
「全員揃っている状態で誰がベストか」日本代表の熾烈なCB争いに意気上がる渡辺剛。対戦した冨安には「間合いとか読みとか、あとは身体も…」【現地発】
3月22日、フェイエノールト対アヤックスのキックオフ前、オランダの著名記者が「今日の試合の見どころは冨安健洋(左サイドバック)とハジ・ムサ(右ウイングバックのマッチアップ。これで冨安の復調具合が測れるぞ」と言った。
長引く負傷で無所属だった冨安はこの冬、アヤックスに加入した。前節のスパルタ戦で初先発し、69分間プレー。攻守に安定したパフォーマンスで「フットボール・インターナショナル」誌の選ぶ週間ベストイレブンに選出された。今回のデ・クラシケルでアルジェリア代表のドリブラー、ハジ・ムサを抑えることができれば、いよいよ冨安も完全復活に近づくわけだ。
立ち上がりからペースを握ったフェイエノールトだが、左ウインガーのスターリングは明らかに不調。そのためハジ・ムサ頼りのサイドアタックとなり、冨安との激しいデュエルが繰り広げられた。しかし冨安のスピード、パワー、守備技術がハジ・ムサの個人技を完封。股を抜かれても、何事もなかったかのように背中でブロックした。冨安に対して、ハジ・ムサとロトンバが“2対1”の数的優位を作っても、冨安は相手ふたりを視野に入れたポジショニングと味方へのコーチングで難なく対応してしまう。しかも54分にはオーバーラップからクロスを入れて、MFストゥルの先制ゴールに繋げた。
67分、完璧なスタンディングタックルでハジ・ムサのドリブルを止めた冨安だったが、その4分後、ピッチの上に座り込んでしまった。控えの左サイドバック、ワインダルに後を託した冨安はロッカールームに戻らず、そのままベンチから戦況を見守っていたことから、深刻な負傷ではなかった模様だ。
冨安はアヤックスの左サイドバック陣の中でもずば抜けており、フェイエノールト戦のパフォーマンスはオランダメディアから高評価を得た。あとは何分プレーできるのか、連戦に耐えられるのか、そういったコンディション面のところだけだ。
フェイエノールトのCB渡辺剛はオランダ代表のウェフホルスト(先発)、デンマーク代表のドルベリ(55分から出場)のふたりのストライカーを封じ切った。
「タイプの違うふたりだったので、あのデカい選手(ウェフホルスト)は球際もバチバチくる選手でしたから、自分としてもそこで負けてたら試合にならないと思っていた。彼のところでキープされて展開された時が一番、自分たちがピンチになるパターンかなというのがあったが、そこはうまく潰せた。
中から出てきた選手(ドルベリ/前アンデルレヒト)とは、ベルギーの時から4回、5回、マッチアップしている。いい選手ですけれど、ああいう選手にシュートを打たせないとか、仕事をさせないのが、僕たちの仕事」
1点を失ったものの、アヤックスに5本しかシュートを打たせなかったフェイエノールトの守備は、「渡辺の復帰によって安定した」(RTVライモント)と評価された。
フェイエノールトは85分、MFモダーのPKで1−1に追いつき、引き分けた。VARの判定で得たこのPK、アヤックスの右サイドバック、ホサがペナルティーアークを荒らそうとしたため、両チームの選手が揉み合ったなか、上田綺世はボールを小脇に抱えて「俺が蹴る」という意思を示していた。しかし結局、蹴ったのはモダー。試合後、ファン・ペルシ監督は「PKの第1キッカーはスターリングだったがすでに退いていたため、モダーが蹴った」と説明した。さらに上田はVARの判定を待つ間、腰や足をストレッチ。同点後のプレー後も、足を伸ばす仕草を繰り返し、体力的に一杯一杯だった。
ほかにもタルガリネ、バレンテ、ボス、ハジ・ムサが足を攣ったり、プレー続行不可能のシグナルをベンチに送ったりし、タイムアップ後には渡辺もピッチの上に座り込んだ。
「このことが、この試合の大事さを物語っているのかなと思います。自分自身も一応、復帰明けで、身体もまだ完璧ではない状態だったので、ちょっとふくらはぎに来た。それこそトミ(冨安)も座り込んだし、うちの選手もたぶん、5人くらい座り込んだ。(冗談っぽく)まあ、ちょっと、みんな弱いですね。トミを別にして、うちの選手はみんな弱いです。すぐ怪我するし」
日本代表のDFとして、渡辺は冨安のパフォーマンスをどう見たか。
「自分たちのウイング、ハジ・ムサにトミ(冨安)が付き、やっぱり抑えてたことが多かったと思います。間合いとか読みとか、あとは身体もコンディションが上がってるなというのが見ていて分かった。絶頂期のトミに戻ってきた時に、代表の戦力になるんだろうなというのを感じた」
CBのポジションは日本代表の激戦区のひとつ。怪我人が多いのが悩ましいが、それでも人材には事欠かない。
「自分自身、ブラジル戦の前にも言ってたんですが、怪我人が帰ってきて、最後に誰が入るかというのが“本当の代表”。代表が(ワールドカップで)優勝を目ざすんだったら、全員揃っている状態で誰がベストかというのを決めるべきだと思います。そのことが自分のモチベーションにもなる。入るのが当たり前なんて全然、面白くないし。自分は(メンバーに入るかどうか)全然分からないい立ち位置ですけれど、トミが帰ってコンディションが上がったら、自分も上げないといけない。それこそ、(伊藤)洋輝も帰ってきて、高井(幸大)や(板倉)滉も怪我から帰ってくるだろうし、自分もハイコンディショニングでいないといけないと思います」
6月14日、日本はオランダとワールドカップ初戦を戦う。メンフィス、ブロビー、ウェフホルスト、さらにローマで活躍するマーレンもストライカー候補だ。“オランダ代表FWウェフホルスト”とのデュエルを、“日本代表CB渡辺剛”はどう見たか。
「彼が長い間、オランダ代表でプレーして、今回も入っているし、アヤックスでずっとやっている。それだけの選手というのは自分自身も分かっている。僕自身、『今日は仕事をさせない』と思っていた。次、オランダともし対戦する時には、ひとつの自信になると思います」
ウェフホルストは前回のカタールワールドカップ、アルゼンチン戦の終盤、フリーキックのトリックプレーからゴールを決めた。
「なんか、持ってそう。彼には魂を感じました。『いつでもやってやるぞ』というのが姿勢と態度から伝わってきますし。マッチアップしてない時でも、引っ張ってきたりとか。でも試合が終わるとフレンドリーに挨拶しにきてという感じで、ナイスガイだった」
以前、負傷した足首を再び痛めたことから、前節のエクセルシオール戦は大事をとって休養。渡辺は日本サッカー協会としっかりコミュニケーションをとったうえで、先週木曜日の代表メンバー発表に名を連ねた。
「ファン・ペルシ監督はエクセルシオール戦の直前まで僕に出てほしかったみたいだけど、メディカルスタッフが『おそらく無理』と言ってくれた。(欠場を)嫌々受け入れてくれて『アヤックス戦を100%の状態でやってくれ』と言われて準備して、今日、しっかりできた。協会とは『アヤックス戦で完璧にできたら』という話をしてました」
その完璧を成し遂げ、渡辺はスコットランド、イングランドと戦う日本代表に合流する。
取材・文●中田 徹
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