
森下&佐藤が1・2番に起用された理由とは。予選最終戦で見せた井端監督の今後を見据えた狙い【WBC侍ジャパン・ゲームレポート:第4戦】
すでに1位突破を決め、3月10日の予選ラウンド最終戦のチェコ戦に臨むスタメンのオーダーを見て、指揮官の意図を理解した。
ワールド・ベースボール・クラシック(以下WBC)のような短期決戦は「負けられない戦い」「負けていい試合は一つもない」と言われがちだが、それはあくまでの試合に臨む選手の心構えの話であって、指揮官はそうであってはいけない。目先の勝利を目指しつつ、一方で、その先を見据える。予選リーグ突破が近づけば近づくほど、先を見据えたマネジメントが必要になる。チェコ戦はまさにアメリカでの戦いを考慮に入れていたと言っていい。
この日、井端弘和監督はスタメンをガラッと変えて1番に森下翔太(阪神)、2番に佐藤輝明(阪神)を起用した。その理由を井端なこう話す。
「打順の流れっていうのもありますし、1打席でも多くと思って1、2番にしました」
世にいう温情などではない。次なる一手として常に期待してきたのが森下、佐藤の2人であるからだ。これまでの試合でも、必ずと言っていいほど2人を代打に起用してきた。大谷翔平(ドジャース)を1番に起用しているのに、その前に当たる9番に捕手を起用しているのも、勝負どころで代打を送るためだ。初戦の台湾戦では森下が、韓国戦とオーストラリア戦では佐藤が9番のところで代打で出場している。いわばこの2人こそ、攻撃を活性化させるカードとしての期待が高い選手なのだ。
オーストラリア戦でも井端監督の狙いを垣間見た。吉田正尚(レッドソックス)の2ラン本塁打で逆転。4対2と試合を優位に進めた8回裏、それまで不振を極めていた近藤健介(ソフトバンク)のところで森下を代打に送っている。近藤の復調よりも温情采配。そう報じるメディアもあったが、井端監督の想いは次なる一手の模索だった。結果、森下は併殺打に終わり、狙いは思うようには運ばなかったが、森下と佐藤をチェコ戦で1、2番に起用した背景には期待があるのだ。
「森下選手はヒットは出ましたけど、若干、(これまでは)代打の起用で力みがあってちょっとバットが出てこないっていう感じでスタメンでは使っていなかったんですけど、1本出たので楽に次からいけるのかなと思います。佐藤選手に関しては彼だけは非常にリラックスしてスウィングができてたなというふうに思うし、向こうに行ってから調整して今の状態から上積みしていって欲しいなと思います」
井端監督がそこまでしてこの2人に期待をかける理由は、現代野球には長打力の必要性を感じているからである。これまでの試合では大谷や鈴木誠也(カブス)、吉田のメジャー組が本塁打を2本ずつ打っている。彼らが打線で重要なのは間違いないが、さらに上積みの長打力が必要なのだ。そもそも井端監督が就任して以来、目指してきたのが長打を軸としたスケールの大きな野球だ。
かつてはスモール・ベースボールが日本野球の代名詞のように言われてきたが、井端監督の頭には過去への回帰はない。井端監督はいう。
「前回大会の準決勝、決勝を見ていると、こちら側も相手側もホームランでの得点がほとんどだった。やはり連打連打というのはなかなかできないっていうふうに思っています。プレミア12を戦ってみても、結局ホームランの点数でやられて、打てなくて負けたっていうのを経験してますので、ここからの戦いは相手もどんどんいいピッチャーでくるので、やっぱり長打っていうところが鍵になってくると思います」
もちろん、スモールベースボールをしないわけではない。チェコ戦もバントやエンドランを作戦として採用していた。日本人が得意とするスタイルを捨てるわけではないが、メジャーリーガーの3人がこのまま打てるとも限らない。少しでも打力に期待して招集した選手には、その力を発揮して欲しいという想いが井端監督にはある。大谷らだけに任せきりにならないためには、戦いながら戦力を整える。この日の采配も含めてそうマネジメントしてきたのだ。
「村上選手がいい1本を打ってくれたっていう風に思っていたので、いいきっかけにしてもらえればいいかなと思いますね。向こうに行っても、時間はちょっとありますので、少しでも状態を上げていってほしいなと思っています」
予選ラウンドを突破しアメリカ・マイアミラウンドからは本当の戦いが始まる。前回大会で経験したような痺れるような戦いだ。
「世界最高峰のチームだったり、打者と対決できることは、これ以上にないくらい自分を成長させてくれると思いますし、そこで抑えることができれば、もっと自分に自信が持てると思う」
この日の先発・高橋宏斗はそう言って次なる舞台へ希望を口にした。アメリカの、あの華やかな舞台に胸を高ぶらせている選手は少なくない。4戦全勝の中に、ひそかに蓄えてきた井端監督の次なる一手は、今後実を結ぶだろうか。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
【画像】野球の祭典を力強く彩る! WBCに出場する各国のスタープレーヤーを一挙紹介!
【画像】WBC連覇に挑む侍ジャパン、登録メンバー全30人が決定!
【画像】長身カップルがカッコよすぎる! 大谷翔平&真美子夫人が披露した“艶やかコーデ”の全身ショット版をチェック!
