
DVD『時空戦士スピルバン vol.1』(東映)ダブル主役(左)スピルバン「城洋介」、(右)ダイアナレディ「ダイアナ」
【画像】「えっ、名前変わったの?」 これが「ダイアナ」演じた美人女優の「その後」です(5枚)
男女ふたりで並び立つヒーロー
特撮ドラマにおいて、女性ヒーローが主役級に配置された本格的な作品として知られるのが、1986年放送の『時空戦士スピルバン』です。今年2026年で放送から40周年を迎えます。
地球の真水を狙う「ワーラー帝国」の侵略を阻止すべく、クリン星から来た「城洋介(スピルバン)」と「ダイアナ」の幼馴染ふたりが戦うという、「善」対「悪」の王道展開です。当時、宇宙刑事3部作を経たメタルヒーロー路線は、このようなフォーマットが固定化されていました。マンネリを打破すべく撃ち込んだカンフル剤が、ヒロインの「ダイアナ」です。
当時の特撮番組において、女性キャラの役割はかなり固定されていました。主人公を支える補助役で、ピンチに陥って助けられる存在。戦う場面があっても、あくまで一時的で番組の中心に立つことは、ほぼありませんでした。
『スピルバン』は、その前提を崩しました。スピルバンはダイアナより年上で、基本的には主導権を握りますが、ダイアナはサポート役ではなく、ともに戦う「バディ」の立ち位置です。主役と同格の戦士である証しとして、ダイアナにも変身能力と専用スーツが与えられたのです。
これは、女性キャラクターとしてシリーズ初の設定でした。ダイアナは単独で戦い、任務をこなし、スピルバンの後ろに立つのではなく、隣に立ちます。状況によっては、彼女が主導権を握る回もありました。
重要だったのは、ダイアナが女性だからと言って特別扱いされない点でした。彼女は庇護される存在ではなく、判断を誤れば失敗もするし、戦士としての未熟さを見せる回もあります。その描かれ方は、性別に関係のない主役としてのキャラクター造形でした。ふたりは従来の「男性主人公と女性補佐役」という構図とは異なる、ダブルヒーローでした。
これは、過去の宇宙刑事シリーズと比べると、違いがよく分かります。たとえば、前作『宇宙刑事シャイダー』のヒロイン「アニー」は、戦闘能力は高くても変身はしない補助役で、物語の重心は常に主人公側にありました。つまり、ダイアナはそのハードルを越えたのです。
余談ですが、変身ヒロインとしてのダイアナの実現は、「シャイダー」放送時に「アニーは、なぜ変身しないんだ」という投書がたくさん届いたことがきっかけだったそうです。

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ダイアナヒッププレス!……いかが?
『スピルバン』の主人公は悲劇的な背景をもっていますが、番組自体はコミカルなやりとりで笑いを誘うシーンも多く、また、ダイアナの露出の高いミニスカ衣装と、敵をお尻で吹っ飛ばす得意技「ダイアナヒッププレス」も飛び出し、敵キャラだけでなくTVの前の男子たちにもヒットしました。
ただ、「主役がふたり」という試みは諸刃(もろは)の剣でした。放送当時、「主人公が目立たない」「話の焦点がぼやける」と感じた視聴者がいたのも事実です。それは、ダイアナのキャラクター性の問題ではなく、主役が複数いる構造に、当時の視聴体験では追いつけなかったことを意味しています。
結果として、『スピルバン』は爆発的ヒットとはいきませんでしたが、制作側の狙いは失敗ではなかったはずです。なぜなら、この作品は「ヒーローは1人」という前提を、実際のテレビシリーズで打ち破ったからです。また、男性と女性のそれぞれを主役に据えたことが、恐るべき挑戦でした。
そしてこの挑戦は、後続作品に少なからぬ影響を与えました。「スーパー戦隊シリーズ」における女性戦士の役割が拡張し、「平成仮面ライダーシリーズ」の女性ライダーのポジション、「ウルトラマンシリーズ」での女性ウルトラ戦士の自然な配置……これらは、『スピルバン』で蒔かれた種の延長線上にあるでしょう。
「女性が戦うこと」というより、「なぜ一緒に戦わないのか」という問いを、視聴者に先回りして提示した点に、『スピルバン』の先進性があったと言えるのではないでしょうか。
