方々へ「3月28日が誕生日です」としつこく伝えてきたので、きっと座組全体でもお祝いしてもらえると信じています(笑)。

■オフの日には短期バイトをすることも
――最近はオフをどのように過ごされていますか?
先日、1日だけの短期バイトをしてきました。
――オフの日にバイト、ですか?
僕にとって俳優という仕事は、自分の好きなことをやらせてもらっているという感覚が強くて、お金を稼いでいるという意識になりにくいんです。だから、お金を稼ぐ大変さとありがたみを感じたいと思い、皿洗いのバイトをしてきました。ただ、それがもうめちゃくちゃしんどくて…。ファンの皆さんも、いつもこんなに大変な思いをしながら働いていて、そうやって稼いだお金で舞台を観に来てくれているんだと思ったら、絶対に中途半端なことはできないなと、改めて感じましたね。身が引き締まる思いでした。
――お金のありがたみを、とのことですが、浪費癖があるとか?
僕はストレスを感じると、食べ物をたくさん買い込んでしまうんです。自宅のテーブルに並べて、どれを食べようかと悩んでいる瞬間が幸せなんですよね。ただ、自分ではお金を使いすぎてしまっているなと思うから、毎回反省しています。
――「これではダメだ」と自分を律するのは、なかなかできることではないなと。
そういう意識を持つことができているのも、周りの尊敬する先輩方のおかげです。僕自身は、気を抜くと楽な方へと逃げてしまうタイプの人間ですが、近くに素晴らしい先輩方がいてくれるから、自分もこのままではダメだと思うことができる。とても環境に恵まれているなと感じています。

◆取材・文=榎本麻紀恵
ヘア&メーク=田中宏昌
スタイリング=北村梓(Office Shimarl)

