2026ワールド・ベースボール・クラシック(以下WBC)の決勝ラウンドをマイアミで観戦した。準々決勝の日本対ベネズエラ戦から、と言いたいところだが、観戦スケジュールを捻出できたのは準決勝2試合目のベネズエラ対イタリア戦と、決勝のアメリカ対ベネズエラ戦の2試合のみだ。
野球に政治を持ち込むべきではないが、年始早々のドナルド・トランプ政権による国際法を無視したベネズエラへの介入という事件があったばかりなので、ベネズエラがアメリカに勝利して優勝を決めたのは感動的なドラマだった。
ぼくは、WBCを06年の初回からかなり入れ込んでフォローし続けており、2回目以降は毎回アメリカでの決勝ラウンドにも足を運んでいる。特に熱心な侍ジャパンのサポーターではないが、その分、中立に近いWBCウォッチャーとしての今大会総括を◯と×での評価でお届けしたい。
○ベネズエラ初優勝
冒頭に記した政治事情を別にしても意義があった。これで、アメリカ、ドミニカ共和国、日本とベネズエラのベースボールの世界四強すべてが優勝を手にしたことになる。今後、WBCが長く隆盛を続けるには、寡占状態よりなるべく多くの強豪国による均衡状態が続くことが望ましいのは言うまでもない。
×Netflix騒動
「地上波で見れない」問題が取り沙汰されたが、映像をテレビ局に開放しないネトフリがケシカランのではない。日本ではもはや五輪やサッカー・ワールドカップをしのぐ国民的スポーツ行事であるWBCへのユニバーサル・アクセスが脅かされたことを問題視するなら、鉾先はそれを守れなかった(放映権料を払えなかった)日本のテレビ局に向けられなければならない。また、視聴者にカネを払わせるネトフリがイカンのではない。NHKは地上波でもBSでも視聴料を徴収しているではないか。
○日本戦以外でも集客できた東京ラウンド
2年前のプレミア12での優勝効果もあったのだろう、今回の東京ラウンドではチャイニーズ・タイペイの試合にも、すべて4万人以上の大観衆が詰めかけた。それに引き摺られた(?)か、韓国戦もよく入った。いや、日本居住者が圧倒的に少ないはずのチェコとオーストラリアとの対戦でも、2万人以上の「大入り」だった。
これはとても良いことだと思う。WBC東京ラウンドは、あくまでベースボール世界大会の一部であり、「侍ジャパンシリーズ」ではないのだから。かつての東京ラウンドは、日本戦以外では「これ、無観客試合ですか?」と突っ込みたくなる不入り試合が多かった。これが世界大会のホスト国の実態だとすると悲しくなったものだった。
×準々決勝で散った侍ジャパン
必ずしも「侍ジャパン命」ではないぼくも応援はしていたので、2度目の連覇ならずは残念。とはいえ、ケビン・コスナー主演の名作映画『Bull Durram』(邦題『さよならゲーム』)の中のセリフではないが、「Sometimes you win, sometimes you lose」(勝つ日もあれば、負ける日もある)がベースボールの本質だ。捲土重来を期せば良いと思う。
一方、戦術面では日本はもっと時代の流れを取り入れた方がいい。1次ラウンド1位通過を決めた後のいわばmeaningless gameでの超格下(ディスっているのではない、事実を言っているだけだ)のチェコ戦で、0対0とは言えまだ5回なのに井端監督は無死一塁で昨季の首位打者・牧原大成に送りバントを命じた。戦術の科学性という意味では「1番・高木(守道)が塁に出て、2番・谷木(恭平)が送りバント~♪」の名曲『燃えろ!ドラゴンズ』がヒットした1974年から日本野球は成長していない。
×銀河系軍団でも優勝できないアメリカ
ここまでオールスター級メンバーを集めながら、2大会連続で優勝を逸した。もっとも、優勝を飾った第4回大会から3回連続で決勝進出を果たしており、これは大会史上唯一。それなりに評価すべきだ。
残念なのは、決勝戦での同点で迎えた9回にマイク・デローサ監督が守護神メイソン・ミラーを投入しなかったこと。結果的にこれが敗戦につながったのだが、ミラーを起用できるシチュエーションについて、所属するパドレスとの事前合意に縛られた判断だったようだ。故障を懸念する球団が提示する起用条件に縛られるのは他チームも同様だが、「セーブ場面ならOK、そうでないのはNG」というのは理解に苦しむ。セーブが付く場面かどうかで故障リスクは変化しないはずだ。
※後編に続く
文●豊浦彰太郎
著者プロフィール:北米63球場を訪れ、北京、台湾、シドニー、メキシコ、ロンドンでもメジャーを観戦。会社勤めの悲しさでポストシーズンは未体験。好きな街はデトロイト、球場はドジャー・スタジアム、選手はレジー・ジャクソン。「Yahoo!」「JSPORTS」でも執筆中。

