デンバー・ナゲッツは、現地時間3月17日に本拠地ボール・アリーナでフィラデルフィア・セブンティシクサーズに124-96で快勝した。
アウェーのシクサーズはシュートが振るわず、チーム最多得点はベンチスタートだった2WAY契約のマージョン・ボウチャンプ(16得点)。フィールドゴール成功率は39.4%(37/94)に沈んだ。
一方のナゲッツは、クリスチャン・ブラウンが22得点でオフェンスを牽引。ニコラ・ヨキッチは8得点と、約2年ぶりの1桁得点に終わったが、チーム最多の14アシストとゲームメークに奔走した。
そんなナゲッツのワンサイドゲームで観客席を刺激したのは、コート上には不在の人物だった。右腹斜筋の肉離れにより3月1日から欠場が続いているシクサーズの大黒柱、ジョエル・エンビードだ。
後半開始から2分半余りが経過した頃、チームに帯同していたエンビードがベンチの仲間たちに合流しようとコートサイドに姿を現わした瞬間、会場からは大ブーイングが巻き起こった。
自軍のエース、ヨキッチとかつて激しいMVPレースを繰り広げたビッグマンの欠場を野次ったものだが、そこには「また今年もか!」という思いも込められていた。
実はエンビードは、2016年にデビューしてからの10年間で、2試合しかデンバーでプレーしていないのだ。
最後にボール・アリーナでプレーしたのは、名称がペプシ・センターだった2019年11月のこと。以降、6シーズン連続で敵地でのこの対戦カードを欠場している。
もともとケガがちで欠場が多いとはいえ、最大のライバルとも言えるヨキッチの本拠地に見参する機会が極端に少ないというのも奇妙な偶然だ。
エンビードが最初にこの地でプレーしたのはデビューシーズンの2016年12月30日だった。この試合でエンビードはチーム最多タイの23得点をあげたが、当時2年目のヨキッチはそれを上回る25得点を奪取。しかし試合は124-122でシクサーズに軍配が上がった。
2度目は2019-20シーズンの11月8日。この試合はエンビードの19得点、15リバウンドに対し、ヨキッチはゲーム最多の26得点に10リバウンドを記録し、ナゲッツが100-97で勝利している。
その他の8回は、ケガ、新型コロナウイルスのプロトコル、コンディション調整中につき連戦を回避、といった理由で、エンビードはデンバーでの試合を欠場している。リーグを代表するビッグマン2人の直接対決をこの目で見たい、という地元ファンにとっては、非常に残念なことだろう。 とりわけナゲッツがNBAの頂点に立った2022-23シーズン、ヨキッチではなくエンビードがシーズンMVPを手にしたことで、ファンのライバル意識はさらに増幅している。
一方で、当人同士は互いをリスペクトしている。
ヨキッチは以前、エンビードについて次のようにコメントしていた。
「彼は偉大な選手だ。バスケットボールファンであれ、サッカーファンであれ、競馬ファンであれ、ナゲッツを応援していようがシクサーズを応援していようが、そんなことは関係ない。彼の偉業は尊敬すべきだと思う。彼は今まさに、僕たちの目の前で歴史を作っている。そして彼は、それをまるで簡単なことのようにやってのけているんだ」
自分が熱狂している“馬のレース”を加えているところがヨキッチらしい...。
エンビードも、前回2人がフィラデルフィアで対戦した24年1月の試合後、コート上でヨキッチにかけた言葉の内容を聞かれてこう答えている。
「彼には『君はリーグで最高の選手だ』と言ったんだ。彼は優勝した。つまりあのチームはリーグ最強。そして彼は、ファイナルMVPだ。『2週間後に会おう。今のまま、これからも突っ走ってくれ。それこそが、君がリーグ最高の選手である所以だ』と伝えたよ」
両者が最後に対戦したこの試合は、ともに約38分のプレータイムで、ヨキッチは25得点、19リバウンド、3アシスト、エンビードはゲームハイの41得点に7リバウンド、10アシストで、126-121と勝利もさらった。
しかし残念ながら、11日後のデンバーでの再戦は叶わなかった。メディカルスタッフの指示により、左ヒザの状況を考慮してティップオフの20分前に出場をとりやめたと、当時の指揮官ニック・ナースは試合後に明かしている。
今回も地元ファンの“歓迎”にエンビードは苦笑いだったが、試合が終わると自らヨキッチのもとに歩み寄ってハグを交わし、その後2人は笑顔でなにやら語り合っていた。
エンビードへのブーイングは、NBAのトップセンター同士の対決をこの目で見たい、という煽りでもある。しかし尊敬し合う同志との、相手の陣地での対戦を一番望んでいるのは、ひょっとしたらエンビード自身かもしれない。
文●小川由紀子
【画像】シャック、アイバーソン、コビー、レブロン、カリー、ヨキッチ…2000年以降のMVPを受賞当時の写真で一挙振り返り!

