
ポール・ニューマン主演でアメリカ映画史に刻まれた名作「ハスラー」(1961)、そして、トム・クルーズが共演し、日本にビリヤードブームをもたらした続編「ハスラー2」(1986)。この2作がBS12 トゥエルビ(BS222ch※全国無料)の「土曜洋画劇場」(夜7:00〜)にて、4月11日(土)、18日(土)に2週連続で放送される。同じビリヤードを題材にした作品ながら、その魅力と作風は大きく異なる。「ハスラー2」は観たことがあっても、モノクロ映画時代の「ハスラー」は未見という人も多いはず。放送を前に、両作のつながりと、描かれるビリヤードの違い、そして、ポール・ニューマンに英国アカデミー賞最優秀外国男優賞をもたらした「ハスラー」の魅力を紹介する。
■日本にビリヤードブームをもたらしたのは続編「ハスラー2」
1980年代後半に日本で巻き起こったビリヤードブーム。そのきっかけとなったのが「ハスラー2」だ。ポール・ニューマンと、「トップガン」で爆発的な人気を得たトム・クルーズによるダブル主演で、“ハスラー”と呼ばれる賭けビリヤードプレイヤーの生き様を描いた本作は、本国に続き日本でも大ヒットを記録した。
それまで日本では馴染みの薄かったビリヤードだが、本作によってスリリングでスタイリッシュな競技性の魅力が広く知られ、瞬く間に全国へと広がっていった。当時の世代では、劇中のファッションや立ち振る舞いを真似し、マイキューを手にビリヤード場へ通ったという人も多いだろう。
ニューマンが演じたのは、賭けビリヤードから足を洗った元ハスラー、エディ・フェルソン。彼は、自身の若き日を思わせる才能を持つヴィンセント・ラウリア(トム・クルーズ)と出会い、再び勝負の世界へと引き戻されていく。このエディの若き日を描いた作品が、1961年公開の「ハスラー」である。
「ハスラー」も1962年に日本公開されているが、ビリヤードそのものの面白さよりも人間ドラマに重きを置いた内容だったこと、さらに当時の日本ではポケットのない四つ球が主流だったこともあり、競技としての魅力が広く浸透するには至らなかった。傑作としての評価は高かったものの、「アメリカのギャンブル映画」という受け止められ方が強く、ブームにはつながらなかった。

■「ハスラー」は若きエディ・フェルソンの破滅型人間ドラマ
「ハスラー2」の影響で“ビリヤードの達人=ハスラー”というイメージが定着したが、本来ハスラーとは詐欺師や勝負師を指す言葉だ。実力を隠して相手を誘い、油断したところで賭け金を釣り上げる。そんなダーティーなプレイヤー像が、「ハスラー」におけるエディ・フェルソンである。
しかしエディは、才能はあるが未熟で脆い男だった。15年間無敗の王者ミネソタ・ファッツに挑んだエディは序盤、圧倒的な実力で追い詰めるものの、焦りと酒、そして引き際を誤る傲慢さによって、36時間を超える死闘の末に逆転負けを喫し、一文無しへと転落する。
挫折したエディは、孤独な女性サラと出会い、互いの傷を埋めるように生活を共にする。だが勝利への執念から冷徹なマネージャー、バートと手を組み、再びファッツに挑むことを決意。その代償として、サラとは悲しい結末を迎えてしまう。
こうした展開からも分かる通り、「ハスラー」は挫折と自己崩壊を描く重厚な人間ドラマだ。ビリヤードはあくまで題材であり、テーマはプライド、敗北、依存、愛といった内面の葛藤にある。勝敗以上に「どう生きるか」を問う、暗く痛みを伴うリアリズムが特徴となっている。

■再起と“魅せるビリヤード”を描く「ハスラー2」
一方の「ハスラー2」は、前作から二十数年後を描く続編。現実と同様に年齢を重ねたニューマンが、再びエディを演じる。賭けビリヤードから離れ、酒のセールスマンとして生きていたエディは、才能はあるが未熟な若手プレイヤー、ヴィンセントと出会い、彼を一流のハスラーに育て上げようと再びキューを持つ。
ヴィンセントは一流の腕前を持ちながら、観客を意識した派手なプレーを優先するタイプ。対するエディは、勝つためには実力を悟らせないことが重要だと説き、堅実な勝負を教え込もうとする。しかし、その価値観の違いはやがて二人の溝となっていく。
同じエディ・フェルソンの物語でありながら、両作のトーンは対照的だ。ロバート・ロッセン監督による「ハスラー」が内面をえぐる破滅のドラマであるのに対し、マーティン・スコセッシ監督の「ハスラー2」はエディの再生と再起を描くエンターテインメント。演出も軽快で、全体のリズムは明るく洗練されている。
さらに注目したいのが、ビリヤードの描き方の違いだ。「ハスラー」では“ビリヤードによるマラソン”とも言われるストレートプールによる勝負となり、静謐で張り詰めた空気の中、消耗と冷静な精神力が強調されて描かれる。対して「ハスラー2」ではナインボールを軸に、スピード感ある編集とアンクルによってショーアップされた競技としての魅力が前面に出る。ルールの分かりやすさも相まって、観る者に強い爽快感を残す映像だ。
人間の弱さと向き合う「ハスラー」と、勝負の楽しさと再起を描く「ハスラー2」。同じ題材でありながら対照的な魅力を持つ2作を続けて観ることで、エディ・フェルソンというキャラクターの変化、ギラつきと円熟というニューマンの演技の深みを見ることができる。
BS12 トゥエルビでは4月11日(日)の「ハスラー」、4月18日(土)の「ハスラー2」に加え、4月25日(土)には、70歳を目前にしたニューマンを主演に、人生の後半を迎えた偏屈老人の日常を味わい深く描いたヒューマンドラマ「ノーバディーズ・フール」を放送する。
◆文=鈴木康道

