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決勝で0-2敗戦。シティのスタンドから飛んだ「アーセナル、退屈だ」。それは単なる挑発だけでなく、本質を突いたものだったのかもしれない【現地発】

決勝で0-2敗戦。シティのスタンドから飛んだ「アーセナル、退屈だ」。それは単なる挑発だけでなく、本質を突いたものだったのかもしれない【現地発】


[カラバオカップ決勝]アーセナル 0-2 マンチェスター・シティ/3月22日/ウェンブリー・スタジアム

 3月22日に行なわれたカラバオカップ決勝の敗戦後、イングランドのメディアは一斉にアーセナルのGKケパ・アリサバラガのミスと、本来控えのスペイン人GKを起用したミケル・アルテタ監督の決断を批判した。

 確かに、マンチェスター・シティのラヤン・シェルキのクロスを処理しきれず、先制点を許したケパのミスは致命的だった。あの一瞬で試合の流れは大きく傾いたと言っていい。

 しかしこの試合を振り返る時、焦点をGKのミスだけに当てるのは不十分だろう。むしろ、より本質的な問題として浮かび上がるのは、アーセナルの「消極的なアプローチ」だった。

 今季のアーセナルには「退屈」「守備的すぎる」といった評価がつきまとっている。セットプレーの精度向上という明確な武器を手に入れた一方で、オープンプレーからの得点は減少し、攻撃の流動性や躍動感は影を潜めている。

 アーセン・ヴェンゲル時代に象徴された華やかな攻撃、あるいはアルテタ体制初期に見られたエネルギッシュな前進力は、少なくともこの決勝ではほとんど感じられなかった。

 象徴的だったのは、前半の中盤から後半の序盤にかけての戦い方だ。立ち上がりこそ、アーセナルが優勢だった。チャンスも作っていたが、次第にシティが持ち直した。

 ただアーセナルは、まだ0-0という状況でありながら自陣深くに引き、フィールドプレーヤー全員でペナルティエリア周辺を固める場面が目立った。失点を避けることを最優先にしたその姿勢は、決勝という舞台を考えれば理解できる部分もあるが、同時に、自ら主導権を手放す選択であるようにも見えた。
 
 結果として、シティは何度でもボールを回収し、攻撃をやり直すことができた。後半の約25分間はほぼ一方的な展開となり、アーセナルは押し返すことすらできない。英メディアが「プレーしに来ていたのは、シティだけだった」と評したのも無理もない。

 そうした流れの中で、ケパのミスは起きた。もちろん個人としての責任は免れないが、あのプレッシャーの連続の中で、いずれ綻びが出るのは時間の問題でもあったように思う。つまり、あの失点は単なる偶発的なミスというよりも、試合展開の帰結だったと捉えるべきだろう。

 さらに気がかりだったのは、アルテタ監督の試合中の対応だ。押し込まれる状況が続いていながら、戦術的な修正はほとんど見られなかった。交代カードも後手に回り、流れを変えるにはあまりに遅かった。

 英メディアが「奇妙なほど動けなかった」と表現したように、ベンチの意思決定が試合に影響を及ぼせていなかった印象は否めない。一方、シティのニコ・オライリーは「試合のハーフタイムに、デクラン・ライスが駆け上がった背後のスペースを突くように」と、ジョゼップ・グアルディオラ監督から指示があったと明かしている。その結果として、オライリーは2ゴールを挙げた。
 
 こうしてアーセナルは、守ること自体が目的になったかのような状態に陥った。本来、守備は勝利に至るための手段であるはずだ。しかしこの試合では、ボールを奪っても攻撃が単発的で機能しなかった。

 その姿は、アルテタが現役時代に学んだデイビッド・モイーズ的な守備志向を想起させるものでもあった。シティのスタンドから飛んだ「アーセナル、退屈だ」というチャントは、単なる挑発だけでなく、今のアーセナルの本質を突いたものだったのかもしれない。

 もちろん、アルテタの判断には一貫性もあった。カップ戦を勝ち上がってきたGKケパを決勝でも起用するという決断は、公平性や信頼関係を重んじたものだろう。しかし、タイトルがかかった舞台で求められるのは、時にそうした感情を切り離す冷徹さでもある。

 結果として、その“情”はミスとして表面化した。ただし繰り返しになるが、仮に正GKのダビド・ラヤが先発していたとしても、この試合展開で勝てたかどうかは別の問題だ。守備的な構え、消極的なゲームプラン、そして試合中の修正の遅れ。これらが重なり合った結果としての敗戦だった。

 本来、この決勝はアーセナルが今季の強さを証明する舞台となるはずだった。プレミアリーグでは2位のシティに9ポイント差をつけて首位を快走。CLとFA杯という複数タイトルを狙える位置にいるアーセナルにとって、今回のリーグ杯は最初のトロフィーを手にする絶好の機会だったからだ。
 
 しかし現実には、その最初の一歩で躓いた。活力と創造性を欠いたパフォーマンスは、単なる敗戦以上に重い意味を持つ。英メディアが「アルテタはジョゼ・モウリーニョに変装していたかのよう」とまで評したのは、今季のアーセナルを強く印象づけるものだ。

 それでもシーズンは続く。アーセナルは依然としてリーグ首位を独走しており、優勝の可能性は極めて高い。

 だからこそ、この敗戦をどう受け止めるかが重要になる。今回の敗戦が一時的な低調なのか、あるいは組織的な問題が表出しているのかは、今後の試合で明らかになるだろう。

 6年ぶりの主要タイトルに手が届きながら、それを逃した一戦。その背景にあったのは、一つのミスではなく、アルテタ監督の選択だった。

取材・文●田嶋コウスケ

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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