
日本画家・四宮義俊の長編アニメーション監督デビュー作となる長編アニメーション映画『花緑青が明ける日に』が絶賛上映中。本作では老舗の花火工場・帯刀煙火店を舞台に、幻の花火<シュハリ>を完成させようと奮闘する3人の物語が描かれる。WEBザテレビジョンでは、帯刀敬太郎役の萩原利久、式森カオル役の古川琴音にインタビューを実施。初となるアフレコの感想や、物語のカギを握る“花火”について話を伺った。
■初となる“声優”への挑戦に「普段のお芝居とは全く違う」
――おふたりは本作が声優初挑戦と聞いています。実際に収録してみていかがでしたか?
萩原利久(以下、萩原):率直に言うと、とても難しかったです。マイクしかない空間でお芝居をすること自体が今までにないシチュエーションで、普段のお芝居とは全く違うことを実感しました。
僕はドラマや映画の撮影の時に、極限まで芝居以外のことは考えないタイプなのですが、「この秒数でセリフを言わなければならない」といったように、頭の片隅に入れなければならないことが多くて。でも声優は前々から挑戦してみたいと思っていたので、また機会があればやってみたいです。
古川琴音(以下、古川):私も想像以上に難しかったですね。普段のお芝居では考えてこなかった声量の調整や、セリフを入れる秒数が決まっているので「自分で間を作れない」ということについては特に苦労していて。本当は1日で収録を終える予定だったのですが、最初はもう手も足も出ず、別日に改めてチャレンジさせていただきました。
その時は萩原さんと一緒に収録させていただいたのですが、同じ空間に人がいるだけで収録のしやすさが格段に変わりましたね。

――完成した映像を観た感想もお伺いしたいです。
萩原:自分の声がアニメーションから出ているという驚きに加えて、収録段階では映像が完成していない状態で録っていたこともあり、本編を観た時はとても新鮮でした。全く見たことがないカットもたくさんあって、さらに色もついていて……。「一つひとつのシーンが面白かったな」というのが現時点での感想です。
古川:映画を観終わった時に、「これはただのアニメ映画ではないな」という印象を受けました。イラストの繊細さや美しさ、カメラワークのユニークさといった、クリエイティブ的な部分の面白さだけでなく、セリフやテーマについて考えさせられる部分がたくさんあって。
監督が「この物語を作るのに約10年かかった」と話していたのを思い出しましたし、私の声を必要としてくれたことが光栄だと改めて感じました。

――おふたりがキャラクターを演じる上で意識したことは?
萩原:作中での敬太郎の行動は大きなものだったと思うんですけど、彼が狭い社会の中で奮闘する姿は、大人になる過程で誰もが通る部分なのかなという印象がありました。なので演じる際には、彼の若さやシュハリを作ろうとする過程を声で表現するように心がけていたのですが、実際にやってみるとすごく難しかったですし、収録現場でもいろんなパターンを試しながら探っていった記憶があります。
古川:私が1番意識したのは3人が再会するシーンですね。敬太郎は夢に向かって一直線に進んでいて、逆に(敬太郎の兄・)チッチは現実を見据えて安定した方向に振り切っているのですが、その間を揺れているのがカオルという役なので、リアリティのある存在だと思っていたんですよ。
なのでまずはあまり声を作り込まずにやってみたのですが、いざ自分の声を当てはめた時に最初は全然マッチしなくて。そこからは「自分が考えていたものを出す」というよりは、慣れてきて自由になった時に出るものを大切にしていました。


■海外での“映画”の捉え方について語る「自分の意思や意見を主張したりする場」
――2月には「第76回ベルリン国際映画祭」での「ワールドプレミア上映」も実施されていました。萩原さんは出席してみてどうでしたか?
萩原:“映画”の捉え方は場所によって全然異なるものだということをすごく肌で感じました。会見では質疑応答の時間もあったのですが、僕に対しての質問の中に「AIによって、俳優や声優は将来なくなる可能性もあります。貴方はどのように思いますか」というのもあって。海外では、“キャストが自分の意思や意見を主張したりする場”という側面も強いのかなと。
「ベルリン国際映画祭」での経験は、僕の中ですごく大きなものだったと思いますし、普段あまり感じたことのない雰囲気を肌で感じました。
古川:私も一昨年、フランクフルト(ドイツ)の映画祭へ行った時に似たような体験をしたことを思い出しました。「この題名についてあなたはどう思いますか」「あなたはどんな俳優ですか」と聞かれることがあって、作品というよりは人間性を見られているように感じましたね。

――本作では、幻の花火<シュハリ>が物語のカギを握っています。おふたりの“花火”にまつわる思い出を教えてください。
古川:画家・山下清さんの代表作の一つに「長岡の花火」というものがあるんですけど、この作品を見に行ったのがちょうど「長岡まつり大花火大会」の日だったので、帰ってから自宅で中継映像を見たのは心に残っています。東京と違ってビルが少ない分、「こんな空一面に花火が見られるんだ」と感動して、いつか行きたいなと思いました。
萩原:僕は5〜6歳の頃に花火大会へ行ったんですけど、ちょうどその日に新しいゲームを買ってもらっていたので、大会中にずっとゲームをやっていたのは覚えています(笑)。
古川:「花より団子」じゃん(笑)。
萩原:そうそう。「花火よりゲーム」みたいな(笑)。

――本作では、立ち退きの期限が迫る中での2日間の物語が描かれています。もし2日間自由な時間があったら、おふたりは何をしたいですか?
古川:2日間ってすごくリアルな時間だよね。でも何か新しいことを習いたいから、一気に基礎を詰め込んで乗馬体験とかしてみたい!
萩原:2日間か……。う〜ん、寝るかも(笑)。
古川:2日間も寝るの!?(笑)。
萩原:丸2日寝るわけじゃないけど、2連休がはじまる前日に夜ふかしを多分するんですよ。そうなると起きる時間が遅くなって、色々していたら1日目が終わろうとしていて、「明日はどうしよう!?」って思いながらまた夜ふかしして……みたいな。誘われたりしたらどこかに行くのも良いけど、1人だったら贅沢な日常を過ごして終わる気がします。
◆取材・文=渡辺美咲/萩原利久ヘアメイク=KUBOKI(aosora)、スタイリスト=TOKITA/古川琴音ヘアメイク=豊田健治、スタイリスト=柚木一樹



