19歳の若者が世界を驚かせた。
3月7日に開催された『RIZIN.52』(有明アリーナ)。今年のRIZIN開幕戦であり、旗揚げ11年目のスタートとなる大会だ。テーマは“対世界”。メインイベントで組まれたのは秋元強真vsパッチー・ミックスのフェザー級マッチである。
秋元は2006年3月8日生まれ。つまり試合の次の日に20歳の誕生日を迎える。対するはパッチー・ミックス、32歳。アメリカでUFCに続く規模だったベラトールのチャンピオン経験者で、堀口恭司にも勝ったことがある。
実績で言えば、キャリア12戦の秋元よりもミックスのほうがはるかに上だ。ただ秋元は朝倉未来・海兄弟が率いるJAPAN TOP TEAMの新鋭。高校に行かず格闘技に専念し、ここまで11勝1敗(RIZINでは7勝1敗)、格上を次々と食ってのし上がってきた。今回は可能性、伸び代を期待されてのマッチメイクという部分もあったはずだ。
試合が始まると、誰もが予想しなかったであろう攻防が繰り広げられた。当初、ポイントだと思われたのは柔術黒帯でもあるミックスの寝技を秋元がどうしのぐか。しかしリング上では、秋元が立ち技で完全に主導権を握っていた。
特に見事だったのはサウスポーの前手(右)のパンチだ。起点となるジャブからフック、アッパー、ボディブローとさまざまな角度で打ち分ける。多彩で厚みのある攻撃に、ミックスはテイクダウンに持ち込むことができない。
1ラウンド終盤、最大の武器である左ストレートをヒットさせた秋元。2ラウンドには逆転を狙うミックスが前に出るが、そのことで秋元の打撃も当てやすくなった。タックルをさばくとアッパー、そしてまたも左ストレート。倒れたところにサッカーボールキックを2連発で叩き込み、圧巻のワンサイドKO勝利となった。
MMAの“本場”であるアメリカの最前線で活躍してきたミックスを、世界的にはまだ無名の日本人が倒してしまった。しかもまだ19歳。途轍もない衝撃だ。だが番狂わせの背景には、揺るぎない自信もあった。
秋元は試合に向け、寝技対策として青木真也とスパーリングを重ねた。それもあって寝技に自信がつき「思い切り打撃を出すことができました」。青木も試合を前に「チョークで取られることはない」と断言していた。寝技になっても大丈夫だと思えるから打撃が活きる。このあたりがMMAという競技の妙味だ。
また「勝ったら朝倉未来とやりたい」と言っていたミックスに対して「RIZINがナメられている」という思いもあったという。
「僕はRIZINを見て育ったし、RIZINがなければ格闘技をやってない」
RIZINの榊原信行CEOも、秋元の勝利と存在感を絶賛している。
「日本の若者も捨てたもんじゃないですね。モノが違った」
RIZIN11年目のスタート。これからのRIZINを引っ張る新エースらしい勝利だった。これからは世界的に注目されることになるはずだが、秋元はあくまでRIZINファイターであることに誇りを持っている。
「僕はUFCに行こうとか、そういう考えはまったくないので。大きい言い方をすると、僕とやりたいなら日本に来いって感じですね」
試合の数時間後、日付が変わって20歳に。「2日くらい寝ないで遊びたい」と笑う姿にはあどけなさもある。リングで見せる残酷なまでの強さとのギャップも、秋元の魅力と言えそうだ。
取材・文●橋本宗洋
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