現地3月17日に行われた2026ワールド・ベースボール・クラシック(以下WBC)の決勝ラウンドをアメリカ・マイアミで観戦した。ぼくはWBCを06年の初回からかなり入れ込んでフォローし続けており、2回目以降は毎回アメリカでの決勝ラウンドにも足を運んでいる。WBCウォッチャーとしての今大会総括を、◯と×での評価でお届けしたい。
※前編の修正を反映
※前編から続く
○イタリア旋風
初の準決勝進出を果たし、大会最大のサプライズチームとなった。1次ラウンドではアメリカ相手に大金星も挙げた。構成はアメリカ生まれの選手中心だが、MLBおよびその傘下の選手が出身国、または自身のルーツに再配分されて競い合う(日本のように自国のプロリーグ中心で構成されるチームもあるが)という、他の競技の世界大会とは異なるWBCの在り方の一面を象徴しており、これも楽しい。
○ベネズエラファンの声援
実際に球場で遭遇すると、彼らのノリには圧倒される。コンコースで打楽器でのパフォーマンスが演じられると、老若男女が次々に飛び入り参加し、軽妙なステップで踊り出す。集団での画一的な応援でのお遊戯しかできない日本のファンには絶対に到達できない領域だった。
×やっぱりそぐわない失点率での優劣
プールC東京ラウンド最終戦、韓国対オーストラリアはベースボール史上最も接戦で、かつ盛り上がった5点差試合だった。日本が1位通過を決めており、オーストラリアはこの試合勝利なら文句なしの2位通過だが、同チームが敗れれば、韓国やすでに全試合を終えた台湾も決勝ラウンド進出の可能性が残されていたからだ。結果は韓国が「5点差以上の勝利で2失点以下」という高すぎるハードルをクリアし、劇的なマイアミ行きを決めた。それ自体は最高のドラマだったが、野球というゲームの本質にそぐわない得失点差や失点率での順位決定に違和感は拭えなかった。
ヒューストンでのプールBでもアメリカは最終的には2位通過を決めたものの、プール最終戦のイタリア対メキシコでメキシコが勝利した場合、メキシコの失点数いかんでは敗退となる可能性があった。またそのことをデローサ監督が事前に把握していなかったことが物議を醸した。同監督の無知は非難されて然るべきだが、やっぱりこのルールはいただけない。過去にもこれによる泣き笑いがあった(第1回大会の日本はこのおかげで命拾いした)。失点率で机上の勝敗を作り出すくらいなら、予備日を設定した上での延長タイブレーク式でのガチンコ対戦や、昨年のMLB球宴で実施された本塁打競争による優劣決定の方がまだましだ。
○大会を重ねるたびの成長
長い間、WBCはまがいもの扱いをされてきた。中立性のないMLB(選手組合も含めて)の主催であること、スター選手の出場忌避や球団の派遣渋り、商売優先で公平性に欠ける参加チームのプール配分などが批判の矛先だった。真剣に取り組んでいるのは日本だけとも揶揄されたこともあった。サッカーのワールドカップと比べるとインチキ臭さは否定できなかったのだが、20年の歴史を経てそれなりに野球に世界大会として認知されてきたと思う。選手もこの大会の価値を認識し競って参加するようになったし、ビジネスとしても成長した。やはりローマは一日にして成らず。ますます次回が楽しみになった。
決勝戦を堪能した翌朝、搭乗便発の3時間前にマイアミ国際空港に着けるよう、リトルハバナの安宿をUBERで出た。すると、早朝5時だというのにセキュリティチェックの列は途方もない長さになっていた。トランプ政権と野党・民主党の対立に起因する一部政府機能の停止による運輸保安庁の人員不足の影響だ。1時間以上も並んでも遅々として進まない。一部の乗客から罵声が飛ぶ殺伐とした雰囲気になったが、列でぼくの前の男性がこっちの焦りを察したか、「おれはまだ搭乗時間に余裕があるんだ、先に行けよ」と言ってくれた。ほんの1人分先に行けただけだがほっこりした。
文●豊浦彰太郎
著者プロフィール:北米63球場を訪れ、北京、台湾、シドニー、メキシコ、ロンドンでもメジャーを観戦。会社勤めの悲しさでポストシーズンは未体験。好きな街はデトロイト、球場はドジャー・スタジアム、選手はレジー・ジャクソン。「Yahoo!」「JSPORTS」でも執筆中。

