そしてついにこの瞬間が訪れて、家族やチームメイトたち、そして観客のみんなと分かち合うことができた。まさに夢見ていたとおりのことだった」
そう語ったのは、ボストン・セルティックスのジェイソン・テイタムだ。昨季プレーオフのカンファレンス・セミファイナル第4戦で、右足のアキレス腱を断裂する大ケガを負い今季は開幕から欠場。復帰は来季になる声もあった。
だが現地時間3月6日(日本時間7日、日付は以下同)、ホームのTDガーデンで行なわれたダラス・マーベリックス戦で待望の復帰。先日28歳を迎えたフォワードは、先発出場して27分10秒プレーし、15得点、12リバウンドのダブルダブルに7アシスト、1スティールをマークして、120-100の勝利に貢献した。
昨年5月中旬に負った大ケガから、地道なリハビリとワークアウトを積み重ねてきたテイタム。298日ぶりにフロアへ復帰したこの日、最初に繰り出したステップバックジャンパーやドライブからのショットはリングに弾かれ、プルアップの3ポイントはエアボールになるなどシュートタッチに苦しんだ。
第2クォーターにはダンクもミスするなど、実戦のブランクが空いたことが影響していた。しかし、前半残り約1分にオフェンシブ・リバウンドから力強いダンクを叩き込んで初のフィールドゴールを成功させると、左コーナーから美しい3ポイントをヒット。
後半にはドライブから軽やかなステップを駆使してレイアップ、さらにはフェイダウェイジャンパー、3ポイントで加点と徐々にリズムを取り戻していった。
マブズ戦はフィールドゴール成功率37.5%(6/16)に終わり「まだ道のりは長いね。でも、これは本当に良い一歩だ」と前向きにコメント。そして、復帰戦をこのように総括していた。
「前回、NBAの試合に出場してから42週間半が経っていたから、とにかくスピード感やあらゆるものに慣れるようにしたんだ。少しペースが落ちている、あるいは動きが速すぎるように感じていたから。でも少しリラックスしたら、試合がスローダウンし始めたよ」
この試合、セルティックスはジェイレン・ブラウンがゲームハイの24得点に7リバウンド、7アシスト、2スティール、デリック・ホワイトが20得点、4リバウンド、4アシスト、2スティール、2ブロック、ペイトン・プリチャードが18得点、7リバウンド、6アシスト、2ブロック、ネミーアス・ケイタが16得点、15リバウンドをマーク。
ただ、この試合でニコラ・ヴュチェビッチが右手の薬指を骨折。手術を受ける見込みで約1か月間の欠場になると『ESPN』が報じているため、ベストメンバーが揃うのはもう少し先になる。
それでも、チームはここまで42勝21敗(勝率66.7%)でイースタン・カンファレンス2位をキープ。12シーズン連続のプレーオフ出場も濃厚で、ヴュチェビッチが復帰し、テイタムとブラウンの2枚看板がベストコンディションでポストシーズンへ臨むことができれば、優勝候補の一角に入っても決しておかしくはない。
ちなみに、過去にアキレス腱断裂から復帰したスター選手たちの日数を見てみると、コビー・ブライアント(元ロサンゼルス・レイカーズ)が240日、チャンシー・ビラップス(元デトロイト・ピストンズほか)が296日、デマーカス・カズンズ(元サクラメント・キングスほか)が357日、ケビン・デュラント(ヒューストン・ロケッツ)が552日。
デュラントを除くといずれも復帰後に躍動できたとは言い難い。それほどアキレス腱断裂は、選手生命を脅かしかねない大ケガでもある。これまで長期離脱とは無縁だったテイタムは、昨年の負傷の瞬間をこう振り返っていた。
「アスリートなら、誰だって自分がケガをするなんて思っていないと思う。少なくとも僕はそうだった。そんなこと、頭に浮かんだことさえなかった。すべて正しくこなしてきたし、身体も入念にケアしていたし、試合でズルもしていなかったと感じていた。
だから、それが起きた時は文字通りショックで、いろんなことを考え直すようになった。自分のキャリアがどうなるかはわかっていたのに、ある夜、それが変わってしまったんだからね」
テイタムは28歳を迎えたばかり。アスリートとしてキャリアの全盛期にあるだけに、トップレベルの状態で再びプレーできるのかを、誰よりも早く確かめたかったのかもしれない。
マブズ戦で見せたパフォーマンスは、アキレス腱断裂前の姿に戻れる可能性を十分に感じさせるものだったのではないだろうか。
文●秋山裕之(フリーライター)
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