
「本当に目を見張るものがありますね」ドイツ2部で奮闘する田中聡が「今、一番よく見ている選手」は?【独占インタビュー②】
2026年1月からドイツ・ブンデスリーガ2部のデュッセルドルフで新たなキャリアを踏み出した田中聡。同クラブは原口元気や宇佐美貴史が在籍した2010年代終盤はブンデス1部に在籍していたが、20-21シーズン以降は6シーズン続けて2部に沈んでいる。
今季も25試合を終えて10位。1部昇格への道は険しくなりつつある。「1部に上がって自分自身の価値を上げたい」と意気込んで新天地に赴いた田中にとっては、やや厳しい状況だろう。
それでも本人は今、「残された試合を勝っていくしかない」と割り切って前進している。そういう前向きなマインドを持てるのが、彼の良さでもあるのだ。
「ブンデス2部はどこが勝ってもおかしくない。Jリーグみたいにレベル差のないリーグだと感じます。上位のダルムシュタットやハノーファーとも対戦してみて、そこまで実力差は感じなかった。僕らは今、順位的に下の方なんですけど、ここから連勝していけば上を狙えるかなとも考えています。
ただ、逆に負け続ければ降格圏も見えてくるかもしれない。『一つひとつの試合を勝ちにいくんだ』と(マーカス・アンファング)監督も言ってますけど、そういうマインドで挑むしかない。常に優勝を目ざしていた(サンフレッチェ)広島、残留争いの多かった湘南(ベルマーレ)の中間くらいの位置づけですかね」と、本人は自チームの立ち位置を冷静に客観視している様子だ。
ブンデス2部のレベルに関しても「Jリーグとそれほど変わらない」という。
「足もとの技術に関しては、Jリーグの選手の方が高いかなと。ドイツ2部はフィジカルやスピードを前面に押し出してくるので、スタイル的な違いはあると思います」と田中は語る。かつて自身もデュッセルドルフに在籍した田中碧が「日本とドイツのサッカーは別の競技」と発言したこともあったが、そこまでかけ離れた感覚はないようだ。
「僕はフィジカル系というか、走力や運動量、激しさが自分らしいプレースタイルなので、違和感はない。田中碧君みたいなテクニカルなプレーヤーだと、そういう風に感じるかもしれないけど、スタイルが違う分、感じ方も変わってくるのかもしれません」とも田中は言う。それだけ新たな環境にうまく順応しているということでもあるのだろう。
その田中をはじめとして、今はドイツに数多くの日本人選手がいる。1部に目を向けると、フランクフルトの堂安律を筆頭に、バイエルンの伊藤洋輝、ボルシアMGの町野修斗ら日本代表の常連組を中心に15人がしのぎを削っている。
そして2部も日本代表経験のあるボーフムの三好康児ら9人が在籍。田中も日本人対決を経験した。
「まず対戦して凄かったのが、ハノーファーの横田(大祐)選手。飛び抜けてうまかったですし、チームの顔と言えるくらいの存在感を示していました。彼は川崎フロンターレのアカデミー出身で、早いうちからドイツに渡った選手ですけど、欧州に来るとJリーグでそんなに試合に出ていない選手もいるので、日本ではそこまで注目されていないかもしれないけど、こっちにはメチャクチャうまい選手がいるんだなという発見もあります。
ダルムシュタットの秋山裕紀選手と古川陽介選手も気になる存在ですね。2人ともJリーグにいた頃から知っているので、戦うのを楽しみにしていたんですが、2月21日のアウェーゲームは揃って出場なし。ちょっと残念でした」と、田中は具体的な名前を挙げて、感想を口にした。
1部の方で直接に対戦するチャンスは今のところないが、ドイツに渡ってからより興味を持って映像をチェックするようになったという。時差がなく、自分たちとほぼ同じ時間帯に試合をしているため、見やすい環境にあるのは確か。日本にいた頃より格段に知識が増えているのは間違いないだろう。
「同じパリ五輪世代のジョエル(藤田譲瑠チマ/ザンクトパウリ)とか(鈴木)唯人君(フライブルク)の試合を後から見るようにしていますけど、みんなコンスタントに試合に出ているし、結果を出していて、パフォーマンスも良いので、凄いなと率直に感じます。
ジョエルはもともと試合に出ればやれる選手だとは思っていましたけど、ザンクトパウリでずっとスタメンで出ているので、良い刺激をもらっています。彼とはU-17日本代表の時から一緒で、自分はずっと怒られていました(苦笑)。コルトレイクの時もよく周りに怒られたりしていたので、今はその経験を活かして、意識的にコミュニケーションを取ったり、発信したりするようにしていますね。
唯人君はドイツ1部の中でもすごくうまいですよね。結果も出しているし、すごく良い選手だなとしみじみ感じます」
同じ国でパリ世代が急成長していることは、田中の闘志を燃やす材料になっている。さらに言うと、同じボランチで近年、一気にブレイクしたマインツの佐野海舟からも大きな刺激をもらっている。「今、一番よく見ている選手」と本人も言うほど、彼の一挙手一投足をつぶさにチェックしている様子だ。
「プレースタイルも似ているし、ポジションも一緒なんで、海舟君が出ている試合はだいたい全部見ています。ドイツ1部の強い相手に対してもボールを取れるし、推進力があって運べるので、そこは本当に目を見張るものがありますね。僕自身が『こういうプレーをしたいな』と思っていることをピッチ上で体現している選手なんで、すごく参考になります。
自分が1部に行ったら同じような活躍ができるかどうか? 試合でしか見ていないんで、スピード感やレベル感の実際のところは分からないですけど、2部で守備は通用しているかなと。攻撃はもっとやらないといけないとは思っていますけど、早く1部でプレーしたい気持ちは強いですね」と、田中は2つ上の佐野というプレーモデルを参考にしながら、今後の飛躍を目ざしていく構えだ。
その佐野は2026年北中米ワールドカップ行きが有力視されるが、遠藤航(リバプール)や守田英正(スポルティング)らの動向次第では未知数な部分もある。藤田にしても、まだ確実とは言えない状況にいる。
彼らのような実力者でも確証がないわけだから、ドイツ2部でプレーする田中が3か月後の大舞台に参戦するのは難しいかもしれない。ただ、可能性がゼロではないだけに、貪欲に狙いにいく姿勢を見せてほしいところだ。
「現実的には今回はたぶん厳しいですよね...。怪我人続出とかイレギュラーな事態になって選んでもらえたらラッキーくらいだから。でも自分としては(リーグ戦の)残り試合でもっともっと活躍して、ゴールやアシストといった目に見える結果を残せば、近づいていくのかなという気持ちはあります。
デュッセルドルフに日本サッカー協会の欧州オフィスがあるとは聞きましたけど、まだそこには一度も行ったことがないですね(苦笑)。町野君とは近くに住んでいるんで、よく一緒に食事したりしていますし、三好君、川﨑颯太君(マインツ)、山田新君(プロイセン・ミュンスター)にも会ったりしているので、みんなで励まし合って、前向きに成長できればいいと思っています」
今の田中はドイツで確固たる基盤を築くことが最優先。W杯は26年の後にもやってくるし、23歳の彼にはまだまだチャンスがある。30年、34年には大舞台に立てるように、デュッセルドルフで地道に力をつけ、尊敬する遠藤のような成長曲線を描いていってほしいものである。
※第2回終了(全3回)
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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