4月5日、春の古馬中長距離三冠レースの第一弾である大阪杯(GⅠ、阪神・芝2000m)が行なわれ、単勝1番人気のクロワデュノール(牡4歳/栗東・斉藤崇史厩舎)が逃げた3番人気のメイショウタバル(牡5歳/栗東・石橋守厩舎)を差し切って優勝。一昨年のホープフルステークス、昨年の日本ダービーに続き、自身三つ目となるGⅠタイトルを獲得した。
3着には中団から馬群を割ってきた2番人気のダノンデサイル(牡5歳/栗東・安田翔伍厩舎)が入り、後方から鋭く追い込んだ13番人気のタガノデュード(牡5歳/栗東・宮徹)がクビ差の4着に大健闘した。
一方、中山記念(GⅡ)を勝って5番人気に推されたレーベンスティール(牡6歳/美浦・田中博康厩舎)は追い込み切れず6着に敗れ、アメリカJCC(GⅡ)を制して臨んだ4番人気のショウヘイ(牡4歳/栗東・友道康夫厩舎)は直線で手応えを失くして10着に大敗した。
極めて高い能力を持つ3頭のGⅠホースが、持ちうる手腕の限りを尽くすジョッキーたちに導かれ真っ向から激突する。これぞGⅠという激闘が仁川の馬場を舞台に繰り広げられ、満場のファンを興奮の坩堝に叩き込んだ。
レース展開のカギを握ったのは、昨年の宝塚記念(GⅠ)を逃げて圧勝したメイショウタバル。強い時には圧倒的な走りを見せる一方、エキサイトしたときにはあっさり敗れてしまう。逃げ馬特有の気性の難しさを内包する彼の動向に注目が集まったが、ゲートを飛び出すと迷いなく先手を取り、気持ちよさそうに馬群を引き連れて快調に飛ばす。4番枠から出たダノンデサイルは馬群のなか、6番手付近を追走。大外の15番枠からのスタートとなったクロワデュノールは無理に内へ入ろうとはせず馬群の外目、8番手を進む。
メイショウタバルが刻んだラップは、1000mの通過が58秒1。「良」発表とはいえ、「稍重」から回復したばかりの馬場はかなりタフであり、このラップはかなりのハイペース。しかし少々ペースが速くても、気分良く逃げたメイショウタバルのしぶとさは知られたところ。逃げ切らせてはなるまいと、第3コーナーから各馬は追い上げにかかり、ダノンデサイルはインから、クロワデュノールは馬群の外目から、それぞれ先団にじわじわと迫っていく。
そして迎えた直線。コーナリングを生かしてメイショウタバルがサッと後続との差を広げると、馬群を捌くのに苦心するダノンデサイルより先に、外からクロワデュノールが抜け出してくる。残り200mで2頭の差はまだ3馬身。これはメイショウタバルの逃げ切りかと思われた瞬間、坂を上り切ったクロワデュノールは最後の力を振り絞って一完歩ごとに差を詰めると、ゴール寸前でターゲットを差し切り激闘に終止符を打った。走破タイムは1分57秒6だった。 終始、馬群の外目を走り続けながら、最終コーナーの前から仕掛けて前を差し切ったことは、クロワデュノールの図抜けた能力の高さを証明するものだろう。そして、馬を信じ切ってリスキーな戦略を捨て、外からの勝負に徹した北村友一騎手の肝の据え方も称賛されるべきだろう。
昨年のジャパンカップ(GⅠ、4着)ののち、降板の噂が絶えなかった北村騎手はレース後のインタビューで、「いろいろな方たちがつないでくださった継続騎乗でしたので、その気持ちに応えたいという思いで、感謝の気持ちを持ちながら挑みました。タフな馬場だなと思っていて、そのなかでメイショウタバルという素晴らしいライバルがいいペースで逃げていたので、なんとかつかまえてほしいと思って一生懸命追いました」と、素直な気持ちを吐露した。
メイショウタバルの好走は、自身のポテンシャルの高さはもちろんのことだが、それと同時に武豊騎手の絶妙な手綱さばきには舌を巻いた。1000m58秒1というラップは“肉を切らせて骨を断つ”という言葉そのままに、メイショウタバルにとってハードであっても、最後まで我慢できるギリギリの数字だったのだろう。事実、ラスト200mまでは“あわや”のムードさえ漂わせ、最後の最後こそ脚が上がったものの、中団から抜けてきたダノンデサイルには1馬身差を付けて2着に粘り切った。これを絶妙と言わずして何と言えばいいのか、そこまでの凄みを感じさせる騎乗であり、メイショウタバルの走りだった。
ダノンデサイルも現状での力は出し切った。初騎乗となった坂井瑠星騎手は、4番枠から出たなりで馬群のなかを進ませ、直線で前を捌いての抜け出しを狙った。残念ながら外の馬に寄られたりして進路を確保するのにやや手間取ったが、それでも上がり3ハロン34秒9は勝ったクロワデュノールと同タイム。それだけにごちゃついたシーンが悔やまれるが、これは時の運の範疇にある事柄だろう。筆者の見方を言えば、彼のベストディスタンスは2400m以上にあると感じられ、春の天皇賞(GⅠ)に参戦すれば好走は必至と思われるのだが、陣営の判断に今後も注目していきたい。
特注の穴馬として挙げたタガノデュードは、単勝オッズ113.2倍という人気薄を覆し、後方からぐいぐいと脚を伸ばして3着のダノンデサイルにクビ差まで迫った。長くいい脚を使えるタイプで、今回の好走によってトップクラスでも十分戦えることを証明した。これからのさらなる成長次第では、速い流れになることが多い秋の天皇賞(GⅠ)でも侮れない存在になるかもしれない。
川田将雅騎乗のショウヘイと、クリストフ・ルメール騎乗のレーベンスティールは、鞍上の魅力で過剰人気になったきらいがあり、GⅠのステージでは上位争いをするにはさらなる自力強化が必要なように思えた。
文●三好達彦
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