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名作の「大渋滞」と「放送枠拡大」…日本アニメ躍進の先にある「落とし穴」とは?

名作の「大渋滞」と「放送枠拡大」…日本アニメ躍進の先にある「落とし穴」とは?


2025年度のアニメ産業の市場規模を大きく押し上げると見られる、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』第3弾キービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

【画像】「えっ、困るかも」「そういうことか」 これが、「名作アニメ」大豊作と「アニメ枠」拡大が続いた先に起こり得ることです(3枚)

アニメ放送枠の増加は好結果を生むのか

 近年、日本テレビ・フジテレビ・テレビ朝日などのキー局がアニメ作品の放送枠を増やし続けています。NetFlixでも『超かぐや姫!』が大ヒットし、劇場アニメでは『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』(以下、『鬼滅の刃』)が世界興収1000億を達成するなど、一見すると日本のアニメはかつてない勢いに乗っているように見えます。しかしその影で、複数の問題が徐々に浮かび上がりつつあるのです。

 最近のアニメ関連ニュースを見ていると、製作出資にキャラクターグッズの商品化、海外配信やライブイベントなど、ひとつのIPを世界中に展開して、より多くの利益をあげようとする動きが以前よりも増えています。

 アニメスタジオについても、提携や合併吸収のニュースがしばしば飛び込んできており、記事としてまとめようと動いても、すぐに次の動きが始まるため、取材を重ねて内容を練り込む暇すらありません。

 実際、アニメ産業の市場規模は、2024年には前年比14.8%増の約3兆8,000億円(約250億ドル)に成長しており、2025年には劇場版『鬼滅の刃』の上積みや劇場版『チェンソーマン』の収益が見込まれているため、さらに上昇する可能性があるでしょう。

 しかし、そう簡単に話が進むとは思えません。まず、国内TV局の放送枠増加については、「そもそも誰が作るのか?」という問題が解決されないまま時間ばかりが過ぎていきます。

 確かに10年ほど前に比べればアニメーターの収入は上がってはいますが、国内のインフレや円安の影響を考えれば、そこまで豊かになったというわけではありません。新人教育に力を入れている会社も多く、才能ある若者が次々と現れてはいますが、かつて死にものぐるいで現場を支えていた方々は報われないままです。

 近年でも、新規企画でファン層をつかむことに成功した作品が、「続編」を発表しているにもかかわらず、なかなか放送が決定しないという事例が複数見られます。多くの場合、理由は明言されていませんが、背景として制作現場の「人手不足」がたびたび指摘されています。


2026年1月から放送中の『呪術廻戦』第3期『死滅回游 前編』キービジュアル (C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

「名作アニメ」が飽和した先に起こり得ることは?

 かつて、アニメの世界では5年から10年に一度のペースで社会的な大ヒット作が出ると言われていました。『宇宙戦艦ヤマト』(1974年)、『機動戦士ガンダム』(1979年)、『美少女戦士セーラームーン』(1992年)、『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)などが代表的作品として挙げられるでしょう。

 しかし現代では、2026年1月スタートのアニメだけでも『葬送のフリーレン(第2期)』、『推しの子(第3期)』、『メダリスト(2期)』、『呪術廻戦 死滅回游 前編』など、大人気作品が集中しています。他にも見どころのある作品がいくつもあり、番組のチェックをしているだけで目が回りそうです。

 5年前であれば、どれかひとつが「覇権」と呼ばれ人気を集めていたような作品が、3本も5本も登場して毎週放送されているのは凄まじいの一言です。

 もちろん、名作アニメの「大豊作」はファンとして喜ぶべきことですが、これだけのハイペースで「絶対に見るべき」レベルの名作が次々と世に出続けたとき、大きな問題となるのが「可処分時間」の問題です。

 現代はアニメ以外にもゲームや動画視聴など膨大な種類の娯楽が存在しており、特に「ショート動画」は若者にとって日常的な時間つぶしとなり、広告宣伝を行う側としては若者へ情報を送り届けるための重要な要素となっています。

『ソードアート・オンライン』や『無職転生』、『ワンパンマン(1期)』や『進撃の巨人』など、海外のアニメファンの間でも人気を獲得しているタイトルは数多くあります。しかし名作が積み重なり、アニメ放送の「枠」が拡大を続け、人びとがアニメに使えるキャパシティを大きく上回った時に、何が起こるでしょうか。

 人びとが新作アニメを見ることなく、「名作」を見て満足して終わる。そのような未来がやってくるかもしれません。

 アニメの企画制作は、名作やヒット作が出なければ、あっという間に収益が悪化する不安定な世界です。多くの新作アニメ企画が苦戦するようになれば、「巨大IPとファン層を握っている作品」の続編や派生作品ばかりが作られるようになる可能性もあります。『超かぐや姫!』のような挑戦が国内で難しくなり、海外でしかできない状況になれば、人材の海外流出が加速するでしょう。

 ただ「枠」を増やすだけではなく、人を育てて待遇を改善し、現場の人手不足を解消する。そうすることで、名作や大ヒット作の間に「割って入る」ようなすぐれた新作が生み出されていく……。そうした先にこそ、日本アニメの未来があるのではないでしょうか。

配信元: マグミクス

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