F1第2戦中国GPは、若きスターの歴史的勝利と白熱したチーム内バトルが観客を沸かせた。一方、新レギュレーションに対するドライバーの強い不満が噴出するなど、評価が大きく分かれるレースとなった。
決勝では、19歳のキミ・アントネッリ(メルセデス)がポールポジションから優勝を飾り、史上最年少のポール・トゥ・ウィンを達成。チームメイトのジョージ・ラッセルが2位に入ってメルセデスが2戦連続でワンツーフィニッシュを飾った。3位にはルイス・ハミルトンが入り、フェラーリ加入後初の表彰台に立った。
今季からの新パワーユニットは内燃機関と電力がほぼ半々という構成となり、電力ブーストを使ったオーバーテイクが頻繁に発生する。これにより、ドライバーが一度前に出ても、バッテリー残量の減少で再び抜き返されるなど、何度も順位が入れ替わる独特の展開が生まれている。
英国の公共放送『BBC』はこの状況について「ブーストやオーバーテイクモードは追い抜きを助けるが、その後はバッテリー不足で逆に抜き返される弱点も生む」と説明している。 この新しいレーススタイルには厳しい批判も向けられている。レース中にエネルギー回生システムのトラブルでリタイアしたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、今季のF1を痛烈批判。エネルギーマネジメント中心のレースに強い不満を示した。
「これが好きな人は、レースとは何かを分かっていない。全く楽しくない。まるでマリオカートだ。バッテリーを使って追い抜き、次のストレートでまた抜き返される。僕にとっては、ただのジョークだ」
同様の疑問は、他のベテランドライバーからも聞かれた。フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は今季の状況を、「バッテリー世界選手権」と皮肉り、ドライバーの腕よりもエネルギーマネジメントがレースを左右する現状を嘆く。さらに新ルールでは、エネルギー回収のためにコーナーを全開で攻めない方が有利になるケースもあり、ドライバーのスキルが発揮されにくいという指摘も出ている。 フェラーリのチーム内バトルは、この新時代のF1を象徴するシーンとなった。ハミルトンとチームメイトのシャルル・ルクレールは序盤から中盤にかけて何度も順位を入れ替えながら攻防を繰り広げ、スタンドを大きく沸かせた。『BBC』によれば、この攻防についてハミルトンは「チームメートとの戦いは最高なもので、F1で経験した中でも最高のレースだった」とコメント。ホイール・トゥ・ホイールの攻防を高く評価したという。
この自由なバトルを歓迎する声は少なくない。元Wシリーズ王者のジェイミー・チャドウィックは、フェラーリがチームオーダーを出さなかった判断を評価し、「彼らが互いに競い合っているのを見るのは好きだし、2人とも楽しんでいるようだった」と語っている。
またフェラーリのフレデリック・ヴァスール代表も「私は彼らを信頼している。ポジションを固定させるのは不公平だし、プロとして戦うのは、チームにとってもF1にとっても良いことだ」と、これに介入しなかった判断を正当化した。
一方で1997年王者のジャック・ビルヌーブはスポーツ専門チャンネル『Sky Sports』で、このバトルについて「少しやりすぎで、フェラーリのレースを台無しにした」と批判。タイヤ消耗やタイムロスのリスクを承知で2台が争った間にメルセデスとの差が広がり、勝負の主導権を完全に失ったと厳しく指摘している(英モータースポーツ専門サイト『TOTAL MOTORSPORT』より)。
もっともレース全体を見れば、肯定的な見方も少なくない。イギリスのモータースポーツ専門サイト『THE RACE』は、フェルスタッペンの批判が行き過ぎだと指摘し、中国GPには評価できる要素もあったと分析。「中国ではストレートだけでなくコーナーでもポジション争いが見られ、ブレーキングで並び、すぐに切り返すなど、以前のグラウンドエフェクト時代よりダイナミックな戦いが見られた」とし、新世代マシンのポテンシャルを評価した。
新レギュレーションの下、エンターテインメント性を評価する声と、ドライバー主体の純粋なレースから遠ざかったという批判......F1は今、その狭間で大きな岐路に立たされており、レースのあり方をめぐる議論は今後、ますます激しさを増していくことになりそうだ。
構成●THE DIGEST編集部
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