3月15日に閉幕したミラノ・コルティナ冬季パラリンピックは、数々の歴史的記録を打ち立てた大会として大きな足跡を残した。
イギリスの五輪専門サイト『inside the games』は、この大会を「複数の分野で記録を更新し、将来の大会の新たな基準を打ち立てた」と評価するが、とりわけ際立ったのは参加規模の拡大である。「55の各国・地域パラリンピック委員会から611人のパラアスリートが参加し、これは史上最多で、2018年平昌大会の564人・48NPC(国内パラリンピック委員会)という従来の記録を上回った」ということで、冬季パラスポーツの広がりを象徴する結果となった。
また、「エルサルバドル、ハイチ、モンテネグロ、北マケドニア、ポルトガルという5つのNPCが冬季パラリンピックに初出場」したことも特筆され、従来は縁が薄かった地域にも競技の裾野が広がっている。
さらに、ジェンダー面でも前進が見られ、「女性選手は合計160人が参加し、前回北京大会の136人を18%上回る史上最多を記録」し、4大会連続で女性参加者数の記録を更新。「オーストラリア、ベラルーシ、ブラジル、クロアチア、韓国、ラトビアの6NPCがそれぞれ過去最多の女性選手を送り出した」ことも紹介されている。競技別でも女子選手の増加が顕著で、「パラアルペンスキー57人、パラバイアスロン45人、パラクロスカントリー65人など、5競技で女性参加者数が過去最多となった」。
競技レベルの向上と国際化も進み、「79のメダル種目で27のNPCがメダルを獲得したのは史上最多」であり、「18のNPCが金メダルを獲得し、2018年平昌大会と並ぶ記録」となった。開催国イタリアも躍進し、「計16個のメダルを獲得し、過去最多だった13個を更新して金メダルも7個で過去最高」と大きな成果を残している。
観客動員やメディア面でも、記録が相次いだ。「パラアイスホッケーでは観客数記録が2度更新され、初日は8992人、決勝では1万1000人規模が見込まれた」という記録が生まれた他、「パラリンピック公式ユーチューブの動画再生数は4億1400万回を超え、過去を大きく上回った」と、デジタル分野でも存在感を示した。さらに「126か国で放送され、史上最も広く中継された冬季パラリンピック」となるなど、世界的な広がりも際立った。 こうした成功を受け、イタリアのスポーツ紙『Gazzetta dello Sport』は、先に開催されたオリンピックも含めて、今大会の意義をより広い視点から総括。コルティナ財団のステーファノ・ロンゴ会長は、「五輪は単なるスポーツイベントを持続的な成長の機会へと変え、アクセシビリティやインクルージョン、地域の統合的発展を促進した」と語り、「大会はメダル記録を超えたレガシーを残し、知識やインフラ、人間関係、そしてスポーツの役割に対するより広いビジョンをもたらした」と強調した。
特にパラリンピックはその象徴的存在とされ、「アクセシビリティやインクルージョンといったテーマを中心に据えた最も重要な瞬間だった」と評価されている。大会運営面でも「140人以上の専門スタッフが関わり、その経験は今後の地域資産となる」とされ、スポーツが経済や地域振興に与える影響の大きさも指摘された。
「スポーツはイタリア経済の1.4%、約250億ユーロ(約4兆5800億円)の価値を持ち、40万人以上の雇用を生み出している」とされ、「観光やサービス、インフラなどに波及する乗数効果こそが真の価値」と位置づけられている。
そして未来に向けては、「レガシーは自動的に生まれるものではなく、時間をかけて築き、育てていく必要がある」とし、「若い世代に機会を提供し、地域と都市を支え、持続的な観光とスポーツの発展を実現することが重要」と提言。実際に「関与した12人の選手が五輪・パラで6個のメダルを獲得」するなど、育成の成果も示された。
一方で、こうした成功の裏側では新たな課題も浮き彫りになっている。前出の『inside the games』は、気候変動の影響による大会運営への懸念を指摘し、「危険なレベルでの気温上昇が議論を呼び、開催時期の見直しの可能性が検討されている」と報道。実際に大会期間中は異例の暖かさとなり、「短パンやTシャツで競技する選手も現われ、『熱帯のようだ』との声も上がった」他、「柔らかく遅い雪が不利に働いたと訴える選手もいた」という。
こうした状況を受け、「より寒冷な条件が期待できる時期に前倒しすべきではないか)」との声が上がり、某アメリカ人選手の「もし自分に決定権があれば、大会日程を前倒しする」とのコメントも紹介されている。レポートでは、「2040年までに安定した積雪で冬季五輪を開催できる国は10か国に限られる可能性」とも指摘されており、競技環境の維持が大きな課題となっている。IOC(国際オリンピック委員会)も、「開催地の固定化や日程前倒しを検討している」とされるが、他の競技日程との兼ね合いから簡単ではないという現実もある。
自然雪の確保が難しくなる中で人工雪の活用も議論されているが、「水やエネルギーなど多大な資源とコストが必要」とされ、単純な解決策とは言い難い。また、「雪質の悪化はパラアスリートの安全性にも直結する」と専門家は警鐘を鳴らしており、大会の大きなテーマである「持続可能」をいかに“持続”させるかが今後に問われることになる。
構成●THE DIGEST編集部
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