
2023年に俳優デビュー10周年を迎え、2025年には2クール連続でドラマ主演、映画でも主演を務め、6年ぶりに舞台にも出演するなど精力的に活動する俳優・芳根京子が、3月13日に公開のアニメーション映画「私がビーバーになる時」で、主人公の日本版声優を務める。
彼女にとってキャリア初となるディズニー&ピクサー作品への出演で、吹き替えでも持ち前の演技力を存分に発揮。2025年に主演した「波うららかに、めおと日和」(フジテレビ系)では、“10年選手”とは思えないほどのけがれなきピュアなヒロインを見事に務め上げ、放送のたびにSNSを沸かせたほか、同作の演技が評価されて、さまざまなドラマ賞も受賞した。そんな芳根の演技の魅力を紹介する。
■俳優デビュー作は憧れの篠原涼子主演ドラマ
1997年2月28日生まれ、東京都出身の芳根は「ラスト・シンデレラ」(2013年、フジテレビ系)で俳優デビュー。同作では事務所の先輩であり、憧れの存在の篠原涼子演じる主人公・桜の親友・美樹(大塚寧々)の娘役だった。2014年に「物置のピアノ」で映画初主演すると、2015年7月期に放送された「表参道高校合唱部!」(TBS系)では連続ドラマでも初主演を務めた。
“オモコー”の愛称で親しまれた同ドラマでは、1000人以上の参加者の中からオーディションで選ばれ、合唱が大好きで天真らんまんなヒロイン・香川真琴を演じ、多くのドラマファンをとりこに。「第1回コンフィデンスアワード・ドラマ賞」新人賞や「第86回ザテレビジョンドラマアカデミー賞」の主演女優賞と特別賞(合唱&選曲)を受賞した。
そして連続テレビ小説「べっぴんさん」(2016-2017年、NHK総合ほか)では、“朝ドラ”オーディション“4度目の正直”にて2261人の中から大役を射止め、晴れてヒロインに。標準語を封印する“関西留学”で関西弁もしっかりマスターし、難しいイントネーションに苦心しながらも朝ドラの主人公を演じ切った。
2018年には「海月姫」(フジテレビ系)で“月9”ドラマに初主演、同年9月に相次いで公開された映画「累 -かさね-」と「散り椿」での演技が評価され、2019年の「第42回日本アカデミー賞」で新人俳優賞を受賞した。
その後も連続ドラマ「コタキ兄弟と四苦八苦」(2020年、テレ東系)や「半径5メートル」(2021年、NHK総合ほか)、「真犯人フラグ」(2021-2022年、日本テレビ系)、「俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?」(2022年、テレビ朝日系)、「オールドルーキー」(2022年、TBS系)、「それってパクリじゃないですか?」(2023年、日本テレビ系)、映画「ファーストラヴ」「Arc アーク」(ともに2021年)、「峠 最後のサムライ」(2022年)、「カラオケ行こ!」(2024年)など枚挙に暇がないくらい、主演・助演、局などを問わず幅広いジャンルの作品に出演してきた。
主演映画「Arc アーク」でメガホンをとった石川慶監督の企画・プロデュースで「デビュー10周年記念写真集『京』」を2023年に出版したが、当時の発売記念イベントで、“女優で良かったこと”について聞かれ「何よりお芝居が好きで楽しいので、自分のことを『女優です!』っていうのはまだまだ恥ずかしいと言いますか、そこまでの自信を持てていないんですけど、お芝居をすることが好きという気持ちは常に大きく持っているので、女優さんになれて良かったなと思います」と真っすぐな目で答えるほど、演じることに強い愛情と矜持、今も変わらず謙虚さを兼ね備える芳根。
■けなげで明るいヒロイン…だけじゃない
代表作の一つ「表参道高校合唱部!」のように、けなげ、ピュアな明るい子の芝居ももちろん得意だが、2025年は「君の顔では泣けない」で、中身が男性と入れ替わった女性を体現。いわゆる男女の入れ替わりものだと、演技次第ではただのコントに見えなくもないのだが、「『うわ~難しそう!やります!』と言いました」とオファーを即決。口調だけでなく、座るときの姿勢であったり、しぐさなどで程よく「男性感」を出し、口げんかをする場面では、けなげとは程遠い「すごみ」も見せた。共演した高橋海人もそんな彼女の芝居を振り返って「職人」という表現を選んだのもうなずける。
役者としての芯の部分に演じることへの深い愛があり、シンプルに演じることが楽しいからこそ10年以上この業界で仕事をしていても、デビューしたての新人女優のようなピュアさを画面から出すことができるのだろう。
その芳根がキャリア13年目に出会った新たな代表作が、2025年4月クールに放送された「波うららかに、めおと日和」だ。本作は、昭和11(1936)年を舞台に、交際ゼロ日婚をした新婚夫婦の甘酸っぱい時間を描いた“ハートフル・昭和新婚ラブコメ”。芳根は恋愛経験、男性への免疫が全くない中、帝国海軍の瀧昌(本田響矢)と結婚することになった江端なつ美を演じた。
原作のなつ美は常に全力でけなげ、明るくピュア。実写化すると、一歩間違えれば“あざとく”見えてしまう難しさをはらんだキャラクターでもある。
プロデューサーの宋ハナ氏によると「原作のなつ美は『こんなすてきな人いる?』ってくらいかわいらしい人なので、芝居でそれを表現したときにあざとく見えない人がいいなと。それに加えてけなげさを表現できる方にお願いしたかった」という理由で芳根に白羽の矢が立ち、狙い通り、けなげで明るくピュアななつ美を、決してあざとくならずに演じ切り、お茶の間を“うぶキュン”の嵐に包んだ。
同作の演技が評価され、「2026年 第50回エランドール賞」や「第124回ザテレビジョン・ドラマアカデミー賞」主演女優賞、「TVLIFE 年間ドラマ大賞2025」主演女優賞など、さまざまなドラマ賞を受賞した。
ちなみに演技以外でそのピュアさを体感できるのが、JR東日本とのコラボ企画として2024年5月に始まったYouTubeチャンネル「【公式】芳根京子の〈生〉旅」。「リアルな芳根京子が、リアルな姿のまま、リアルに旅をする記録をつづった映像シリーズ」がコンセプトということで、Vlog形式で芳根が自ら撮影する旅の様子をのぞき見できるのだが、出された料理は何でもおいしそうに食べるし、初めて見るものには目をまん丸にしてはしゃぐ、気取らない自然体の姿に、旅先で出会う人も温かく迎えてくれるのが見て取れる。
特に過剰な煽りもなく、暴露もしない、彼女の旅を眺めるVlogだが、チャンネル登録者数は2年弱で87万人を超え、再生数100万を超える動画も珍しくない。彼女の自然体の姿が支持されている、これ以上ないエビデンスだろう。

■オーディションで主人公声優に「ベネチアの真ん中で“やったー!!”って」
閑話休題。芳根は実写作品のみならずアニメーション映画「ボス・ベイビー」第1弾、第2弾の吹き替えに加え、劇場アニメ「ぼくらの7日間戦争」(2019年)や「映画ドラえもん のび太の地球交響楽」(2024年)で声の演技も経験している。その最新作となるのが、公開中のディズニー&ピクサー最新作「私がビーバーになる時」だ。
「もしも動物の世界に入れたら」というテーマから、ユニークな“もしもの世界”が描かれる本作で、芳根は大好きなおばあちゃんとの思い出の詰まった森を守るため、極秘テクノロジーを使ってビーバーになり、動物の世界へと飛び込んで奮闘する大学生・メイベルを演じている。
ディズニー作品らしくオーディションで参加が決まったが、吉報を受けたときは仕事でイタリアのベネチアに滞在していたそうで「船を待っているときに、マネジャーさんから『決まりました』と言われて、ベネチアの真ん中で“やったー!!”って、つい大きな声を出してしまいました」と当時を振り返り、「決まったって聞いたときは、ただただうれしくて。合否が出るまですごくドキドキしていました」と、キャスト発表イベントで喜びを語っていた。
芳根が演じるメイベルは、自分を信じた道を突き進む推進力のあるキャラクターで、声の入れ方の加減が難しそうだが、持ち前の“けなげさ”で、“ひたむき”に振り切っており、ジェリー市長(日本版声優・渡部篤郎)との激しい言い合いのシーンもほほ笑ましく見ていられる。それでいて、セリフにならないようなちょっとしたしぐさ、水中にいるかのような発声、慣れた実写とは違うアプローチでしっかり役を体現している。
6月からはミュージカル「ウェンディ&ピーターパン」でSnow Man・渡辺翔太とW主演し、タイトルロールを務めることが決定。自身は高所恐怖症なのだが、「チャレンジしてみたい!」とフライング演出にも挑むという。
そんなふうに芝居へのあくなき情熱と愛、真摯(しんし)な姿勢が、彼女をさらなる高みへ連れていく。まさに彼女が安心して芝居をできる世界こそが、ネバーランドなのかもしれない。
◆文=ブルータス・シーダ
※「ラスト・シンデレラ」の「・」はハートマークが正式表記
※高橋海人の「高」はハシゴダカが正式表記

