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【現地発コラム】イタリア代表、招集メンバーから考察するガットゥーゾ監督の狙い、注目選手、切り札は――26日にW杯欧州予選プレーオフ初戦

【現地発コラム】イタリア代表、招集メンバーから考察するガットゥーゾ監督の狙い、注目選手、切り札は――26日にW杯欧州予選プレーオフ初戦

3月20日、イタリア代表のジェンナーロ・ガットゥーゾ監督は、現地3月26日と31日に行なわれるワールドカップ欧州予選プレーオフを戦う招集メンバー28人のリストを発表した。

 全体的に見れば、同監督の下で昨年9~11月のW杯予選を戦った顔ぶれが大部分を占める手堅い選出と言えるだろう。とはいえ、ほぼ2年ぶりとなるフェデリコ・キエーザの復帰、マルコ・パレストラ、ニコロ・ピジッリというU-21代表組の初招集、招集が期待されていたニコロ・ザニオーロの落選など、注目すべきポイントもいくつかある。

 まずは招集メンバーの顔ぶれを一覧しておこう。

<GK>
ジャンルイジ・ドンナルンマ(マンチェスター・シティ)
マルコ・カルネセッキ(アタランタ)
アレックス・メレト(ナポリ)
エリア・カプリーレ(カリアリ)

<DF>
アンドレア・カンビアーソ(ユベントス)
マルコ・パレストラ(カリアリ)
ジャンルカ・マンチーニ(ローマ)
フェデリコ・ガッティ(ユベントス)
ディエゴ・コッポラ(パリFC)
アレッサンドロ・バストーニ(インテル)
ジョルジョ・スカルビーニ(アタランタ)
リッカルド・カラフィオーリ(アーセナル)
アレッサンドロ・ブオンジョルノ(ナポリ)
フェデリコ・ディマルコ(インテル)
レオナルド・スピナッツォーラ(ナポリ)

<MF>
ニコロ・バレッラ(インテル)
ダビデ・フラッテージ(インテル)
マヌエル・ロカテッリ(ユベントス)
ブライアン・クリスタンテ(ローマ)
サンドロ・トナーリ(ニューカッスル)
ニッコロ・ピジッリ(ローマ)

<FW>
マッテオ・ポリターノ(ナポリ)
モイゼ・ケーン(フィオレンティーナ)
マテオ・レテギ(アル・カディシャ)
フランチェスコ・ピオ・エスポージト(インテル)
ジャコモ・ラスパドーリ(アタランタ)
フェデリコ・キエーザ(リバプール)
ジャンルカ・スカマッカ(アタランタ)※負傷により辞退

 一見してわかるのは、GK4人、DF11人と「後ろが重い」構成になっていること。特にセンターバックは7人も選出されている。ガットゥーゾ監督は昨夏就任してからの6試合で、攻撃志向の強い4-4-2とよりバランス志向の3-5-2を併用してきたが、この顔ぶれを見る限り、このプレーオフでは後者を基本システムと考えていることは明らかだ。それを前提として、以下ではポジション別に今回の招集にまつわる事情を見ていきたい。

  GKについては、主将でもあり絶対的な守護神の座に君臨するドンナルンマに次ぐ二番手の地位を確立してきたグリエルモ・ヴィカーリオ(トッテナム)が選ばれていない。このところトッテナムでのパフォーマンスがいまひとつで、3月10日のCLアトレティコ・マドリー戦ではスタメン落ちしたことなどから、今回の選出漏れはそれが理由かと勘ぐる向きもあった。しかし実情はそれとは異なる。

 ヴィカーリオは少し前から鼠蹊ヘルニア(いわゆる脱腸)の症状を訴えており、それがパフォーマンスにも影響していたと言われる。今回の招集見送りは、そのヘルニアを治すための手術(内視鏡による簡単な処置)を受けることが理由。したがって、「二番手」の地位が揺らいだわけではない。今回ドンナルンマと並んで招集された3人は、ヴィカーリオに続く「三番手」の地位を争う候補たち。その中ではカルネセッキが一歩リードしているというのが、現時点における評価のようだ。

 DFでは、チームの中核を担う1人であり、3バックの右CBと右WBのどちらでもプレーできるジョバンニ・ディ・ロレンツォ(ナポリ)が、故障のためメンバーから外れている。その穴埋めとなる右利きのCBとしてガッティ、さらには若手のコッポラが招集メンバーに加わった格好だ。CBでは、すでに代表に定着していたものの、故障による長期離脱の影響で2年近く招集外が続いていたスカルビーニの復帰が朗報だ。

 ディ・ロレンツォの欠場もあって最も手薄なポジションのひとつとなっている右ウイングバックに、今季カリアリで急台頭した21歳のパレストラが初招集されたのは、注目すべきトピックのひとつ。爆発的な走力と高い持久力、安定したテクニックを備えたスケールの大きい攻撃型SBで、今シーズンはセリエA29試合で1得点4アシスト。

 育成年代を過ごしたアタランタでダビデ・ザッパコスタ、ラウル・ベッラノーバにポジションを塞がれる形になってカリアリにレンタル移籍中だったが、代表ではやはり候補に挙がっていたその2人を蹴落とす形でメンバーに名を連ねた。その事実ひとつを取っても期待の大きさが伝わってくる、アッズーリの未来を担うべき逸材だ。

 DF登録されている中で右WBとしてプレーできる選手は、そのパレストラに加えて、左利きながら左右両サイドをこなせるカンビアーソだけ。ただし11月のノルウェー戦ではFW登録のポリターノがこのポジションを務めており、今回もレギュラー候補は彼だろう。所属するナポリでも3-4-2-1の右WBとして、ボール保持局面では実質的にウイングとして振舞いながら、非保持局面では最終ラインに下がって5バックを形成するハードワークをこなしており、代表でも攻撃の局面で決定的な仕事が期待されるキープレーヤーの1人だ。

 システムを3-5-2と仮定すれば、レギュラーと目されるのは、GKドンナルンマ、3バックがマンチーニ、バストーニ、カラフィオーリ、WBが右ポリターノ、左ディマルコという顔ぶれ。ただしバストーニは右脚頸部に軽い故障を抱えているため、コンディションが不安視されている。

  MFの人選で注目されるのは、ローマで急速な成長を見せているピジッリの初招集。2ボランチの一角でも3MFのインサイドハーフでもプレーできる万能型の8番で、攻守両局面でチームに実質的な貢献を果たせるインテリジェンスの高さが最大の長所。パレストラ同様、次代を担う存在として期待を集めている。

 本来ならば、MFに関して最も大きなトピックになるはずだったのは、2022年のW杯プレーオフを最後に代表から遠ざかり、ここ2シーズンはカタールリーグでプレーしているEURO2020優勝の立役者のひとり、マルコ・ヴェッラッティの復帰だった。

 厳しいプレッシャー下でも中盤でボールを落ち着かせ、攻撃のリズムをコントロールできるゲームメーカーの不在は、現在のアッズーリが抱える大きな課題のひとつ。現時点でのレギュラーと目されるロカテッリに加えて、ニコロ・ファジョーリ(フィオレンティーナ)、サムエレ・リッチ(ミラン)らがこれまで試されてきたが、説得力のあるパフォーマンスを安定して発揮するには至らなかった。ともに今回の招集から外れた理由の一端もそこにあると推測される。

 それもあってガットゥーゾ監督は、パリ・サンジェルマンの中心選手として長年欧州のトップレベルでプレーしてきたヴェッラッティの復帰を望み、この2月にはわざわざイタリア代表スポーツダイレクターのジャンルイジ・ブッフォン、EURO2020でともにプレーし、現在はガットゥーゾのテクニカルスタッフに名を連ねるレオナルド・ボヌッチとともにカタールまで説得のために出向いていた。

 そこで復帰に向けた合意を取り付けたとも伝えられていたのだが、以前から抱えていた膝の故障の回復が思わしくないことに加え、中東紛争の激化でカタールリーグが中断したことなども加わって、この復帰は実現することなく流れてしまった。

 結果的に3-5-2のセントラルMFを務めるレギュラーと目されるのは、右からバレッラ、ロカテッリ、トナーリの3人。ただしトナーリは先週のCLバルセロナ戦で左太腿を傷めて負傷交代しており、検査の結果筋肉に裂傷がないことは明らかになったものの、順調に回復できるかは不透明。経過によってはフラッテージ、あるいはピジッリの起用も検討されるかもしれない。

 FWに関して言えば、ガットゥーゾ監督が4-4-2、3-5-2という2トップのシステムを一貫して用いてきたのは、近年のアッズーリには珍しくセンターフォワードの顔ぶれが充実しており、その一方でトップ下やウイングの人材が手薄なことが大きな理由。レテギ、ケーンというレギュラーに加え、若手のピオ・エスポージトが台頭してきたのはポジティブな材料だ。

  今回招集された顔ぶれを見ると、故障で招集できないマッティア・ザッカーニ(ラツィオ)だけでなく、リッカルド・オルソリーニとフェデリコ・ベルナルデスキ(いずれもボローニャ)、ドメニコ・ベラルディ(サッスオーロ)、ニコロ・ザニオーロ(ウディネーゼ)と、4-4-2の中盤サイドでプレーできるウイングが軒並み外れている。

 一方で、セカンドトップあるいはトップ下として中盤と前線をつなぐ仕事ができるラスパドーリが、1か月の故障離脱から復帰して間もないにもかかわらず招集された。この事実からも、ガットゥーゾの念頭にあるのはまず3-5-2であり、4-4-2は特殊な状況におけるオプションに留まるだろうと考えるべきだろう。

 その「特殊な状況」として想定されるのは、相手にリードを許して(あるいは同点のままで)試合の終盤を迎え、どうしてもゴールが必要という切迫したそれ。こうした場面では試合の戦術的秩序はすでに壊れてしまっており、試合を決めるのは独力で決定的な違いを作り出せる個の力、たった1プレーですべてをひっくり返す圧倒的な爆発力であることがほとんどだ。

 そこでキエーザ、である。リバプールに移籍してからの2シーズン、ほとんどの試合でベンチを暖めているとはいえ、コンディションとモチベーションが十分ならば「試合を決める1プレー」を繰り出す力を持っていることに変わりはない。

 ガットゥーゾ監督は就任以来、キエーザを戦力として計算に入れて代表招集のたびに復帰を打診してきた。昨秋(9~11月)三度あった招集機会では、しかしキエーザ本人が「心身の準備が整っていない」という理由で、事実上招集を辞退してきたという経緯もある。今回、招集が実現したということは、今のキエーザは「準備が整っている」状態だと解釈できる。

 今シーズンのキエーザは、公式戦32試合に出場しているとはいえ、プレミアリーグでは試合終盤の途中出場がほとんどで、スタメン出場はカップ戦を中心にわずか5試合、通算出場時間も673分に過ぎない。90分間、高いパフォーマンスを維持する状態にあるかどうかは分からない。しかし、どうしてもゴールが必要な場面で決定的な仕事を期待することは十分に可能なはず。そして、それができるプレーヤーが彼以外にいないこともまた、イタリアが直面している現実なのである。
 
 プレーオフの第1戦は3月26日、ベルガモでの北アイルランド戦。これに勝てば3月31日に、ウェールズ対ボスニア・ヘルツェゴビナの勝者とアウェーで決勝を戦うことになる。その2試合を通して、キエーザがスクランブル出動する機会がないのであれば、それが最も好ましいことは言うまでもない。

文●片野道郎

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配信元: THE DIGEST

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