
田中麗奈主演、森崎ウィン共演による映画「黄金泥棒」が2026年4月3日(金)に公開される。本作は、実際に起きた盗難事件をヒントに、萱野孝幸監督がユーモラスなオリジナルストーリーとして描き出した痛快クライム・コメディ。平凡な主婦・美香子(田中)が、ふとしたきっかけで“金(きん)”の魔力に取り憑かれ、時価100億円とも言われる秀吉の金茶碗(きんちゃわん)を盗み出すという無謀な計画に突き進む姿を描く。
今回、金茶碗をめぐり美香子と駆け引きを繰り広げるSGCの社員・金城光輝を演じた森崎にインタビューを実施。総額数百億円の本物の金工芸品に囲まれた豪華な撮影現場の裏側や、初共演となった田中とのエピソード、さらには彼自身が人生で賭けに出た「大博打の瞬間」について語ってもらった。
■本物の金塊に囲まれ「金銭感覚が麻痺していく」
――まずは今作への出演が決まった際、台本を読んだ率直な感想を教えてください。
とにかく「これが実話なの!?」という驚きがいちばんでした。特に前半の展開は事実に即していると知って、単純にワクワクしましたし、後半のキャッスルでの追いかけっこのシーンも、文字で読んでいるだけで「これは映像になったら絶対面白くなるぞ」という予感がありました。ちょっとツッコミどころがある部分も含め、エンタメとして振り切っている面白さを感じました。
――今回演じられた金城光輝という男は、かなり「クズ」な一面を持っていますよね。
そうですね(笑)。パッと見は仕事ができて、会社にも貢献している営業のエース。でも、その裏で選んでいる手段がかなりえげつない。演じる上では、彼がなぜそこまでして「成功」に固執するのか、そのバックボーンを自分なりに壮大に作り上げました。
おそらく彼は、過去に人として否定されるような経験をしていて、「何者かにならないと自分の存在を認めてもらえない」という切実な恐怖を抱えている。だからこそ「手段を選ばない」というマインドを自分の中で正当化しているんです。「悪いことだと分かっていても、これをやらないと上には行けない」という彼の必死さをベースに置くことで、ただの記号的な悪役ではない、血の通った人間として演じたいと思いました。
――監督からは「ウィンさんが演じると憎めない部分が出る」という期待もあったと聞いています。
そこはすごく難しかったです。単に悪いやつとして振り切る方が楽かもしれませんが、人間味を描くのがお上手な監督なので。嫌なやつなんだけど、どこか放っておけない、その絶妙なニュアンスを出すために、現場でも何度も監督と相談しながら微調整を繰り返しました。
――撮影現場には、本物の金(きん)が用意されていたと伺いました。
そうなんですよ!目を疑うような額の金塊があって。最初は「これ1個で制作費の足しになるんじゃないか」とか「これを持って逃げたら……」なんて冗談を言って笑っていたんですけど、毎日その光景を見ていると人間って恐ろしいことに慣れていくんですよね(笑)。「これ10億ね」と言われても「ああ、そうですか」ってさらっと受け流している自分に気づいて。金銭感覚が麻痺していく感覚は、ある意味で金城という役に近づくヒントになったかもしれません。

■田中麗奈との“本気のイライラ”が最高のスパイスに
――ヒロイン・美香子を演じた田中麗奈さんとの共演はいかがでしたか?
僕がこの仕事を始めるずっと前からトップで活躍されている方なので、最初は正直、緊張しました。でも、撮影前からワークショップ形式で本読みをしたり、じっくり役について話し合う時間をいただけたので、すごく心強かったです。
田中さんの解釈の幅の広さには、現場で何度も驚かされました。特に美香子という役は、田中さんが演じると「こいつ、何も分かってないな」という危うさが際立って、見ていて本当にムカつくんです(笑)。特にラストシーン、彼女がなぜ笑っているのか。その「かみ合わなさ」があまりにリアルで、芝居中、本気でイライラして台詞を忘れそうになった瞬間があったくらいです。
――今回の現場で、俳優として「一皮むけた」と感じる部分はありますか?
自画自賛になってしまいますけど「森崎ウィン、結構いい俳優だな」って思いました(笑)。というのも、監督からの長台詞の中での細かいニュアンスの修正に対して、パッと対応して一発で決められたことが多かったんです。スタッフの方から驚かれたときに、思わず「僕、ハリウッド映画に出てるんですよ」なんてドヤ顔で返しちゃいました(笑)。

■新生活へ贈る「小さな一歩」の大切さ

――常に周囲から刺激を受けている印象がありますが、今、特に注目している方は?
俳優であれば松山ケンイチさんです。なんでもないシーンを、一瞬のアイデアで忘れられない名シーンに変えてしまう。その引き出しの多さはどこから来るんだろうと尊敬していますし、またすぐにご一緒したいと切望しています。
アイドルなら、Snow Manの向井康二くんです。彼のプロ根性と、ここぞという時の爆発力は本当にすごい。「やります」と言い切る強さと、努力を積み重ねてきた自信。彼のようなトップを走る人たちを見ると、「僕ももっと頑張らなきゃ」とモチベーションが爆上がりします。
――芸歴15年以上になりますが、いろいろな経験を経て芸能生活には慣れましたか?
全然ですよ!未だにスーパーに行って、レタスの値段が昨日より数十円上がっているだけで「うわ、高っ!」ってショックを受けるような人間ですから(笑)。庶民的な感覚は一生変わらない気がします。僕らの仕事は、裏側の地味な努力を見せずに、いかに「華やかに見せるか」が勝負。お客さんが「ウィンくん、キラキラしてるな」と思ってくれたら、それが正解なんです。
――作品のテーマにちなんで、森崎さん自身が「大博打だったな」と思うことを教えてください。
キャンプが趣味なんですけど、この間、ネットで誰一人レビューを書いていない激安テントを買ったんです。YouTubeにもブログにも情報が一切ない。でもスペック上は最高で。「これは当たるか外れるかだ!」と思って思い切って購入しました。
そのテントを使った日が強風だったんですけど、これが全然壊れなくて。後からその道に詳しい、キャンプ愛好家の間では有名な専門家の方が絶賛している動画を見つけて、「博打に勝った!」なんて、仕事以外ではそんな小さなことで一喜一憂してます(笑)。
――4月は新しい生活を始める方も多い時期です。一歩踏み出すためのアドバイスをお願いします。
最初の一歩って、いちばん重いし怖いですよね。でも、そこを越えてしまえば、あとは転がるように進んでいくものです。僕がおすすめするのは、無理に「大きな一歩」にしようとしないこと。「昨日より30分早く寝る」とか「朝、1杯の白湯を飲む」とか、そんな小さな成功体験を積み重ねてみてください。それがいつの間にか大きな自信になって、気づいた時には新しい場所に立っているはずです。失敗したって死ぬわけじゃないし、大丈夫。気楽に行きましょう。

◆取材・文=永田正雄
スタイリスト/森田晃嘉 ヘアメイク/宇田川恵司

