騎手を続けるうえで、常につきまとうのが体重管理だ。年を重ねるほど代謝の衰えで苦労も増えそうだが「特別な節制はしていない」という。
「体重が重い時は、木曜と金曜は水を飲むくらいにして、金曜日の夜からサウナに入って体重を減らしたりします。ただ、それが当たり前になっているので、つらさはないですね。普段はバランスや量は考えますけど、けっこう何でも食べてますから」
それでも一般感覚では過酷とも思えるが、さらに驚かされたのは、お酒とのつきあい方にあった。
「大好きですね。ウイスキーもワインも、もう酒なら何でも(笑)。今でも若い頃と変わらず毎日飲んでますね。最近だと、どんな料理にも合うハイボールがメインで、寒い日はお湯割りにすることもあります。銘柄はサントリーの『角』。おいしいじゃないですか、悪酔いしないし。多い時は寝る前までダラダラと10杯ぐらいは飲む感じです」
そんな善臣騎手は、みずから料理を作ったり、釣りや車、鷹狩りなどを愛する“趣味人”としても知られている。中でも愛犬との時間は楽しみの1つだ。
「多い時は何匹もいたんですけど、今は2匹だけですね。お酒を飲みながら膝の上にワンちゃんがいる、何かそういうのが楽しくなっています。ジョッキーは10回乗って1回勝てればいいほうで、負けることのほうが多い。悔しい思いをして家に帰った時、何で発散するかというと、おいしいお酒だったり、かわいいワンちゃんだったりするわけです。やはり、そういうのでリフレッシュできていると思います」
仕事では競走馬、私生活では愛犬との交流を大切にしているというが、どこに共通点があるのか。
「馬でも犬でも、こっちがわかろうとしてちゃんと見てあげないと、相手のことはわかりませんからね。そのうえで、愛情や関心があること、敵ではないことを伝えなくちゃいけない。馬はすごく敏感で、人間を怖がっている時は目や背中の感覚でわかるんです。そのことを理解してあげたうえで、今ちゃんと教えるべきなのか、許すべきなのかを見極めないといけません。タイミングを間違えると『コイツ、全然わかってくんねえな』って、敵意を抱くこともありますからね」
1頭1頭の競走馬と真正面から向き合い、40年以上走り続けてきたレジェンドは「騎手が天職」という思いに変わりはない。
「負ける時が多いと言いましたけど、負けてもストレスは感じません。逆にレースでストレスを発散しているぐらいです。それぐらい競馬が大好きなので、もう最高の仕事ですよ」
優しく微笑みながら見せた真っすぐなまなざしは、とても印象的だった。
柴田善臣(しばた・よしとみ)1966年7月30日生まれ、青森県出身。85年3月にJRA騎手デビュー。確かな騎乗技術と豊富な経験で長く第一線を走り続けるJRAでは最年長の名手。22年には春の黄綬褒章を受章した。安田記念や高松宮記念などGⅠ9勝。1月31日に今年3度目となる勝利を挙げ、自身の持つJRA最年長勝利記録を更新中。

