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「今の子どもたちを見ていると...」古巣ザスパの育成に携わる永井雄一郎に託された使命「彼らがここから化けないとは限らない」

「今の子どもたちを見ていると...」古巣ザスパの育成に携わる永井雄一郎に託された使命「彼らがここから化けないとは限らない」


 1999年のワールドユースで準優勝、2007年のアジア・チャンピオンズリーグ制覇とMVP受賞など、輝かしいキャリアを築いてきた元日本代表FWの永井雄一郎。W杯出場こそ経験していないが、浦和レッズ、清水エスパルス、横浜FC、ザスパ群馬(当時はザスパクサツ群馬)など国内外10クラブでの選手生活は非常に充実したものだったと言っていい。

 その彼が2026年2月からJ3・ザスパ群馬のアカデミーダイレクター兼U-18監督に就任するという一報を耳にして、驚きを覚えた関係者やファン・サポーターも少なくなかっただろう。というのも、彼は2020年に加入したはやぶさイレブン(現・厚木はやぶさFC)からは選手兼指導者として活動していたからだ。

 KONOSU CITY FCに在籍していた2024年には、中村俊輔や阿部勇樹、林陵平らとともにJFA公認S級(現Pro)コーチライセンス講習会に参加。25年には最高峰ライセンスも取得し、その後はトップ選手を指導していくことになるという見方が強かった。

「自分自身もトップをやりたいという気持ちが強かったのは事実です。FIFTY CLUB、はやぶさイレブン、KONOSU、大森FCと社会人チームを渡り歩いてきて、モチベーションのバラつきを感じましたけど、Jのトップチームならそういうことは少ない。本気で高い意識を持って取り組んでいる人たちと仕事がしたいと考えていたからです。

 Jクラブの話が浮かんでは消えという状態が続くなか、昨年末に細貝萌社長兼GM(当時)からオファーをいただいた。そこで『アカデミーダイレクターも兼務してほしい』と言われて気持ちが変わりました。群馬のアカデミーはNPOの別法人だったんですが、完全にクラブ組織に入って3年目のシーズン。ここからより強化を進めていくという話を聞いて、ものすごくやりがいがあるなと感じた。

 僕自身も過去に3年間、このクラブでプレーさせてもらっていましたし、恩返しをしながら基盤作りができるのは有難いこと。そう思って決断しました」と、永井は偽らざる思いを口にする。
 
 2月1日の正式就任に先駆けて、1月中に群馬に赴き、指導をスタートさせた。目下、U-18は群馬県2部。同県の前橋育英に比べると、カテゴリーがかなり下がる。ただ、永井自身も三菱養和時代は年代別代表経験が皆無。ほぼ無名だったということで、選手たちにはまだまだ伸びしろがあると感じているようだ。

「自分の幼少期にはJリーグがなくて、プロサッカー選手になる夢も持っていなかった。三菱養和で小学校から高校までプレーしていましたけど、中学の時に東京選抜から落とされ、高校の時も代表に入ったことがない。そういう立場を経験しているからこそ、今の群馬のアカデミーの選手の立場がよく分かります。

 彼らがここから大きく化けないとは限らないし、エリート街道を走っていない選手だからこそ、上を見続けて努力する強さを養える。自分がやってきたような取り組みを選手たちに伝えようと思って向き合っています」と永井は熱っぽく語る。

 Jクラブのアカデミーは飛び級が当たり前。優秀な選手は即座にトップの練習に呼んでもらえる。高校時代の永井も浦和の練習に参加する機会に恵まれ、サテライトにいた若手とプレーしたが、その時のショックを今も鮮明に覚えているという。

「秋が瀬公園の河川敷でやっていた時代ですけど、4つ上の桜井直人さんや岩瀬健さんがいて、ボールは取れないし、メチャメチャ凄かった。でも、『この人たちは試合に出ていないんだよな』と驚かされた。特に桜井さんのドリブルはケタ外れでした。高2の自分は『ああいうふうになりたい』と心底、思いましたね。

 うちにも1人、トップの練習試合に連れて行ってもらった選手がいるんですけど、何が違ったかをみんなの前で話してもらいました。それによって本人も頭の中が整理できるだろうし、周りの基準も上がる。それを頭に入れて日常を過ごすことで、チームのレベルも上がっていくと思います」と、永井は指導者として選手の成長を促しているのだ。
 
 同じタイミングで前橋育英の山田耕介監督がGMに、三菱養和時代の1つ上の先輩であるシュナイダー潤之介がU-15監督にそれぞれ就任。アカデミーとしてしっかりとした軸が生まれたのも、永井にとっての追い風だ。

「ジュニアからジュニアユース、ユースを経てトップに昇格させる縦の流れを作りたいという考えは、山田GMもシュナさんも一致しています。これからディテールを詰めていきますが、GMは育成のスペシャリストで学ぶべきところが数多くあると考えています。

 現状、僕らはプレミア(高円宮杯プレミアリーグU-18)から数えて5部で、トップレベルの選手が選んでくれるチームでないことも承知していますが、ユースのカテゴリーを引き上げ、スカウティング体制を強化すると同時に、トップチームもカテゴリーを上げてもらうことが大事。上のレベルが高ければ、『ザスパでやりたい』という子どもたちも増えると思うので、そこもクラブとしてしっかり取り組んでいくべき点だと思います」

 永井が言うように、J1トップのクラブはアカデミーのレベルも着実に上がっている。その筆頭が2025年J1王者の鹿島アントラーズだ。以前は「アカデミーからの選手がなかなか出てこない」と言われていた彼らだが、柳沢敦、小笠原満男らレジェンドが指導に当たるようになり、環境面も整備されたことで、昨年は「日本クラブユース選手権(U-18)」「Jユースカップ」「U-18高円宮杯プレミアリーグ」を制し、3冠を達成。徳田誉や吉田湊海ら将来の日の丸候補のタレントが次々とトップに上がっている。

 小笠原や鹿島アカデミースカウトの本山雅志らとワールドユースで共闘した永井にしてみれば、その躍進は大いに参考になるはず。「鹿島だから選手が来るというのはあると思います」とは言うものの、群馬も成長速度を引き上げていくことが肝要だろう。
 
「今の子どもたちを見ていると、まず身体動作ができていないことが気になります。外で遊ぶ機会が減り、公園で鉄棒やタイヤ飛び、竹馬とかをやっていた僕らの世代に比べると、うまく身体を動かせない。そうなると、いくらボール扱いを練習しても、相手と対峙した時に身のこなしでかわしたり、駆け引きができなくなってしまう。年齢が上がり、守備強度も上がってくると、どうしても壁にぶつかってしまう。ジュニア、ジュニアユースとも連係しながら、その課題と向き合うことが、まず第一歩かなと思います。

 そのうえで、考える力をつけることが重要。僕自身もいろんな投げかけをしますし、時にはキツいことも言いますけど、自発的に気づいて動いたり、自分で判断できたりする力を身につけないと上にはたどり着けない。そういう話は口を酸っぱくして言っています。

 本気で覚悟を持ってプロを目ざそうとする選手を何人作れるか。それがU-18の監督でもある自分の仕事だと考えています」

 現役選手の頃は少しヤンチャなイメージもあった永井も40代後半になり、人生経験豊富な大人の指導者へと変貌を遂げている。様々なキャリアを経て、群馬のアカデミーを本気で飛躍させようとしている彼のここからの挑戦を興味深く見守りたいものである。
(本文中敬称略)

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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