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「闘うフリーター」48歳レジェンド所英男、若き寝技王に66秒失神敗北も…“ラスト2試合”に懸ける想い【RIZIN】

「闘うフリーター」48歳レジェンド所英男、若き寝技王に66秒失神敗北も…“ラスト2試合”に懸ける想い【RIZIN】

“闘うフリーター”は48歳になった。

 アルバイトをしながらリングに上がる(それは当時も今も珍しいことではないのだが)無名のファイター、所英男が一夜にしてブレイクしたのは2005年のこと。『HERO's』で修斗の絶対王者アレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラをバックブローでKOしたのだ。選手紹介VTRでの、ビル清掃のバイトに励む姿もインパクトがあった。

 ヒーローとなった翌日、一夜明け会見では遅刻した。電車の人身事故によるもので、丁寧に遅延証明書をもらってきていた。広報スタッフに「そういう時はタクシー使って領収書もらってきなさい」と言われたとか。

 ノゲイラ戦から20年以上。HERO'sの後継団体DREAMでも闘い、一時はアメリカに活躍の場を求め、そしてRIZINに参戦。大ベテランになり、今はジムの主でもある。言ってみれば“闘う経営者”なのだが、気さくで謙虚な人間性はずっと変わらない。闘いぶりも、だ。練習を見る盟友・勝村周一朗は「いい意味でも悪い意味でも何も変わっていない」と所に伝えたという。

 スタンドでもグラウンドでも動き回り、常にフィニッシュを狙う。リスク回避を度外視するようなファイトだから隙も多い。会心の勝ち星と同じくらい、悔しい負けも喫してきた。

 前回、負けたら引退を覚悟して臨んだヒロヤ戦はカウンターの右ストレートを決めて勝利。そして2026年の一発目となる『RIZIN.52』(3月7日、有明アリーナ)への出場が決まると「あと2試合でラスト」と宣言した。

「もう充分やらせてもらった」という気持ちもある。同時に「まだやりたい」とも思った。ただ「人前でできるコンディション、内容。その自信が、あと2試合」だと判断した。試合前の「フィニッシュホールドはコンディション」という言葉も印象深い。“プロレスの神様”カール・ゴッチの言葉だ。現代のMMAとはまた別の流れ、歴史、思想が所にはあって、それも魅力につながっている。

 対戦相手は鹿志村仁之介。所と同じく寝技を得意とし、勝利の大半が一本勝ちだ。年齢は24歳。2001年に鹿志村が生まれた時、所はすでにプロデビューしていた。しかも鹿志村の父は所より一つ歳下で所ファンだという。

 そんな鹿志村に対しても、まったく“上から”な態度を出さないのが所だ。練習をともにすることもあるだけに実力を高く評価しており「見惚れてしまう」とまで。「技術的には差があると思うので、経験で埋めるしかない」とも。ラスト2試合にして、この鹿志村戦は大きなチャレンジでもあったのだ。

“現役ファイター”として過ごす日々は確実に減っていく。充実しているだけに「あっという間の毎日」だった。試合に向けたインタビューで涙を見せることも。

 
 有明アリーナのステージに現れた所は、いつものようにセコンドの勝村、金原正徳と肩を組んでリングに向かった。48歳の青春だ。所英男が頑張っているから自分も頑張れる、そう思っている同世代の格闘技ファンも多いだろう。

 そんな所を、鹿志村はリスペクトをもって飲み込んだ。試合開始早々、パンチのフェイントから片足タックル。テイクダウンに成功するが、深追いせず立った状態でチャンスをうかがう。所の下からの攻め、とりわけ腕十字を警戒したのだ。

 そして所が立とうとしたところに得意のアナコンダチョーク。1ラウンドわずか66秒、所が失神して試合は終わった。尊敬する相手からの完勝に、鹿志村は絶叫。フィニッシュのアナコンダチョークは、柔道をやっていた頃に「柔道で使える柔術の技」として父親が教えてくれたものだという。

 所サイドとしても、この展開が要注意であることは分かっていた。それでも極めてしまうのが鹿志村の強さだし、所には“ラスト2試合” の緊張もあったのかもしれない。

「試合という試合をさせてもらえなかった。何もできなかった」

 試合後の所は敗北を正面から受け止めていた。鹿志村に対しては「リスペクトを感じました。いい男だなと」。

 今回、納得のいく試合ができたらここでラストでもいい。そんな気持ちもあったそうだ。だが、さすがにそうはいかないだろう。試合後のバックステージ映像を見ると、セコンドの2人が「あと2試合だな、今日はノーカンで」と笑っていた。

 所英男を見てきた者なら、誰もが「納得して、完全燃焼して現役生活を終えてほしい」と思うはず。今年のRIZIN大晦日大会はナゴヤドームで開催される。所は愛知の隣県である岐阜の出身で、少年時代から大のドラゴンズファン。ラストマッチには最高の舞台だろう。

 だが所は「出たいですけど、出たいと言える内容じゃなかった。RIZINは難しいので」。勝ち負けを超えてファンを魅了してきた所だが、だからこそ本人は勝ち負けの重みを感じ、試合内容で満足させることを重視している。

 今後については「ゆっくり考えたい」と所。いつ、どこで、誰と闘うのが所英男のラストにふさわしいのか。何よりも大事なのは、本人が悔いを残さないこと。我々はその姿を心して見届けたい。

取材・文●橋本宗洋

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配信元: THE DIGEST

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