男子テニス界の頂点に立つ22歳カルロス・アルカラス(スペイン)が発した率直な言葉が議論を呼んでいる。
2026年シーズンを「全豪オープン」(四大大会)、「カタール・オープン」(ATP500)の連続優勝でスタートさせたアルカラス。しかし、その無敗街道は「BNPパリバ・オープン」(アメリカ・インディアンウェルズ/ATP1000)準決勝でダニール・メドベージェフ(ロシア/元世界ランク1位/現10位)に敗れたことでひとまず終止符が打たれた。
そんな若き王者は今、精神面である悩みを抱えている。“追われる立場ならではのプレッシャー”に苛まれているのだ。アルテュール・リンダークネシュ(フランス/現27位)にフルセットで勝利したインディアンウェルズ3回戦後の記者会見で現在の心境をこう明かしていた。
「僕に対しては、みんな信じられないほどのレベルでプレーしてくる印象だ。これについては自分の考え方が正しくないのかもしれないけど、いつも自分に対してだけそうなっている気がする。『このレベルでプレーできるなら、もっと上のランキングにいないとおかしい』とも感じてしまうんだ」
「正直、今は毎試合ロジャー・フェデラー(スイス/元1位)と戦っているような感覚で、常に自分が標的にされているような感じさえする。相手がそれだけ高いレベルでプレーしないと自分には勝てないことはわかっているつもりだけど、率直に言うと、そういう状況に少し疲れてきている」
しかし元世界王者ラファエル・ナダル(スペイン/2024年引退)の叔父でコーチを務めた経験も持つトニ・ナダル氏(スペイン/65歳)は、このアルカラスの考え方に対して異なる視点から異議を唱えている。先日出演したスペインのスポーツ専門ラジオ番組『Radioestadio Noche』で次のように持論を展開した。
「今のアルカラスは、自分が標的になっているというわけではない。私はその考え方には同意しない。そもそも誰だって自分より優れた相手と対戦する時は、より多くのリスクを取る必要があることを自覚しているものだ」
さらに同氏はメドベージェフ戦での敗戦に触れながら続ける。「アルカラスはメドベージェフより優れている。だから何もメドベージェフが特別にアルカラス戦でモチベーションを上げているわけではない。ただ勝つために、いつもよりも攻める必要があると理解しているだけのことだ」
つまり、対戦相手がアルカラスを“標的”として見ているわけではなく、「自分よりも強い相手を倒すための合理的な選択」としてプレー強度を高めているだけに過ぎない、というのがトニ氏の見解だ。そして最後に、その本質を端的にこう表現した。
「みんなはあくまで“最も優れた選手”に挑戦しようとしているだけだ。その対象が、今のアルカラスなんだ」
頂点に立つ者は、常に最高の挑戦を受ける。その現実をどう受け止め、どう自分の力へと転化できるかが、22歳の今後の成長を左右しそうだ。
文●中村光佑
【動画】アルカラスが今季初黒星を喫した「BNPパリバOP」準決勝メドベージェフ戦のハイライト
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