
無様なイングランドに勝利も…勝って兜の緒を締めるべき 日本は金星を目指し、相手はテストをしていた【識者コラム】
今年3月、森保一監督率いる日本代表は英国遠征を行い、スコットランド、イングランドを0−1とそれぞれ撃破している。
「欧州の強豪に勝利した。ワールドカップ優勝も夢ではなくなった!」
日本国内では、森保ジャパンの戦いに賞賛が高まっている。いかさま選手たちは聖地ウェンブリーでも少しも臆さず、素晴らしい形で得点を奪い、粘り強い守備で勝利を手にした。多くの選手が欧州の最前線で戦い、史上最強の陣容になった裏付けでもあった。
しかし、今回の連勝にブラジル戦の歴史的勝利などを合わせ、“W杯でも優勝”となるのは危うく、率直に言えば誤った捉え方だ。
親善試合は親善試合に過ぎない。どれだけ勝っても、テストマッチである。日本は金星を目指したが、相手はテストをしていた。たとえばイングランドはフィル・フォーデンを偽9番で起用したが、本大会で彼がそのポジションをやることはほぼ考えられない。今回の結果でメンバー入りすら危うくなっている。テストに落第したわけで、そういうアプローチの一戦だった。
イングランドは、トップにハリー・ケイン、トップ下にジュード・ベリンガム、右サイドにブカヨ・サカ、左サイドにマーカス・ラッシュフォード、中盤にデクラン・ライス、バックラインはリース・ジェームス、ジョン・ストーンズ、ルーク・ショーと先発メンバーはガラリと変わるだろう。
「日本も何人かの主力は不在だった。そこは同じ条件」
そんな意見もあるだろう。しかしケイン、ベリンガム、サカという特級選手の不在は同列に語れない。
さらに言えば、欧州はシーズン佳境で、欧州プレーオフのような真剣勝負でない限り、どの選手も「代表戦はケガをしないように」という意識を感じさせた。当落線上の選手を除いて、この時期に頑張る必要はないのだ。
一方、日本代表の選手たちは代表人気が高く、各自の士気も一様に高かった。親善試合に乾坤一擲で挑んでいた。動きのキレのよさは明らかだった。
イングランドは「日本は強豪」と言いながら対策などしておらず、勝利よりもテストの意識が強かった。たとえば、日本のセンターバックはアーリークロスの対応にそこまで強くない。空中戦でセカンドを狙われたら、自動的にラインを下げざるを得ず、そこから崩せたはずだが、日本を見くびって正面から崩そうとして引っ掛けられていた。なんとも無様な負け方だった。
森保ジャパンは輝かしい勝者である。しかしスコットランド戦は守備を固めた相手を攻めきれず、ウイングバックは全く機能していなかった。イングランド戦も後半途中からは人海戦術で守るしかなく、クロス攻撃に弱点を曝け出していた。選手が成長しただけで、チームの本質はカタールW杯から大きく変わっていない。
選手が浮かれていないのは救いだが、周りも持ち上げ過ぎず、勝って兜の緒を締めるべきだ。
文●小宮良之
【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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