
金田喜稔がスコットランド戦を斬る!「森保監督の“アウェーでも絶対に勝ち切る”強い意志を感じた。塩貝は新たなオプションになると思う」
[国際親善試合]日本 1-0 スコットランド/3月28日/ハムデン・パーク
3月シリーズの第1戦。日本代表は国際親善試合でスコットランド代表とグラスゴーで対戦し、1-0で勝利した。
北中米ワールドカップのメンバーが決まるまで、残された時間はほとんどない。実質的にメンバー選考に関わる試合は、今回のスコットランド戦と、次のイングランド戦の2試合だけ。5月31日のアイスランド戦は、すでにメンバーが決まった後での壮行試合の位置づけになっている。
つまり、選手たちにとって、この2試合がワールドカップのメンバー入りをかけた最後のアピールの場となるわけだ。当然、選手一人ひとりの心の中には「最終メンバーに選ばれたい」という強い気持ちがあるはずだ。
森保一監督は、個人のアピールだけでなく、チームとして勝ちながら競争してほしいと考えているだろうね。組織としての規律を守り、勝利という結果を出すことで、チームの結束力と自信を高めながら、ワールドカップ本番を見据えなければならない。
個人のアピールと、チームとしての勝利。この2つを両立させなければならない、非常に難しい状況での試合になる。
スコットランド戦は、ワールドカップで対戦する可能性がある相手を考えれば、勝たなければいけないゲームだったと思う。だから、新しい選手を試しながらも、試合の主導権を握って勝利を目ざすプランだったはずだ。
前半に出場したメンバーは、怪我から復帰した渡辺剛や伊藤洋輝、また、佐野航大や鈴木唯人など当落線上にいる選手や、改めてコンディションを見極めたい選手たちが中心だったよね。彼らにとっては絶好のアピールの機会だった。
前半の戦いを振り返ると、守備は全員が集中して、失点を許さなかった。だけど、攻撃面では効果的なシュートに繋がるプレーがなかなか見られなかった。これは、“即席チーム”ゆえの連係不足が大きな要因だったと思う。普段から一緒にプレーしていない選手たちが、短い準備期間でコンビネーションを確立するのは至難の業だからね。
そうしたなかでも、個々の良さを発揮してアピールできた選手もいた。特にシュートに絡むプレーが多かったのは佐野で、多くのシュートシーンに関わって、自らも積極的にゴールを狙っていたよね。他にも後藤啓介のポストプレーや、藤田譲瑠チマのボールさばき、田中碧のチーム全体を見渡してプレーする視野の広さなども随所に見られた。
個人的に面白いと感じたのは鈴木だ。パスだけでなく、個人で局面を打開できるドリブルの力を持っている。ドリブルで仕掛けてシュートまで持ち込むプレーは、チームに変化をもたらす貴重な武器になる。もう少し見てみたいと思わせるだけのインパクトを残したと思うよ。
前半はなかなか得点を奪えなかったけど、連係が際立つシーンがあった。39分、藤田の縦パスを後藤がワンタッチで落とし、鈴木が右サイドの菅原由勢に展開する。そして菅原のクロスに佐野がボレーで合わせた。惜しくもゴールとはならなかったけど、5人が連動した攻撃が初めて形になった。
慣れないメンバー構成で、ついに良い連係から良い攻撃が生まれた。でも、このプレーを生み出すまでに30分以上かかったのが、前半の難しさを象徴していた。
試合が大きく動いたのは、後半だ。森保監督は、上田綺世や三笘薫、堂安律や伊東純也、鎌田大地や鈴木淳之介ら、これまで代表で長くプレーしてきた主力を次々と投入した。彼らが入ると、連係の質は格段に上がったよね。個々のポテンシャルが高い選手たちが、相手が疲れてきた時間帯に出てきたから、試合は日本のペースになった。
そして、森保監督の采配は、3-4-2-1を基本布陣とするこれまでの日本代表では、見たことのない非常に大胆なものだった。ボランチを鎌田ひとりにして、シャドーに伊東と三笘を配置。さらに、右ワイドに堂安、左に中村敬斗。そして前線には上田と、途中出場で代表デビューを飾った塩貝健人を2トップにした。
3バックの前に7人の攻撃的な選手を並べて、システムで言えば3-1-6のような形だ。おそらく、ワールドカップ本番でこのシステムを使うとすれば、試合に負けていて、どうしても1点を取らなければならない切羽詰まった状況以外にはないよね。
それを、親善試合で試した。アウェーの地で、ワールドカップ出場国のスコットランドを相手に。この采配には、森保監督の“アウェーでも絶対に勝ち切る”といった強い意志が表われていたと僕は思った。
この超攻撃的な布陣で、84分に待望のゴールが生まれた。実に見事な連係からだった。中盤で中村が起点となり、左の三笘へ展開する。そして、3バックの一角を務める鈴木淳之介がインナーラップで長い距離を駆け上がり、三笘からパスを受けて、折り返す。エリア内で塩貝が相手を背負いながらポストプレーで落とし、最後は走り込んできた伊東が決めた。5人が絡んだ素晴らしいゴールだった。
この決勝点は、森保監督の大胆な采配に選手たちが応え、個々の良さを出し切った結果と言える。そして無失点で勝ち切った事実は、チームにとって大きな自信となり、次への一歩に繋がる非常に価値のある勝利だと思う。
そのなかで、とりわけ印象的だったのは、決勝点をアシストした塩貝だ。まだ21歳と若く、今回が初招集で、一部ではサプライズと見られているかもしれない。だけど、僕はそうは思わない。
メンバー選考の最終段階で呼ばれたんだ。当然、単なる“お試し”ではないはず。森保監督は、彼にはワールドカップのメンバーに食い込む可能性があると考えて、“覚悟を持って呼んだ選手”なのではないか。
フィジカルが強くて、スピードがある。そして何より、ストライカーでありながらドリブルで仕掛けられる、希少な特長を持っている。総合力も高い塩貝は、チームの新たなオプションになると僕は思うよ。
さて、次はイングランド戦だ。しかも舞台は、サッカーの聖地ウェンブリー・スタジアム。これ以上ない試金石と言えるだろうね。
イングランドもメンバー選考の最終段階で、日本戦にはベストメンバーで臨んでくると思う。この試合で問われるのは、森保ジャパンが4年間をかけて作り上げてきた“良い守備から良い攻撃へ”のスタイルが、世界のトップレベル相手にどこまで通用するかだ。
イングランドの破壊力ある攻撃を、前線の選手も含めてチーム全体でいかに食い止められるか。そして、プレッシャーの中でボールを奪い、鋭いカウンターに繋げて、相手ゴールをこじ開けられるか。良い守備から良い攻撃の形を何回作れるか。それが、最大の注目点だと思う。
世界の強豪を相手に、日本がどのような戦いを見せてくれるのか。非常に楽しみにしているよ。
【著者プロフィール】金田喜稔(かねだ・のぶとし)/1958年2月16日生まれ、68歳。広島県出身。現役時代はドリブルの名手として知られ、中央大在学中の1977年6月の韓国戦で日本代表デビューを飾り、代表初ゴールも記録。『19歳119日』で記録したこのゴールは、現在もなお破られていない歴代最年少得点である。その後は日産自動車(現・横浜FM)でプレーし、1991年に現役を引退。Jリーグ開幕以降はサッカーコメンテーター、解説者として活躍している。
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