
大敗後の町田戦はPK戦負け。FW宮城天のDF登録など策を講じ手にした勝点1を経て川崎は“負のスパイラル”から抜け出せるか
[J1百年構想リーグEAST第5節]町田 1(3PK1)1 川崎/3月28日/町田GIONスタジアム
前節、国立でのホームゲームで横浜に0-5で敗れ、サポーターからブーイングを浴びていた川崎は、約1週間の準備を経て、町田とアウェーで対戦。
ボールを持たれた前半に先制を許すも、59分にエリソンが同点ゴールを奪い、その後は相手FWエリキが退場して数的有利を得て主導権を握った。しかし、チャンスを決め切れずにPK戦の末に敗戦。勝点1を得るにとどまった。
負傷者が続くなか、この日はキャプテンのMF脇坂泰斗らも不在。苦しい台所事情を強いられるなか、先発のメンバーリストではFW宮城天をDF登録し、3-4-2-1の採用も予想されたが、蓋を開けてみれば、宮城をトップ下に入れる従来の4-2-3-1でゲームをスタート。長谷部茂利監督は「守備をしっかりやれよということ」と宮城のDF登録の意図を説明し、チームの戦い方をこう評価した。
「トレーニング、ミーティングですり合わせ、共有して臨んだので、1失点していますが(失点は)減った。球際、セカンドボールのところで拾う意識は高まった。そこは良かったと思います」
大敗からの巻き返しへ士気も高まっていたという。所属17年目のFW小林悠も振り返る。
「怪我人が出ているなかで、いるメンバーで試合前も良い声が出ていましたし、そういうところから変えていかなくちゃいけないと思うので、自分も積極的に声を出すようにしました。気持ちの部分が大事だと思ったので、そこは前回と違ったと感じます」
ただし、前半はブロックを築き、ミドルゾーンあたりからの守備で町田を迎え撃ったが、効果的なカウンターにはなかなかつなげられず、町田のミスに助けられた面もあったが、41分にエリキに先制ゴールを奪われた。長谷部監督も厳しい言葉も残した。
「前半からちょっとしたボールのコントロールや立ち位置だったり、少しマッチできていなかった。なんでそんなミスが起きるのか、本人たちが、選手たちが感じていると思いますが、本来できることが上手くいかなかった」
一方で後半はボランチで先発復帰した河原創らを軸により守備の厳しさが増し、チームとして前に出て同点に追いつけた点は評価すべきか。ただ、試合終盤は数的有利を活かせず、攻撃の質も低かった点は課題だと選手たちも口を揃えた。そのうえでのPK戦負け。指揮官も改めて複雑な表情を浮かべる。
「PK戦で負けているわけなので喜べませんが、勝点1というところはひとつ積み上げたと思わざるを得ない、思って次に向かっていきたいと思います」
この勝点1をどう活かしていくか。今後に向けて重要なポイントになるのだろう。
数日前、町田戦へ向け、サポーターから横断幕も掲げられたトレーニング後、長谷部監督はこう強調もしていた。
「皆さんに誤解して受け取ってほしくないですが、コンビネーションでボールをたくさんつないで綺麗に崩す形で点数を取るのがフロンターレだという風な認識があるのならば、そういう得点もあります。それにプラスアルファして、それだけではない攻撃のところを作っているつもりなので、そういう風に伝わればいいなと思ってます。
もうひとつ大事なことは、(川崎は)強かった、連覇してた、優勝するチームであったこと。そこを基準に同じようにしたいという想いがあると思うんですけども、簡単ではないですが、そこを目指しているということも発信したい。自分たちはそこを目指しています 以前、立っていたその立ち位置に戻ること、さらに少しバージョンアップして違う形も持った、そういうチームで新たなスタイルというか、これまでのスタイルにプラスアルファで戻したいと思っています」
川崎らしさとは、ひと言で説明するのは難しいが、かつての風間八宏監督が持ち込み、鬼木達前監督も進化させた技術力をベースにした華麗なサッカーが一般的なイメージだろう。
そこに長谷部監督が植え付けようとしているのが組織的な守備であり、手数をかけない個の力を活かした素早い攻撃、そしてシンプルなクロスからの攻撃などだと言えるだろう。
クラブとしてもACL制覇を目標に掲げており、勝利に徹した戦い方を引き出しに入れたいという狙いも見えてくる。
ただ、長谷部体制1年目の昨季からなかなか積み上げができていないのも現状であり、失点を減らそうと重心を下げれば得点が減り、ボールのつなぎなど攻撃を意識すれば失点がかさむ“負のスパイラル”を繰り返しているようにも感じる。
現に大敗した横浜戦後に長谷部監督も語っていた。
「強いチームはクリアしたこと(テーマ)をそのまま継続している考えです。昨年も同じようなことを繰り返して、あれができるようになったらこれが疎かになっている。この場で喋った気がします。今年はよくなりかけたところで大敗ですから、もう一度、自分たちがどういう道を歩んでいくのか、上り坂に違いありませんが、上がっていかなくてはいけない。そう思っています」
今回は横浜戦の大敗から気合いを入れ直し、町田と1-1の試合展開を見せたが、重要なのは次節の浦和戦以降だろう。果たして長谷部フロンターレは進化の道を示せるのか。
すぐに成果を出すのは難しいのは重々承知しているが、優勝を目指したはずの百年構想リーグは残り10試合の時点で首位の鹿島とは11ポイント差。首位を諦めることはないだろうが、百年構想リーグでチームをどう作り、夏からの新シーズンに臨むのか、その指標も必要になる。
町田戦は少しの前進とも言えそうだが、モヤモヤも残った。多くの人が目にしたいのは今後に希望を抱けるようなメッセージ性のあるパフォーマンスであり、明確な目標への道筋だろう。それが感じられるゲームに期待したい。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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